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レイナと迷子と扉の街

「ここ、どこ」


 砂漠を抜けてしばらくした頃、私達はとある街で買い出しと情報収集をすることにした。

 買い物は日用品や食事、情報は剣聖についてだ。

 で。皆で手分けすることになったんだけど、これがよくなかった。

 初めてきた街でいきなり手分けなんてするものじゃない、それも、こんな……。


「いや、ほんとここ、どこ」


 こんな、わけの分からない街で、取るべき行動ではなかった。

 どこがどうわけがわからないかというと、この街、扉がいっぱいあるのだ。

 それこそ、道を扉がふさいでるなんて言うのは当たり前だし、道や空を移動する扉まである。

 で、その扉がすべて他の扉に繋がっている。

 私ときたら、そんな街だと知らずに手分けしようとか言って、二人を置き去りに勝手に歩き始め、そして扉を開いてみたりして……。

 結果、迷子である。


「なぜかマップも使えないし……本当にどうなってるのこの街」


 どうしよう……私は一人、時計塔の天辺に座り込んで考える。


「高いなーいい景色だなー怖いなー……はぁ」


 景色はいいかもしれないけど、シンプルに高いところは怖い。

 落ちたりしたら危ないし。うん。


「……あ、扉飛んできた」


 とりあえずここから離れよう。そう思って飛んできた扉を受け止めて開ける。


「今度はどこかなぁ」


 今度は……酒場……かなあ?


「お邪魔しまーす」


 こんな街、絶対住人も暮らし難いよね? なんでこんなことになってるんだろう。


「ん、おやおや、貴女は……」

「ん? 私をご存じ?」


 酒場に一人、ポツンといたバーテン風な男性は、私をご存じなようだ。


「えぇ、こんな商売ですから、情報はいろいろと入ってきますからね」

「へぇ」


 酒場と言えば情報集めの定番だ、そこの主? ともなれば情報通でもおかしくないのかな。


「それで、流星の魔女殿はどうしてこちらに?」

「道に……扉に迷っちゃって」

「あぁ、なるほど。魔女殿はこちらは初めてでしたか」

「えぇ、まあ」


 今の口ぶりなんか引っかかるね。なんだろう?


「ですがそれでたどり着いたのがこの場所でしたら、なるほど、運がいい」

「そうですか?」


 そうなのかな? 今のところそういう感じはしないけど。


「えぇ、本当に運がいいですよ」

「どういうところが?」

「この酒場には、この街を攻略する道具が揃っているからです」

「攻略とは」


 なんだろ、行先がわかる魔法の地図でもあるのかな。


「こちらのクローク、これをつけていれば『イメージした場所』に扉が繋がります」

「なんですと」


 それ、必須アイテムじゃん。


「この町の住人はこれを使って、いつでも好きな扉にアクセスするのです」

「え、防犯対策終わってない?」


 私の言葉に、バーテンさんはさわやかなイケメン笑顔で対応する。


「ははは、大丈夫ですよ。イメージしたところの扉が開きますが、必ずしも通れるわけではありませんから」

「なるほど?」


 つまり、開くけど、潜れないこともあるわけだ。


「でも開けたら家の中の様子とかは分かっちゃうよね」

「まあそれは、ですから、この街では家の玄関に、魔法で移動できない扉もつけることで、見えにくくしていることが多いですね」

「あぁ、二重構造」


 アクセス可能な扉を開けても、その先はまた扉の部屋で、許可なく入れないようになっているとかだろう。多分。


「で、このアイテム、どうすれば手に入るんですか?」

「そこは相手は魔王を倒した英雄の師匠、流星の魔女殿ですからね、お安くしておきますよ」

「ほほう」


 いくらかな、わくわく。


「とはいえ、お金をもらっても仕方ないので、情報と交換でどうでしょう」

「情報?」


 なんだろ、私に売れるような情報、あるかな。


「そうですね、今期の王国の剣聖、流星の魔女殿の弟子について、伺いたいですね」

「剣聖……私の弟子……アイシェ?」

「はい、そのアイシェさんです」

「うーん?」


 どうしてそんなことを知りたいんだろう、まあ、いいけど。


「アイシェの何が知りたいの?」

「そうですね、強みと弱みを一つづつでどうでしょう」

「ほっほう」


 強みと弱みかぁ。


「そだねえ、その前に、この情報でクロークはいくつ貰えるのかな?」

「おや、これはいいところにお気づきになる。実は何も言われなければ魔女殿の分だけで情報をいただくつもりでした」

「おぉ……そんなこと言っちゃっていいの?」

「えぇまあ、正直魔女殿からぼったくるなんて、本当は怖くてできないという思いもあったので」

「ほんとかなぁ」


 この人ならなんだか、飄々とした風にやってのけそうだけど。


「で、情報だっけ」

「はい、そちらの情報でお仲間の方々の分も差し上げますよ」

「じゃあ、言っちゃおうかな」


 さて、アイシェの強みと弱みかぁ。


「強みは間違いなく、判断力だね」

「ほほう」

「知識に優れるし、とっさの判断とか、機転が利くところが強みかなぁ」

「スキルやステータスではないのですね」

「うーん? まあ、ステータスもかなりのものだけど……それよりはやっぱり判断力が強みかな」

「なるほど、では弱みは?」


 うーん、弱みかぁ。


「逆のことを言うようだけど、判断する為に動きがワンテンポ遅れがちかな」

「なるほど、強みでもあり、弱みでもあると」

「そだね、そこのバランスには気を付けた方がいいよとは、言ってるんだけどね」


 なんでも思慮深いのはあの子の良いところだが、弱点でもある。

 答えが出ないととりあえず安パイの手を打ちがちだ。


「まあでも……」

「でも?」

「いや、これは言わない」

「おや、残念です」

「これも情報だからね」


 これは言ったらダメな気がする。だから言わない。


「さ、クロークくださいな」

「はい、それと、お仲間の位置がわかる鏡も差し上げましょう」

「いいの?」

「えぇ、楽しい会話ができたお礼とでも思って下さい」

「そお? じゃ、遠慮なく」


 私はそういって、鏡とクロークを受け取る。


「それでは、良い旅を」

「ん、ありがと」


 それだけ告げて、クロークを着た私は鏡で見えたアイシェとサロスの場所に扉で移動。

 そして三人揃った段階で、街を出た。


「二人とも……ごめんね?」

「いえ、まあ、結果的にレイナさんのおかげで出られたからいいのですが」

「師匠ですら道に迷う街……なかなかの強敵でしたね」

「あははは、そうだねー」


 なんて、くだらない会話をしながら、私達は扉の街を抜けて、次の町を目指すのであった。



ご読了ありがとうございました!

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次回更新は次回日曜日の21:00までを予定しております。

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怪しすぎる(゜ω゜)
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