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ティアナの王城事件簿〜ホロゥを従え謎を追え!!〜  作者: 今泉 香耶


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41.ダンスの練習

 ティアナはそれから連日魔法院に通った。マリウスには、コンスタンツェが言っていた「例の男の片方はマイツェンだ」という情報を封書で送り、日々仕方なく魔法院に通う。


 3日通えば、ついにローマンに「それでは、一週間後にもう一度来てください。それまで、毎日わたしが教えて差し上げたことを実践して、イメージを掴んでいただきますようよろしくお願いいたします」と言われてしまう。要するに「毎日来てもらってもあまり変わり映えがしない」という意味だ。ティアナは少しだけ凹んで、だが、「別に出来なくてもわたし自身は困らないし」と思う。


そんな日々を送っていたのだが、ティアナにはマイツェンの話は置いても、マリウスのところに行かなければいけない事態が発生してしまったのだった。




「ええ? ダンスが下手くそ?」


 歯に衣着せぬ物言いで驚きの声をあげるマリウス。ティアナは「はい……」と素直にうなずいた。困ったように彼は「あと10日ぐらいしかないんだけど」と笑う。


「大体、この前のマイツェンの話をしに君が来たんだと思ったのに、まさか、ダンスの話かぁ……」


「ち、違うの。そんなに下手だと自分では思っていなくて。ただ、その……コンスタンツェに見てもらったら、どうやら下手らしくて、わたし」


 何が違うんだ、とマリウスは「んふっ」と笑い声を軽くあげた。


「コンスタンツェはダンスが出来るのかい?」


「わたしはそんなに踊らないけど、見ればうまいかどうかぐらいわかるわ!」


 そう言って、ティアナの体から出て来たコンスタンツェは怒る。


「この子、下手くそよ!」


「あああ、ちょっと、コンスタンツェ! そんな大声で……」


 と言ってから、ティアナは「あっ、ほかの人には聞こえないんだった」と言って肩を竦めたので、マリウスは「あっはは!」と朗らかに笑った。それに、公爵家でもマリウスの部屋は防音の魔法がかけられていると聞いていた。


「それじゃあ練習をした方がいいね。舞踏会では踊らなくても許されるけど、案外君と僕は注目を浴びる可能性が高い。人々に話しかけられて面倒な時は、ダンスに逃げることも出来るから」


「あなたはダンスお上手なの?」


 そんなわけはないわよね、と言いたげなティアナの言葉に、マリウスは立ち上がって彼女に手を伸ばす。


「君にとっては『残念ながら』かな? ダンスは得意なんだ」


「ええっ……」


「舞踏会で踊ったことなんて数える程度だけどね。君のダンスがどの程度なのか、僕が見てあげるよ。こちらにどうぞ」


 ティアナは「うう」とうめき声をあげてから、彼の手に自分の手をのせた。もう仕方がない。自分に出来ることをしよう……と、心の中で呻いたつもりだったが「ううう」と声にも漏れていた。




「うーん、確かに下手だなぁ」


「もうちょっと、こう、言い方ってないかしら?」


「あまり上手ではないなぁ」


 公爵家の別室を借りて、ティアナは嫌々ながらもダンスを披露した。相手をしていたマリウスの足は踏まなかったものの、何度も回転をしようとして腕が絡んだり、ステップがうまく踏めなくなって立往生したりしてしまう。そして、何よりも情緒がない。言葉にすると「うまくないが強い」と評価されるだろうダンスだ。


「そのう、1人で踊っている時はもっと上手だったのよ?」


「そうかい。残念ながら舞踏会では2人で踊るからね……」


 そのやりとりにコンスタンツェは大きな声で笑う。


「君、何度言っても1人で回転する時に僕の手を握ってしまうから回れないんだよ」


「そ、そうなんだけど……どうしてかしら。次、回るわ! って気合が入ってしまうのね、手に……」


 ティアナはいよいよ恥ずかしくなって「ううう」と呻く。すると、ふわふわ浮いて上から見ていたコンスタンツェが下りてくる。


「ねえ、ちょっと体を貸して頂戴。わたしがお手本を見せてあげるわ」


「え? 体を貸すって……?」


「こういうことよ」


 そう言ったと思えば、コンスタンツェはすうっとティアナの体に吸い込まれていく。それを見てぎょっとするマリウス。そんな彼に、ティアナは手を差し出して「1,2,3,4」とテンポを取っていく。


「1,2,3,4,タン、タン、ターーーーン」


 かすれた声がティアナの口から放たれた。その声はティアナのものであってティアナのものではない。マリウスは「ええ……?」と言いながら、彼女のターンに合わせて手をすっと放す。すると、同時にティアナは手を放して華麗にくるりと回った。


「コンスタンツェ……?」


「こうよ! わかったかしら!」


 そう言ってティアナの体からふわりとコンスタンツェが出てくるのを、マリウスは呆然と見守る。へなへなとティアナはその場に座り込み、コンスタンツェを見上げながら膝をつく。


「ティアナ?」


「ええ? い、今の、何……?」


 呆然としているティアナの頭上にコンスタンツェは浮かんでくるくると回って、くすくす笑う。


「ちょっとの間だったら、あなたの体を乗っ取ることだって出来るのよ!」


「そんな芸当が?」


「あなたが眠っている時、寝ていても動けることがわかったわ。色々試させてもらったの」


「ええっ!?」


 それは初耳だ。ティアナは「なんでもありなの? ホロゥって」とマリウスに聞くが、マリウスは「いや、さすがにわからないけど……」と困惑の表情を見せる。


「でも、すっごい疲れるの。本当に疲れちゃう。だから、そう繰り返して出来ないし……ふわぁ~……今日、長く起きているからなんだか眠くなっちゃったわ。ティアナ、あなたの中で眠らせてね……」


 そう言って、もう一度コンスタンツェはティアナの中にするりと入りこんだ。


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