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ティアナの王城事件簿〜ホロゥを従え謎を追え!!〜  作者: 今泉 香耶


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46.王城での舞踏会(2)

 馬車に揺られる時間も短く、あっという間に王城についてしまう。だが、その少ない時間に、彼らは互いに今日なすべきことについて打ち合わせをした。


 コンスタンツェは「借用書の話をしていた男性の声」を覚えていると言っていた。一人は、魔導士のマイツェンだとわかったが、もう一人の主がいないのかを探る。兵士である可能性もあるため、もしかすると舞踏会に参加をしていない可能性もあった。だが、まずは探すだけ探すしかない、とマリウスは言う。


「僕にも、もしかしたら接近をしてくるかもしれない。どこまで僕がしっぽをつかんでいるのかを探るためにね……だから、一度ダンスをした後、わざと君と離れるよ。君がいては、相手は探るような会話を僕に出来ないだろうし」


「わかったわ。わたしは、コンスタンツェと繋がりながらふらふら歩いていればいいのね」


「そうだね。コンスタンツェは少し君から離れられるだろうから、まあ君はそう歩かなくてもいいけど……あまり、僕から離れすぎないようにしてくれると助かる」


「勿論よ。正直なところ、あなたが近くにいてくれないと、わたし、うまくやれる自信がないのよね……」


 少しだけ不安そうなティアナに、マリウスではなくコンスタンツェが「大丈夫よ!」と励ます。


「いったでしょ。わたし、生前の能力で耳に聞こえる範囲を広くとれるって。だから、あなたがそう歩かなくても、男性の声を聴いてこられると思うの。そんなに不安にならなくてもいいわよ」


「ふ、不安になんて……」


 なっている。もごもごと口をつぐむティアナ。思ったよりもティアナが不安になっている様子にマリウスは小さく笑って、彼女の手を握った。


「君を一人にするのは、やめようか」


「ち、違うの。違うのよ!」


「え?」


「そのう……こう、色々、やらなくちゃいけないこととか、ぜーーんぶ忘れて……その……」


「うん」


「おいしそうなもの食べることに集中をしちゃったらどうしようかと思って……いえ、違うわ。おいしそうなものを食べてはいけないってアルマに言われていたんだわ。今日はこう、ウェストのあたりを縛り上げているから……」


「なんの心配をしているんだい!?」


 そんなやりとりをしている間に、さっさと馬車は王城に到着してしまったのだった。




 王城で受付をすませると、かすかに音楽が耳に届く。まだ舞踏会は始まっていないはずだが、楽団はとっくに仕事を開始している。マリウスが言うには「楽団は2つに分かれていて、30分交代で演奏をするんだ。さすがに2時間もぶっ通しで演奏はしていられないしね」との話だった。


 廊下を歩けば、既に集まっている人々が話している声が聞こえてくる。大きな広間の前で、名乗りをあげる担当に自分たちの名を告げる。すると、その担当者が扉を開けて、手にもった何かの道具を撫でる。それから


「ジェルボー家、マリウス・ルフェ・ジェルボー公爵、アルベール男爵ご令嬢、ティアナ・カーラル・アルベール様のご到着です!」


と名乗りをあげた。彼の声は、手に持っている魔道具から放たれた風魔法の力を使って広間に拡散をされる。大きく張り上げずとも、ふわりとそれは人々の耳に届き、一斉に人々が出入り口の方を向く。


「行くよ」


 人々の視線に委縮をしている暇はない。マリウスの肘にティアナは手を添えて、彼と共に入っていく。あちらこちらで、人々は「まあ、あれが新しい公爵様」だとか「あれは白銀の聖女ではないか」と囁きあう。


「やぁねぇ。ティアナのこと、いやーな目で見る男もいるわ。なぁに。デートをしてくれなかったとか言ってるけど」


 少し離れた声も拾うコンスタンツェが、嫌そうにぶつぶつ呟く。それへ、ティアナは「よくわからないけど、そういう方は多いと思うわ。わたし、たくさんお誘いがあったけど、たくさん断ってしまったの」と説明をした。


「なんだ! マリウスじゃないか。どうしたんだ、君!」


「やあ、パトリック」


「白銀の聖女、違った、今は大聖女様か。彼女と婚約をしたとは聞いていたけれど、本当だったんだな。ああ、失礼いたしました。パトリック・ランメルツ。ランメルツ侯爵家の次男坊です。マリウスとは、うーん、わたしはまあまあ仲が良いと思っているんだけれど……」


 そう言って、茶色の髪を後ろにまとめている好青年は笑う。


「初めまして。ティアナ・カーラル・アルベールと申します。パトリック様、とお呼びしてもよろしいでしょうか?」


 そう言って軽く礼をするティアナに、パトリックは「やあやあ、これは光栄です。白銀の大聖女から名を呼ばれるなんて」と言ってから、マリウスを軽くひじで小突いた。


「どうやって知り合ったんだい? 君みたいなやつが、大聖女の肩書きに釣られたわけじゃないだろう?」


 彼のそのあけすけな物言いにティアナは笑う。


「まあ。肩書きに釣られるだなんて」


「おっと、本人を目の前に大変失礼なことを言ってしまったかな。でも、あなたもお判りでしょう。あなたの肩書きは、それはもう強力だ。多くの男性たちから、求婚されていたのではないでしょうか」


「いえ、求婚まではさすがにありませんが……」


 すると、マリウスは「いいよ、ティアナ、こいつの質問にわざわざ答えなくても」と言って、軽くパトリックの胸元を手の平でトン、と押しやる。


「おいおい、何拗ねてるんだよ」


「拗ねていない」


「拗ねているだろ」


 そのやりとりがおかしかったので、ティアナはたまらず笑い声をあげる。


「ランメルツ伯爵とは、先日王城でお話をさせていただきました。あなたのお父様なのね。宰相の代理をなさっている……?」


「やあ、そうですそうです。今はマリウスの弟君とあれこれ分担をしながら代理をしているようでね」


 パトリックは笑顔でそう言った。


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