第15話 現状確認
「エリカ、それはそうとあなた魔力の調子はどうなの?」
「ほとんど出ない。魔封じの手かせとかは外したのに・・・・・・」
マリエッタはエリカの額に手をあてて何かを念じる。
「くっ、質の悪い封印魔法ね!術式が複雑で訳が分からないわ!」
「大神官クラスのヤバい奴らがするある種の呪いに近い魔力封印の呪符があなたの魔力回路を封じてしまっている。これでは魔法がほとんど使えないわ」
マリエッタの冷徹な指摘を聞いたエリカは、頭ではなんとなくわかっていたとはいえ、言語化された現実を前に半ば絶望的な気持ちになった。
あれほど鍛錬し、努力し、そして勝ち得た強大な魔法力の数々が第一級魔導士の記章と共にあっけなくはく奪されてしまったのだ。
「それじゃあ・・・・・・、全く魔法が使えなくなったってことなの?」
「いいや、私が何とか可能な限り解呪をしてみるからそのままの姿勢でいて」
マリエッタは焚火の光が照らす中、切り株に座った私の前にひざまずいて眼を閉じた。
私の頭に右手を置き、解呪の魔法を唱え始める。
マリエッタの表情がどんどん険しくなっていく。
30分後。
「はあはあ・・・。私にできるのはこれだけか・・・・・・」
「基礎的なことはできるように回復できたけど、正直今のあなたは基礎課程未満の魔法しか使えないわ」
私の頭は再び真っ暗になった。
「マリエッタ、今回の件は一体何なの?私は何度も言うように共和国のスパイなんかじゃない」
「今回の件は円卓会議の陰謀よ」
「円卓会議!?」
帝国貴族が議会とは別に運営する帝国の意思決定機関。
形式上は帝国の最高意思決定機関は議会であるが、円卓会議は帝国貴族階級のみで構成され、しかも非公開のため臣民はその会議の内容を一切知ることはできない。
表向き円卓会議は帝国貴族のみで構成される議会の諮問機関として権限はないとされるが、しかし、議会の決定を実際は覆して自らの意志を優先させているといううわさが絶えない。
「なぜ円卓会議が私を?」
「私の家の情報部が調べた限り、どうもあなたの祖先が帝国貴族の主流派の支配体制にとって都合の悪いスキルを生み出したことがあなたとあなたの家系を潰しにかかっている理由らしいのよ」
「都合の悪いスキル?私はおじいさんたちが魔導技術の技術者で新しい魔法を発明したとは聞いているけど、私もその全貌は親から聞いたことがない。わが家にはその文献がなぜかなかったの」
「私もそのあたりのことはまだわからない。けれど、あなたの家におじいさんの発明した魔法やおじいさんの経緯に関する資料がない理由は明らか、帝国貴族の主流派が没収したからよ。多分、あなたのお父様やお母様は立場上そのことはあなたにも明かせなかったのでしょうね。帝国貴族の主流派の権力は絶対的で逆らえば抹殺されるだけだし」
「けどそれなら私の家はとっくに潰されているはずじゃ・・・・・・?」
「無論そう言えるけど、取り潰すことはできないほどの功績を帝国にもたらした技術英雄の称号を持つ方だったことはたしかよ、あなたのおじいさんは。それにあなたのおじいさんの編み出した新魔法は帝国の力の均衡を揺るがすほどのものだったと考えられるわ。だからその力自体はわがものにすれば覇権をこの手にできる以上、おじいさんを抹殺するわけにもいかなかったのでしょうね」




