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僕 ―命令する男―
僕は、人に命令することができる。
そして、絶対に従わせられる。
そんな能力を授けてくれた天使様には感謝しかない。
――はずなのに。
なんだろう、この寂しさは。
最近は、すごく寂しい。
人が隣にいないことが。
人を人だと思えないことが。
――地球のころはよかったなぁ。
あまり仲は良くなかったけれど、いつも家族が近くにいて。
彼女とは毎週デートして。
でも、そんな彼女とけんかして。
――人を従わせられたらいいのに
そう思った矢先、転生することになった。
僕は迷いなく「人の服従」を望んだ。
その結果がこれだ。
……笑えるな。
「ははっ」
僕の口からこぼれた声は、いつになく掠れていた。