世界中から嫌われた少女と少年
世界中から嫌われた少女と愛された少年の続編。今回は大人な魔王ミサエルがドジりますw
私ミサエルは今、ベットの中にいる。
先日、体調不良で倒れてからライルが心配性になった。
ライルは今、床で寝ている。
規則正しい寝息を立てながらスースーと。
「そろそろ、大丈夫か?」
私はそう言いながら手を握ったり広げたりしてみる。
感覚の方は大丈夫だな。
私が倒れたのはそこらへんに落ちてた毒キノコをうっかり食べてしまったからだ。
・・・笑うな。自分でも馬鹿だと思っている。
その後は意識が朦朧として記憶は無いが、ライルが必死で宿に私を抱え入り、治療したのは憶えている。
魔王である私だから寝たら治ると思っていたら2日も動けなく寝たきり状態だった。
「体は正常、だな。・・・ご飯」
私は食堂へ向かおうとしたのだが、
「・・・何でコイツは私の服を掴んで寝てるんだ」
寝ているライルによって阻止された。
というかコイツは本当に寝てるのか?
それにしては力が強いぞ?
どうやっても離れないんだが。
「こっんの・・・馬鹿力が!!」
私はライルの頭をおもいっきり叩く。
・・・なんで起きない!?
「ライル、起きろ!」
「んんー?」
「んんーじゃないから!ホントに起きて!」
「ミエル?何やってんだ?・・・ミエル!?」
私を見た瞬間、ガバリと起き上がったライル。
そして私の肩を掴み、ゆさゆさ揺らす。
私はライルの手を放しながら言った。
「何でお前は私の服を掴んで寝てるんだ?」
「え・・・?な、何となく?」
綺麗な顔が首をかしげる。
まぁ確かに綺麗だ。綺麗だぞ。
でも、お前がそんな仕草しても、可愛くもない!
「首をかしげるな。そしてまず、私にご飯を食べさせろ!」
「・・・あ!ご飯!」
ライルはそう言って直ぐにフードを被り食堂に向かった。
コイツは本当に元王子か?
やけに子供みたいじゃないか、行動が。
そして変な所が抜けてる。
「わけが分からん奴だ」
私は溜息をつきながらベットに座る。
ライルが王子だった頃、私は一度だけライルを遠目から見た。
それは、ライルの誕生パーティーの時だ。
王城から手を振っていたアイツは笑顔だった。
それは誰が見ても、幸せそうな笑顔。
ただ私にはもの凄く悲しそうな笑顔に見えた。
笑っているのに笑っていない。
本心では悲しんでる、そんな笑顔だった。
私はその笑顔を見て、こいつは不幸だな。そう思ったのだ。
そして私が王城近くの裏道を歩いていると、ライルが現れた。
初めは、ただ面白い反応を見たいが為にライルに声をかけた。
でもライルは言った。
ハッキリと、意志の強い声で。
『逃れられるのならば、世界中から嫌われてやる』
と。
今まで私に興味を持った人間は沢山いた。
ただ、私が魔王と知って私について来る者は居なかった。
それは何故か。
その答えは簡単だ。
その者が、今の自分の立場を、故郷を、生活を失いたくないから。
結局、本気で私に興味を持った者、自分の生活にウンザリしている者は居なかったのだ。
でもライルは違った。
今までの者とは違った。
自分の立場、故郷、生活、全てにウンザリしていた。
中途半端な者ではなかった。
そして、私が魔王と気付いていても私について来ると言った。
「アイツは私にとって救いなのかも知れないな」
私が倒れたら本気で心配してくれる。
私と一緒に居て、本気で楽しいと言ってくれる。
私のやる事をみても、怖がって逃げたりしない。
そんな存在を、私は求めていたのかもしれない。
これから先、どんなに願っても、現れないと思っていた存在を。
「ミエル、持って来たぞー」
扉が開き、自分の分と私の分を持ったライルが現れた。
笑顔で言うライルを見て私も微笑む。
こんな生活はいつまでも続かないだろう。
だったら私は、この時間を大切にしよう。
「ありがとう」
やがて別かれるまでこの時間を大切にしよう。
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