アイシェと森と七剣聖
「ここが私の開始位置」
転送された直後、私は周囲を確認する。
森だ。
美魔女王の説明では、各々ある程度の距離の離れた位置からスタートしているらしいから、いきなり襲われることは無いとは思う。
とはいえ、油断はできない。場所が森なのがよくない。視認性が悪く、不意を突かれる可能性がある。
「とりあえず、周りの状況確認はこんなものかな」
さて、ここからどうするか。打って出るにしても、どこに誰がいるかなんて今のところわからない。
確かルール説明では、定期的に各々の位置が表示されるマップが使えるとか……?
「マップ」
出た。これがマップ? というものか。どうやら地図みたいなものらしい。
「これに定期的に剣聖の場所が映る……ということは」
下手に動いて奇襲される可能性があるよりは、この地図が機能した後に方針を決めた方がいい。そう判断した。
「定期的っていうのがどのくらいの間隔かわからないから、地図は開いておいて。あとは……」
それまでに、できることをしておこう。
私はできる限りの準備をしながら、時間を待った。そして。
「出た」
位置情報。どうやら本当に剣聖達はバラバラに配置され……。
「なにこれ」
確かに剣聖はバラバラだ。でも。それ以上に私との位置関係が問題だ。
私の位置は地図で表示される会場の範囲内。そのど真ん中だった。
「私を囲むように剣聖が配置されている……」
これは危なかった。下手に動けば、どの方向に進んでも、剣聖とぶつかった可能性が……。
「え、なに。速い?!」
地図上で、高速でこちらに向かってくる点がある。
「方角は……こっち!」
振り向いて向かってくる剣聖を視認しようと確認を始める。
こんなこともあろうかと、待ち時間の間に方角がすぐにわかるように印。そして何より。
「周りの木は切り倒してある。ちょっと派手な動きだからバレる可能性はあったけど……」
それでも、視認性の確保が重要だと、判断した。
「もうそろそろ?」
もう地図上の点は消えたけど、あの速度なら、もうそろそろ着いてもおかしくない。
「……? っ?!」
一瞬、あまりの静けさに内心で首を傾げた。だが、そのあとに来た、直球な殺意に、体が反応した。
「貴方は」
「今の一撃を受けるとは。恐れ入った」
彼は多分、剣聖最速と言われる男。名は……確か……。
「セブンだ」
「あ、それです」
そうそう、そんな名前だった。
「それにしても、いきなりステージの中心に来るなんて、よほどの自信があるんですね」
「何の話かな」
彼は何を言っているのか、という目を向ける。
あぁ、この人、あんまり物を考えないのかも。
「こんな場所に、地図に場所が表記されてる状態出来たら、色々面倒になりませんか?」
「ふ、ならないさ、少なくとも俺にとっては、な」
「?」
どうやら話が通じてないとか、理解できていないという話ではないようだ。
彼には、絶対の自信がある、そう受け取れた。
「まあいいです。さっさと始めますか」
「ふっ、いいだろう」
そして始まる、剣の戦い。
速度はかなり速い、でも。レイナさんほどじゃない。それに。
「下手くそ」
「何?!」
この人、速いけど、それだけだ。
多分今まで、速さで仕留めて来たから、真正面で切り結んだことが少ないのだろう。
正直、腕ではそこまでの恐怖を感じない。
剣もそうだ。事前に得た情報だと、彼の剣は軽く、薄く、しかし壊れない。それだけの剣だった。
「切り結んでも恐ろしくない。もう終わりにしましょう」
「なんだと?」
私は手に持ったエストックで彼の利き手、剣を持った腕の肩を刺す。
「ぐああああああ!」
彼は痛みで剣を落とした。本当なら刺すより腕を落とした方が速い。でも。
「モニター? でレイナさんも見てるだろうし、ぐろいのはなぁ」
私を応援してくれているであろう師への配慮だ。
「さて、これで、終わりですね」
「……はあ……は、はは、そうだな、終わりだ……俺……も……お前も!!」
「っ?!」
その発言と同時に、彼の視線を見る。あれは、地図。
私はとっさに自分の地図を確認し……。
「イデ――」
「おらぁ!!!」
「っ!!」
スキルを使う前に、強烈な圧を感じ、とっさに避けた。
「これで、終わりだ」
「なるほど」
彼の自信、それは剣の自負、だけではなかったのだろう。
つまり、だ。
「貴方達『全員』グルですか」
「そういう……ことだ」
なるほど、これは困りましたね。
こんな時、レイナさんなら……どうするか。
私はそんなことを考えながら、剣聖達に目を向けた。
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