「働き方改革」を履き違えてしまった「残業キャンセル界隈」さん
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回は「残業キャンセル界隈」の問題点を似たような「働き方改革」や「静かな退職」と比較して語っていこうと思います。
※この問題についてはヤフートップの記事にもあがりました。
◇「残業キャンセル」とは何か?
質問者:
「残業キャンセル界隈」って最近用語として知ったんですけど、どういう人達なんですか?
筆者:
簡単に言えば17時(定時)にどんな状況であっても帰宅する人たちのことです。
質問者:
でも、世の中には「働き方改革」や「ライフワークバランス」などで近年では残業時間数が制限され、長時間労働が無くなりつつありますよね?
それとはどう違うんですか?
筆者:
「働き方改革」では17時に帰宅しても「持ち帰り」で自宅で仕事をすることになったり、
サービス残業が増えたりするなど、「実情は残業」と言ったことが増えていました。
そういったサービス残業も完全に拒否するだけにとどまらず、「仕事が残っていても定時に帰宅」と言うところに大きな差があると言っていいでしょう。
「働き方改革」は本来「生産性を上げて、残業を減らす」ということが目的とされていましたが、「残業キャンセル」は「何があっても定時で帰ることが正義」という、若い方を中心とした歪んだ解釈なのです。
◇「残業キャンセル」の背景
質問者:
なるほど……それでは会社の仕事に穴が開いてしまってもおかしくはないですね……。
だから社会問題化しているということですか……。
どういったことが社会背景としてあると思いますか?
筆者:
まず、近年の若い方の雇用状況をここで振り返っておきます。
団塊の世代が再雇用からのフェードアウトする年齢になりつつあります。
それに伴い人手不足がここ数年で加速しているんですね。
大学の先生からお話を聞いた機会がありましたが、
「企業を選ばなければすぐに就職先が決まる」
ぐらい新卒は入社しやすい状況にあるそうです。
このことから若い方は「もしクビになっても次の就職先があるから大丈夫」という「謎の安心感」があるのではないかなと僕は思っています。
質問者:
えー、だからと言って流石に役割を果たすことなく定時に帰宅するのは流石に問題のような……。
筆者:
早く帰宅して、新たなスキルを取得しているのであれば次の転職先にも困らないと思うのですが、ただ単に遊ぶために早く帰りたいのであれば致命的だと思います。
「静かな退職」と言う言葉もありますが、
「会社に従属しすぎない」「やりすぎない」というスタンスを取っていることは共通性がありますが、全く残業をしないわけでは無いようです。
どちらも「無理をせずに最低限の仕事をすればいい」「自分の時間を守りたい」という価値観から来ていますが、その質は全く異なるように思います。
質問者:
仮にクビになった後は大丈夫なんでしょうか?
筆者:
未だに日本では「新卒カード」が強力でして、スキルの成長が無ければ運にもよりますけど、基本的には「新卒で入社した会社が一番良い就職先」ということになりますからね。
その点を理解されての「キャンセル」とはとても思えませんね。
質問者:
そういった認識が不足しているということですか……。
筆者:
自分の価値観を大事にすることはいいことだと思いますけど、周りに迷惑をかけていいわけではありません。それぞれ生活があり、守らなくてはいけない価値観があります。
“自分勝手“でいいのは自分一人で全てを完結している人だけだと思います。
あと、「人手不足」と言われてここ数年久しい状況になりつつありますけど、
「業種によって」全く様相が異なるのです。
ハローワークを介した2023年度の職業紹介における有効求人倍率(高いほど人手不足)では、
販売や営業職の含まれる販売職2.03倍
介護サービスや飲食物調理、接客に関する職業などが含まれるサービス職3.05倍
警備員など保安職6.69倍
タクシーやバス、トラック運転手などが含まれる輸送・機械運転職2.22倍
建設・採掘に関する職業5.29倍
であるのに対し、ホワイトカラーの事務職0.45倍とむしろ「人余り」の状況なんですね。
質問者:
しかも、「残業キャンセル」はホワイトカラーに多そうな感じがしますよね……。
ブルカラーの職業だとすぐにクビになっちゃいそうですから……。
筆者:
もっとも会社が残業を押し付けてくるような文化があり、
残業をこなしても残業代はロクに出ず、
昇給の未来も薄ければ残業をやりたくなくなる気持ちも分からなくはありません。
ただ、ホワイトカラーの事務職は一度手放すとかなり戻るのは数字の上ではかなり厳しいということは念頭に入れておく必要があるでしょう。
「会社が酷いから」残業キャンセルをしたいのであれば、専門スキルを鍛えることは必須だと思います。
専門技術職の求人倍率は1.84倍と一般事務職とは次元の違う数字ですので、売り手市場と言っていいですからね。
質問者:
なるほど、キチンと状況を踏まえてキャリアを考えた方が良いということですか……。
◇会社の雇用状況も問題
質問者:
以前のお話では「静かな退職」も60%ほどが少しでも実行中と言う衝撃的な話がありましたけど、こういった働く悩みについては労使ともに尽きませんね……。
筆者:
「静かな退職」の際にも語りましたけど、ホワイトカラーの事務職は営業やブルーカラーと比べて人事評価がやりにくいんですね。
事務や会計、人事などと言った職種は「会社のインフラ」と言った形でやる方がゼロになるとメチャクチャ困りますけど、売り上げをもたらすことに関してはほとんど貢献していないのも事実ですからね。
やればやっただけ収入が多くなるという見込みもないですし、
早く仕事が終わった者に対しては更に仕事を振られるだけなので、
定時ピッタリに終わるようにグダグダやっている方も多いと言えるでしょう。
質問者:
ホワイトカラーの方々の元々のモチベーションが低いということですか……。
筆者:
ドイツや北欧では、残業や休日出勤など所定外の労働時間を従業員が社内口座に積み立て、
後で有給休暇などに振り替えられる「労働時間貯蓄制度」というものがありますが、
ちょっと日本では採用される見込みは薄そうですからね。
質問者:
制度的に変わらないとなるとどういったモチベーションでホワイトカラー事務職の方は働けばいいのでしょうか?
筆者:
まずは先ほども申し上げましたが「インフラ」であることから社内では大きく評価はされません。
ただ一方でブルーカラー職と違って体を酷使したりすることも薄いと思います(上司とのかかわりに問題があるのはどこも共通だと思いますし)。
有効求人倍率も低いことも意識して今やっている仕事を感謝しながら取り組む必要があると思います。
質問者:
かくいう筆者さんもホワイトカラーっぽい仕事されてると思うんですけど、
そういった意識で取り組まれているんですか?
筆者:
……自らの意識を上げようという思いも込めて書きました。
僕もキャンセルしているほどではないですけど、ライフワークバランスを重視して小説家いたりゲームしたり野球観戦したりする一人ですので……。
質問者:
(ダメじゃん……)
筆者:
オホン! と、いうわけで今後も政治経済だけでなくこういった働き方についても書いていきますのでどうぞご覧ください。