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ティアナの王城事件簿〜ホロゥを従え謎を追え!!〜  作者: 今泉 香耶


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21.コンスタンツェ登場

「鏡を見たいけれど、きっと鏡には映っていないと思うのよね……ね、ね、2人とも、わたしのこと見える? どう見えている?」


「いや、ええと、君は……その、女の、人に……」


 なんとかマリウスがしどろもどろで答えると、彼女は嬉しそうに笑った。


「あら! じゃあきちんと見えているのね! わたし、何歳ぐらいに見える?」


「うう……ん、マリウス、何歳に見える?」


「そうだな……25,6歳ってとこかな……?」


「わたしが死んだのは27歳なのよ。きっと、その頃の姿なのね。あなたたちは、マリウスとティアナでしょ。わたし、知っているのよ」


 そう言って彼女は「うふふ」と笑った。2人は何故彼女が自分たちを知っているのか、と一瞬ぽかんとしたが「祈りの間での会話を聞かれていたのだろう」と無理やり自分たちで納得をさせる。


「わたしはコンスタンツェって言うのよ。あの、白いやつ、えっと霊体っていうの? それがたくさん集まってるあの部屋にずーーーっといたんだけど、最近あなたが来るようになって」


 そう言って彼女はティアナを指さした。


「こりゃ、近寄ったら殺されちゃうと思って、っていうかもう死んでいるんだけどね! でも、もうちょっとあそこにいたかったから隠れていたのよ。だけど、見ていたらなんだか面白そうだったから、ちょっとあなたについてきたのよね!」


「ええ……? でも、あそこからマリウスが引っこ抜いた以上は、あなたは、その、これから天に召されてしまうはずなんだけど」


 そう言うと、コンスタンツェと名乗った彼女は「うふふふっ」と笑って、膝を抱えて再び空中で一回転した。その様子を見て、ティアナは「すごい芸当ねぇ」と驚いて口をぽかーんとする。そして、そんなティアナを見てマリウスが「呑気すぎないかい!?」といささか情けない声で言う。


「わたしが? 召される? うーん、全然そんなことないみたいだけど。それに、引っこ抜いたってなぁに? わたしいつでもあの部屋から出ることが出来たけど」


「そうなの? マリウス」


「僕に振らないでくれる? 単に今までの霊体がそうだったっていうだけで……そもそも、あの部屋からいつでも出られるって? 出たことはあるのかい?」


「あるわ! だけど、あんまりあの部屋から長くは離れられないみたいだったから、仕方なくあそこにいただけよ。なんかね、死んじゃう!って思って。死んでるけど」


 ほかの霊体はあの部屋から出たことがないと言っていた……と、ティアナに話すマリウス。どうやら彼は、霊体を「使う」ようになった初期の頃に、色々と彼らの生態に対して問答をしていたらしい。だが、彼が言うにはみなあの部屋にいるのだと。


 そう言って2人が会話をしている間。コンスタンツェは「どれだけ回っても目が回らないわ!」と言いながら、空中で膝を抱えてぐるぐる回っている。ティアナが彼女に手を伸ばしてもその体は透けてしまい、彼女に触れることは出来ない。


「まあ。本当にホロゥなのね……それで、あなたは長くあそこにいたの?」


「そうよ。ずうっと。どれぐらいの年月かはわからないわ。なんかずーーーっと隅っこでぼんやりしてたの」


 そう言って、くるりと一回転してから「ほんと、これ楽しいわね!」と笑うコンスタンツェ。


「マリウス、この人。本当に天に召されないの?」


「うーん、僕にわかるのは、今までのホロゥがただそうだったっていうだけだから……こんな風に自由に話したり姿を現せるホロゥには会ったことはなかったし……ティアナ、これは君のせいじゃないかな?」


 そのマリウスの言葉に「そうよ! あなたのおかげで、わたしこの姿になれたんだから!」とコンスタンツェはティアナの隣に座った。座った、と言っても彼女はものに触れることが出来ないため、ソファの座面に腰を下ろす……ような体勢になって、実際は座面から少しだけ浮いている。


「あなた聖女でしょう? すごい力を持っているのねぇ。あなたに触れられた瞬間、わたしの中に力がみなぎってきて、そうしたらこんな風に姿を見せることが出来たの。ありがとう!」


「ううーん、わたし、何もしていないんですけど……」


 マリウスは「君はいつもそうだね」と呆れた様子だ。確かにティアナは、毎度毎度「何をしているわけでも」ないのだという。ただ、聖女だと言われたので祈りの間に行って、ホロゥが邪魔だから切って。像の前でよくわからないものの「神託をください」と祈れば神託をもらえる。そして、マリウスが引っこ抜いてきた人差し指とホロゥの間を触れば、ホロゥは少し力を得て彼から離れる。そのどれも、彼女自身が「そうしよう」として、何かをしてきたわけではない。


「そういう人こそ、怖いものよ。本当はどんな力を秘めているのか、わからないってことでしょう」


 コンスタンツェがそう言えば、マリウスは「確かに」と同意をした。だが、ティアナ自身は「そうかしら……」と嫌そうな表情を見せる。


「それより、ねぇ、あなた気を付けた方がいいわよ」


 そう言ってコンスタンツェはマリウスを指さす。


「僕?」


「ええ、そうよ。ねぇ、言ったでしょ? わたし、あの部屋を出られるって」


「そうだね」


「長時間は離れられないけど、まあ、それでも30分ぐらいは飛べていたのよね。だから、王城にも行けないかなって思って、何度か浮いていたんだけど」


 コンスタンツェが言うには、あの部屋から一度離れてしまうと、再び離れられるようになるまで時間がかかるのだと言う。その「離れられる」「離れられない」の感覚は、ティアナにもマリウスにもよくわからなかったが、彼女が言うからには間違いはない。


「あなた、誰かがやっている悪行を暴こうとしているでしょ。ちょっと、相手は感づいているみたいよ。狙われているかも」


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