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ティアナの王城事件簿〜ホロゥを従え謎を追え!!〜  作者: 今泉 香耶


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37.マリウス来訪(2)

「あっ、そういえば、先日王城図書館に行ったのよ。そしたら、聖女は他の人たちが入れない場所も入れるって言われて、そこで聖女について書かれた書物を借りて来たの」


「もしかして地下?」


「そう」


「それは貴重だな。そこは、僕もラルフも入ることが出来ないんだ。ああ、いや、ジェルボー公爵であれば入れる権利ももらえるかもしれないが、今のところ僕と弟でそれをわけているような状態なので、それが叶わない、という感じかな」


「そういえば、ラルフの身分を聞いていなかったけれど、王城図書館を使えるってことは貴族なのね?」


 マリウスに紹介をされた時は、ただ「自分の部下だ」と言われただけだった、と首を軽く傾げるティアナ。


「侯爵家の三男坊だよ。貴族でありながら、特に爵位に興味はないし、かといって騎士になるにはあまりセンスがなかったので、仕方なく文官を目指していたところ、僕の父の目に留まってね」


「ええっ!? じゃあ、わたしったらあんな簡単にラルフのことを呼び捨てで呼んでいたけど、それは……」


 慌てるティアナ。マリウスの公爵家も相当驚きではあったが、侯爵家もまた彼女にとっては驚くべき相手だ。何故なら、ティアナは男爵令嬢で……。


「問題ないでしょ。だって君、聖女だよ?」


「うーん、ほんと、それ、慣れないのよねぇ~」


 そう言ってティアナは足を伸ばして軽くぱたぱたと上下させた。そんな彼女の様子は、貴族令嬢ではなく、どう見ても騎士団の騎士のように見える。マリウスは「はは」と小さく笑い声をあげた。


「それで、内容はどうだったんだい?」


「全然! 古語に近い言葉が使われていて、辞書を引きながら読んでいるから、進みが悪くて。それに、地下からの貸し出しの時に魔法をかけられているようで、王城図書館にいた時は読めていたコンスタンツェにも、ここで書物を開くと真っ白なページに見えるんですって」


「へえ! それはすごいな。昔からの魔法が今もそんな風に生きているなんてね」


 ティアナは王城図書館の入口で名乗りをあげるのは、地下の小鳥の置物と連動をして、利用者の紐づけを行っているのだろうと説明をした。マリウスは興味深げにそれを聞いて「なるほどなぁ。昔の魔法技術はすごかったんだな」と感心の声を漏らした。


「とはいえ、借りて来た書物の表紙はコンスタンツェにも見えるみたいなの。あなたが見ても、中身は白いのかしら? 見てみる?」


「見せてもらえるなら」


「わかったわ!」


 そういって、ティアナは「じゃ、わたしの部屋に行きましょ」とマリウスを誘った。それへ、彼は


「うーん、もう少し、君の鍛錬も見ていたかったけど」


と、小さく微笑む。


「わたしの? そう大したことはしていないわよ」


 ティアナは立ち上がり、ベンチの横に置いていた木剣を掴んだ。それを、ひゅんひゅんと振り回して、最後に肩にぴたりとあてる。


「うん。そうなんだろうね。でも、とても綺麗だったよ」


「えっ」


 とても綺麗。その言葉の意味をそのまま受け取って、ティアナは動揺をした。が、それを覆すかのように、マリウスは「君の剣」と付け加える。


「あ、え、そうかしら? 全然よ。そのう、一通りの鍛錬は幼いころからやっていたけど……」


 それから、ティアナは「そうだ、剣と言えば、宝剣をね……」と話をそらして、マリウスを自分の部屋へと案内をした。


「ああ、あと……陛下への謁見の時間が大幅に遅れて、お昼になってしまったの。何か、今って大変なのかしら?」


「うーん、そうだね……ここ数年っていうか、ここ10年ぐらいかな。色々問題が多くてね。自然災害やら、他国に頼っていた輸入品が品薄になって高騰したり、理由は色々あるんだけども。ほら、神託を聖女が得ても、それってひとつきに一度きりと決まっているだろう? そして、その内容量はそう多くはない」


 通路を歩きながら説明をするマリウス。


「だから、うまくそれらを色々防がなければいけなかったんだけど、神託を得た数よりも、勃発する問題の方が多くてね。だけど、ここ2年、君が得ている神託は結構具体性が高い上に複数のことなんかを受けるから、この2年の間はかなり問題が抑えられていたんだよ」


「ええっ!? そうなの?」


 まったくそれも初耳だ、とティアナは驚いた。昨日から驚くことばかりだが、まだそれでは飽き足らないようだ。


「僕も、そこまではわかっていなかったんだけどね。その……先日、王城に呼び出されてその話をされて。ここ2年ぐらいはともかく、それまでのことが積もり積もってさ。まあ、この国の国庫が結構厳しいって話で」


「ええっ!?」


「厳しいっていうのは、目減りをしているという話。とはいえ、税収をあまりあげたくないってことで、陛下としては王族側の懐に入る分をかなり削って来たらしいんだよね」


「なのに、わたしへの報奨金を増やして大丈夫なのかしら」


「君への報奨金なんて、そのう、言い方は悪いがたかだか知れていると思うよ」


 そう言われてティアナは怒りもせず「ふはっ」と小さく噴き出した。


「まあそりゃそうよね。桁が2つや3つは違う話でしょうし」


「4つは違うんじゃないかなぁ……とにかく、今はそれらの問題が多くて、だから謁見も結構それ関係になると長引いてしまったりするようだねぇ」


「なるほど……はい、到着! どうぞ、中に入ってちょうだい」


「ありがとう。それでは、失礼するね」


 そう言って、その話題はそこで終わりとなった。マリウスはティアナに促され、彼女の部屋に入る。テーブルの上には王城図書館で借りた書物や対応表が置いてあり、紙に何かを書き写しながら読み進めている様子も見えた。マリウスは「ふふ、頑張っているね」と小さく笑った。


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