レイナと夢と神託
扉の町を抜けてすぐの頃、私はまたマイハウスにいた。
「久しぶりねレイナ。元気そうで何よりだわ」
「お久しぶりですハラルド神」
夢の中のマイハウスにて、久々の神との対面だ。
「堅苦しいわね、神様とかでいいわよ」
「どっちにしろ堅苦しいのでは」
様付けな時点で、もう既に堅苦しい気がする。まあ短いからそっちの方が呼びやすいけど。
「それで、神様は何の御用でしょうか」
「あぁそうね、用というか、話があったのよ」
そういうと神様は「どれから話そうかしら」と悩み始めた。
「……そうね、まず、魔王討伐に関して礼を言わせて頂戴。ありがとう」
「いえいえ、倒したのは私じゃないですし」
「そうね……それについても話があるわ」
「お?」
私が倒さなかったことについてお話? なんだろう。
「貴女が倒さなかったのは正解よ。でもね、アイシェが倒してしまったのも、ちょっと不味かったわね」
「え」
そうだったの? 具体的にどう不味いのかな。
「本来は勇者が倒すべきだったのだけれど……勇者が思いのほか成長しなかったこと、そして何より、アイシェが強すぎたのが問題ね」
「それはどういう」
私が問うと、神様はまた悩み始めた。
「……そうね、まず、勇者の成長が止まったのは、おそらく貴女から離れたからでしょうね」
「というと」
「貴女の100のスキルについては以前少しだけ話したわね?」
「あぁ、レベル分のチートスキル」
「そう。それの一つに英雄教練というものがあるわ」
「英雄教練」
それを聞くとなんか、英雄を育てるスキルっぽいね。
「今レイナが感じた通りよ。貴女が教練したものは英雄に育つというスキルね」
「英雄に育つ」
「そ、もっと言えば成長率、成長速度の向上ね。恐らくそれだけではない効果も発揮されているけれど」
「そうなんですか?」
「そうよ。だってアイシェのあの強さ見てみなさい? 80レベルで到達できる強さじゃないでしょう」
「確かに」
月を斬ったり、魔王を単騎討伐、普通にレベル80が限界の人間がすることじゃない。
「ってことはアイシェも超越者に?」
「可能性はあるわね」
「ほお」
それは、凄いスキルだね?
「でもそれだけに手に負えないのよ、今回の事態は」
「といいますと」
「魔王を倒したのがアイシェという一件に戻るけれど、あの最強の魔王はね、ちょっと他の魔王と違って特別な個体なの」
「特別な個体」
まあ、強さ的にはそこそこだったけど。特別というほどの強さではなかった。
「あれはね、魔神の子孫なのよ」
「魔神」
魔の神様? ってところかな?
「そしてその魔神の子孫の魔王は、ある呪いを体に受けていたの」
「呪いですか……」
「えぇ。その呪い、勇者なら打ち消せるのだけれど、アイシェはわからないわ」
「……はい?」
「だから、アイシェが止めを刺したことで、呪われたかもしれないといっているの」
「は?!」
なんでそういうことをもっと早く言わないかな、このポンコツ神は。
「誰がポンコツよ。ちょっとタイミング悪く伝えられなかっただけよ」
「アイシェはどうなるんですか」
「どうなるって……そもそも呪われてるかもわからないわ」
「呪われてたら、どうなるんですか」
「それは……魔人の……依り代になるわね」
「……魔人の依り代」
それはつまり、生贄的なことだろうか。
「神様、回避する方法はないですか」
「貴女のキュアでも、おそらく完全に呪いを取り除くことはできないわよ」
「まあ、キュアですからね」
「解呪の魔法は強化されてないだろうから、こっちも無理ね」
「じゃあどうすれば?」
「守ってあげなさい」
「守る?」
「そ」
守ってどうするのだろう。というか、どう守れば?
「呪われたと言っても、それ自体が彼女を蝕むものではないわ。あくまでも魔人の依り代になる体になっただけ。アイシェを守って、魔神降臨の儀式を止められれば、問題はないわ」
「はあ、そうですか」
そうか……そうなんだ。
「ちょっと安心しました」
「そう? それはよかったわね」
「それで、なんでその話を今?」
「あぁ……それは」
そこまで言って、神様はハッと何かに気づいた様子を見せた。
「もう今日は時間みたいね、今度、今度話すわ」
「え、なんて中途半端な」
私はそれだけ言うと……なんと、目が覚めた。
「今回は凄く急な別れだったなぁ」
まあ、いいけど……相変わらず神様は微妙に使えない。
そんな失礼なことを思いながら、私は二度寝した。
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