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ティアナの王城事件簿〜ホロゥを従え謎を追え!!〜  作者: 今泉 香耶


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39.魔法院

 さて、魔石に魔力をいれる仕事を引き受けようと、ティアナは魔法院を訪れた。魔法院は魔法の属性によって部が分かれており、そのどの属性にも属さない者は2つの部に分かれて所属をしているという話だった。正直、幼い頃から魔法を使えないようだ、と言われていたティアナはその辺は不勉強だったし、聖女となった今でも「出来れば勉強はしたくない」と思っている。


 魔法院は神殿の神官服とは違って、みな暗い色のローブを羽織っている。ローブの色で所属をしている部がわかるだとか、地位がわかるだとか聞いたことがあるけれど、ティアナにはまだそれは理解できない。


 ただ、神殿と同じくしんと静まり返っているものの、空気は違う。神殿の清廉とした空気に比べて、どこか少し湿度がある。湿度があって、少しだけ薄暗い。何故かティアナはそう感じてしまう。だが、それは特に悪いことではない。


「大聖女様。よくお越しくださいました」


 先日、魔力の測定をしてくれた男性は、どこぞの侯爵の傍系とのことだった。名をローマン。20代後半ぐらいの男性だ。彼が今日も迎えてくれて、ティアナにあれこれと教えてくれた。そこでわかったことだが、今まで魔力が自分にあると知らなかったティアナは、まず魔力の扱い、自分の体の中にあるものを外に出す訓練をしなければ、魔石に魔力を注入出来ないらしい。


 なんといっても、ティアナはこれまで聖女の力も「なんとなく」使っていただけで、その力が体内のどこにあるとか、どういう風に意識をしてだとか、そんなことは考えたことがなかった。宝剣を使ってホロゥを切って、何か祈れば像が応じてくれて、マリウスの指先を触ったらホロゥが離れてくれて。すべてが「よくわからない」まま起きていることだ。


 それを、意識をしろと言われても……とすっかり困惑をする。


「とはいえ、やらないわけにはいかないものねぇ……」


 と、つい独り言が出てしまい、男性に笑われる。


「今日は、まずご自分の魔力が体のどこにあるのか……それをイメージする訓練をしましょう」


「はい」


 その話を聞いて、コンスタンツェはするりと出てくる。自分がティアナの中にいて「それ」を感じるのに邪魔になるかもしれない、と考えてのことだ。なんとなくそれはティアナも理解をして、小さく「ありがとう」と囁いた。


「へぇ~、魔法の訓練なんてもの、初めて見たわ! ティアナ、大変でしょうけど頑張ってねぇ~!」


 そう言って、コンスタンツェはふわふわと浮かぶ。やはり、ローマンにはコンスタンツェの姿は見えないようだ。「少し散歩してくるわ」と言って、するりと壁を抜けて消えてしまう。


 最初は座って落ち着いた状態でやった方がいい、と言われて、白を基調とした簡素な室内で椅子に座って言われるがままのティアナ。目を閉じて視界を遮断して、耳は体の内側の音を聞いて、と言われる。最初はうまくいかなかったが、少しすると、確かになんとなく体の内側の音という意味がわかってきた……気がした。


「聖女様は筋がよろしいです。大体の者は、目を閉じて集中しても、ふらふらと上半身がすぐに揺れてしまう。しかし、聖女様の姿勢はそのままで集中なさっている。きっと、早くイメージを掴めることでしょう」


 それは、多分剣の鍛錬をしてきたからなのだろうとティアナは思う。なるほど、なんとなく剣と魔法は対極にあるものだと考えていたが、人間が使う以上、体も心も切り離せないものなのだ、と思う。


「では、今日はこれぐらいまでにしましょう。そうだ。実際に魔法を注入しているところをご覧になりますか」


「はい!」


 それは少しだけ興味があった。魔石にに魔力を注入するのは、魔法院の離れで行っているとのことで、渡り廊下を歩いてそちらへ向かう。コンスタンツェも「あらぁ、楽しみぃ」と言って、ふわふわ浮いてついてくる。


 すると、一人の男性が箱を持って反対側から歩いて来た。魔法院にいる者がつけているローブとは違う、かなり上質なものを身に纏っており、高価な宝石が埋め込まれているブローチでローブの一番上を留めている。一目で、魔法院の者ではないが、魔法にかかわっている者なのだとわかるいでたちだ。


「ああ、マイツェン様」


「ローマンか。ほう、そちらが聖女か」


「はい。今は、大聖女という称号を得られていらっしゃいます」


「……ジェルボー公爵令息と婚約をしているという?」


 それへ、ティアナは「はい」と返した。マイツェン様、と言われたその男は、じろりとティアナを見てから、わざと笑顔を見せた。それは、彼女が「わざとらしい」と思うような作られた笑みだ。


「この度、魔石に魔力を注入するのに、お力添えをいただけるとか。期待しておりますぞ」


 男は名乗らずに、ティアナにそう言った。だが、侯爵家の傍系が「様」とつけているということは、貴族で、爵位も上なのだろうとティアナは思う。


「是非とも、聖女には質が良い魔石をお作りいただいて、国庫を潤していただきませんと。我が国のために」


 その言葉を聞いて、コンスタンツェがあからさまに「は?」と表情を歪めた。あ、コンスタンツェでもわかるのか、この言葉の嫌なところが。それにしても、そこまで怪訝そうな表情を作らなくとも……と思う。


(でも、いやーーーな感じがする人ねぇ)


 まず、ローマンが「大」聖女であると訂正をしたばかりなのにもかかわらず、その称号で呼ばない。ティアナとしては本来どうでもいい話だが、この男のそれはなんだか癇に障る。そして、この男が国庫についてああだこうだと言う身分ではないことはティアナにもわかる。魔法院に出入りをしている時点で、魔法使い、あるいはそれと同列の立場の者。魔法にかかわる者たちは、国の財源などに口は出さないものだとティアナは思っていた。それを、初対面のティアナに対してあからさまに言葉にするとは。


(でも、こんなにわかりやすい悪い人もなかなかいないんじゃない?)


 そう思いながら、ティアナは「お力になれればとは思っております」と当たり障りがない返事をした。


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