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セカンド・アース  作者: 九重


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3学期

3学期

実地訓練場の各学年の砦には旗が立った。

これから学年末に向けて激しい領地の奪い合いが行われるのだが、その征服の証がこの旗なのだそうだ。


奪った砦の旗を降ろし、かわりに自軍の旗を立てる。

奪った旗の数で勝敗が決まった。

全ての旗を奪うのが最終目的だ。


「旗を接着剤で留めてはいけないと学校側から正式に通達がありました。」


旗が立ったその日に、明哉から告げられた言葉に、桃は苦笑する。

オリエンテーション合宿で桃がとった奇策は正式に反則技と決められたのだった。

今更同じ策を(ろう)しようなどと、桃も他の1年も思うはずもない。




「旗を隠すのは?」


ムクムクと湧き上がる衝動に負けて、つい意地悪く聞いてしまった。


桃に小首を傾げて質問されて、明哉は少し顔を赤くする。

そんな桃の姿は、言っている内容とは関係なく、たいそう可愛らしかったのだ。


「・・・禁止事項には上がっていませんが、当然ダメだと言われるでしょう。」


少々うろたえながらも明哉は真面目に答える。


「旗を偽物とすりかえるのも?」


「・・・おそらく。」


困る明哉を、桃はようやく笑って解放した。


「ごめんなさい。本気でするつもりはないから。」


明哉はホッと息を吐く。

相変わらず桃の策略は自分たちの意表をつくものだと思った。



「でも、」と桃は呟く。



「君主を安全な場所に移すことも、替え玉を仕立てることも、ごく普通の戦略でしかないのにね?」



何故禁止するのかしら?再び可愛らしく首を傾げる桃のその言葉に、明哉も他の仲間たちも目を見開く。


言われてみれば、確かにそのとおりだった。


現実の戦いに、反則技も何もない。

あるのはただその策が有効な策か否かという事だけだ。

そしてその意味からすれば、旗を隠すのも、入れ替えるのも・・・接着剤でとめることさえ、たいへん有効な策だった。




考え始める明哉に桃は笑う。


「正々堂々と誰からも文句をつけられない完全な勝利を目指しましょう。」


その桃の言葉を明哉も他の仲間たちも受け入れ、頭を下げる。



3学期がはじまった。



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