俺② ―記者とともに―
俺らの店へ、新聞記者がやってきた。
雑貨屋が目当てかと思ったら、俺だったらしい。
「あなたは転生者ですか?」
そう言いながら、彼がこれまで取材してきた転生者たちの記事を差し出された。
「はい」
誰にも言っていないのに――そう思いながら俺は、肯定した。
「私は転生者の方々にインタビューを行っています、新聞社のものです。ぜひお話を聞かせていただけないでしょうか」
匿名なら、と俺が言うと、彼は早速インタビューを始めた。
「チートは何ですか?」
そのほかにも、元の世界での生活、今の生活、転生してよかったと思うこと――
たくさんの質問に、俺はありのままを伝えた。
「あなたは何故、無事なのですか?」
――お前は。
「何も持っていないからです」
さっきの記事によると、他の奴らは持っているものに影響されていたようだ。
でも、何も持っていない俺は何の影響も受けない。
そういうことさ。それと。
「俺からも質問いいですか?」
「どうぞ」
「チートで人を堕として楽しいですか?」
そういうと、記者はあのときの天使のような真顔になった。
「――わかってしまいましたか」
――天使のような、じゃない。天使本人だ。
「克己心――それを選んだあなただけが、唯一の成功例です」
「何も望まないことを願った俺だけが、ですか」
「あなたがうらやましいですよ――本当に」
記者はメモ帳を閉じながら言った。
「俺は何も思い通りにいってない――諦めているだけですよ」
「そうかもしれません。でも、それが”生きる”っていうことなのではないですか?」
俺は、諦めたように窓のほうへ視線を向けた。
遠くから仲間たちのはしゃぐ声が聞こえた。
私の初の小説の連載でした!
お読みいただきありがとうございました。