表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/136

レイナとアイシェと酒乱樽

今回レイナ視点の後にアイシェ視点が続きます。

「うーん、この展開は予想外だけど、つまんないかも」


 空中に映し出されたモニターを見ながら、私は呟く。


「まさかアイシェが倒れるとは」

「そだねえ」


 アイシェが倒れた。このままだと勝者は酒乱樽の剣聖だろう。


「でもまあ、大丈夫かな」

「どうしてそう思われるのですか?」

「うーん」


 これはほとんど、勘というか期待でしかないんだけど。


「このパターン、前にも経験あるし、なんならローソンもいるからね」

「それはどういう……?」


 そんなことを話しながらモニターを見ていると、アイシェが立ち上がった。


「お、ここからが面白いかもね」


 さてさて、ここからクライマックスな展開じゃないかな?

 私はわくわくしながら、モニターを見続けた。


――ところ変わって、剣聖戦の舞台。


「……っ?!」


 私は? あれ? これはどういう。

 さっき私は、ローソンさんの技に倒れた。つまり、負けた、はずだ。

 でも私はまだ生きていて、森にいる。


「生きてるのでしょうか、これは」


 だとしたらなんで? 意味が、理屈が分からない。


「剣聖戦はどうなって……周りを確認して……」


 私はとりあえず状況の確認をするために周囲を確認する。


「え?」


 私の近くに、ローソンさんが倒れていた。


「これは……まさか! イデア・オーバーロード・モード・レイナ!」


 私はすぐさま剣を構えて、戦闘態勢に入る。


「出てきてください」


 私は、どこかにいるであろう、剣聖に声をなげかける。


「出てこないなら、この一帯ごと切り刻みます」


 脅しではない。今のステータスと流星斬ならそのくらいはできる。


「はははっ、まいったね。まさか起きてくるなんて」


 そういって、森の中から、ふらっと、剣聖が現れる。


「やはりあなたでしたか、酒乱樽の剣聖」

「後学のために、どうやって起きたか聞いても?」

「……」


 恐らく、状況だけ見るに、私達はきっと幻覚、あるいは夢を見せられていたのだろう。

 酒乱樽の出す酒霧、それによってだ。


「ローソンさんのおかげですよ」

「あぁ、彼か……」


 到達者と名乗るだけはある。彼はあの状況が酒乱樽の夢だと気づいて、私を夢の中で殺したのだ。

 そうすることで、私を無理やり覚醒させた。なんとも荒療治だ。


「それにしても、なんでまだある僕の酒霧が効かないのかな?」

「今の私に状態異常は効きませんよ」

「うーん、そうか、やっぱりステータスか」


 やっぱりの意味は分からないが、ステータスのおかげなのは、そうだ。


「それで? やりますか?」

「今の君と? はは、勝てるかなぁ」


 そういって彼は酒乱樽を構える。勝てるかなぁなんていいながら、やる気だ。


「では、私も」


 今構えているエストックではなく、ふらら・ラッハに手をかけ、構える。


「行きますよ」

「どうぞ」


 私は一気に踏み込んで、ふらら・ラッハを振る。


「っ! めちゃくちゃ重い一撃だなぁ」

「まだ止まりませんよ!!」


 むしろ今のステータスの私の一撃をいなしただけでも、彼がとんでもない人物だというのはわかる。だから私は作戦を考えることにした。


「まだ、まだ、まだ!!」

「は、はは」


 止まらない剣、流れるような連撃、その間に思考する。

 どうすれば、彼に一太刀入れられるか。

 勝手な推測だが、流星斬は使ってはいけない。

 使ったら殺してしまうからだ。

 だとしたら……。


「はっ!!」

「! 甘いね!!」


 私は大振りの一撃で彼の体勢を崩す動きに出た。

 そしてそれは、弾かれ、剣が空を舞う。


「終わりだね」

「いえ、まだです!!」


 私はエストックを抜いて、連撃を続ける。


「ははっ、さっきの連撃よりずいぶん軽いね、剣の性能が段違いだ」

「だとしても!」


 それでも彼は、いなしこそして、私に反撃する余裕はないように見える。

 だから私は剣を振り続け、そして、時は来た。


「ふらら!!」

「?」


 私が突如叫んだ剣の名。酒乱樽の剣聖には何を言っているかわからないようだが、体がこわばるのを感じた。

 これはきっと、スキルや魔法の名称、詠唱を聞きなれている私達特有の反応だ。

 相手が何かを叫んだ。それはスキルの発動や魔法の詠唱を意味することがある。

 だからこその、反応で。


「なんだ、何もないじゃないか」

「まあ、スキルではないので」

「ハッタリかぁ。頭がいいって聞いてたのに、この程度か」


 そういいながらも、彼は警戒を解き、私の連撃を受け続ける、そして、それが命取りだった。


「がっ!!」

「すみません、私の勝です」


 彼が体勢を崩した一瞬、私は首元にエストックを突き付けた。


「な、なに……が?」


 酒乱樽の剣聖は、今何が起きたのか、理解していない。


「これですよ」

「それ、は」


 私の右手にはエストックを、そして左手には。


「剣?」

「ふらら・ラッハです」

「ふらら……?」


 この剣、ふらら・ラッハには、ある能力があった。

 それは圧倒的な切れ味や、強度、ステータス強化だけに留まらない能力。

 所持者の手を離れた後、所持者の意思次第で動き、手元に戻ってくる能力。


「最初はこの能力、どう使うか迷ったのですが、案外使えるんですよね」

「剣が手元に戻る?」

「そうです」


 そして戻ってくる際にも実体はあり、途中の相手を倒しながら戻ってくる。


「まあ今回は、殺す気はなかったので、柄から戻ってこさせましたけど」

「殺す気なら、手はあったと」

「そうですね」


 そもそも殺す気なら、ふららで流星斬を使えば済む話だ。


「完敗……か」

「二対一で、ですけどね」


 わたしだってローソンさんがいなければ夢の中だ。そんな状態なら負け確定だ。


「ふう、なるほど、ステータスも怖いけど、君の頭脳もなかなかのものだったわけだ」

「貴方の剣技も、かなりの物でした」


 ふららを弾くだけの剣技を持っている相手だからこそ、その力量に隠して自然に剣を手放せた。

 すきを付けたのは、これのおかげだ。


「さて、僕は負けを認めるよ。これで優勝は君だね」

「ありがとうございます」

「ははっ……勝者に礼を言われるか。ちょっときついな」


 こうして私は、剣聖戦を勝ち残った。

 レイナさん、褒めてくれるでしょうか。


ご読了ありがとうございました!

感想、評価、ブックマーク等頂けますと励みになります!!

次回更新は次回日曜日の21:00までを予定しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ