レイナと砂漠と噂の剣聖
「そういえば……もぐもぐ。聞いた? もぐ。砂の剣聖の話」
「いえ、もぐ。いつの間にもぐもぐ。そんな話が?」
「あの、二人とも、話すか食べるかどっちかにしないか?」
一時帰宅の家の中。私が買い貯めた串焼きや野菜スティックを食べながら話すと、アイシェもそれに倣って(?)返事をしてきた。そしてサロスに窘められた。
「もぐ。ん。ごめんごめん。お行儀悪かったね」
「ん。そうですね、すみません」
「いえ、はい。それで、砂の剣聖とは?」
「ああ」
私は町で聞いた砂の町出身の「鉄砂の剣聖」と呼ばれる女性の話をした。
「砂鉄ではなく、鉄砂ですか」
「そ。魔力を流した鉄を砂状に変えて操れる剣聖らしいね」
「女性の剣聖ですか」
「サロスそこ気にする?」
女性だと何かあるのかな。もしかして女剣士萌え?
「別に女性だからどうという話ではなく、七剣聖唯一の女性として有名なので」
「ほうほう、唯一の女性」
でも今回アイシェは剣聖として出場するのだから、もはや唯一ではないよね。
「砂の町においては最強の剣聖とも名高いそうですね」
「そうなんだ?」
「はい。鉄を砂に、砂を鉄に変えて戦えるそうなので」
「うわ」
それ砂漠でやったらこの広大な砂漠全てが剣になるわけだ。こわ。
「そりゃ強いだろうね」
「はい。その性質上の強さだけではなく、剣士としても一流だそうです」
「サロスって剣聖に詳しいんだ?」
「まあ、ソフィアから聞いた話ですが」
「そふぃあ」
えっと、あーあの人ね、知ってる知ってる。
「……師匠」
「知ってるよ?」
「まだ何も言ってないじゃないですか」
「うっ」
「レイナさん、ソフィアさんは賢者さんですよ」
「あぁ」
そっか、それで聞き覚えが。
「で、えっと、サロスは賢者ちゃんから剣聖の話、聞いたの?」
「はい。七剣聖全ての話を聞いています」
「わあお」
そりゃ心強いね、情報は力だからね。
「とはいえ、剣士として一流でも、アイシェはそれ以上ですが」
「確かに」
「いえ、そんなことは」
謙遜するアイシェだけど、正直剣技は一流というか、もはや神業だ。
魔王は一人で倒すし。月は斬るし。
「……あ」
「どうしたんですか、師匠」
「いやあ」
そういえば、剣聖ってみんな……。
「剣聖って皆魔剣とか神剣、聖剣持ちなのかな?」
「ああ、そういえばそうですね」
「確かに、レイナさんの言うとおり、変わった剣ばかりかと」
そっか、そうなんだ。
「そっかあ」
「どうしたんですかレイナさん」
「んや、それでアイシェは普通の剣じゃ、なんか不公平かなあと」
「そんなことは……」
「思ったので、これあげる」
「え」
私はアイシェに剣をあげた。
「あ、の……この剣……」
「私が造った剣なんだけど、よかったらどうぞ」
「あ、は……い……」
なんかアイシェの様子が変だね?
「気に入らない?」
「いえ! そうではなくて、ですね」
「ん?」
なんかあったかな。
「これも、ルーンの剣ですか?」
「いや、それは私がなんとなく作った剣」
「なんとなく……」
「?」
なんだろ、なんでこの反応?
「あの、師匠、これ、あげるって、ただで、ですか」
「そだよ? なんで?」
「いえ、そうですか」
「??」
なんかサロスも反応がおかしい。
「なんか変だった?」
「変っていうか、はい。変なのはレイナさんです」
「え」
私が? 何が?
「こんな業物、ホントに頂いていいんですか」
「見ただけでわかるの?」
「「わかりますよ!!」」
「おぉう」
今度は二人して声を上げる。なにさどうした。
「これ、噂に聞く神剣、それ以上じゃないですか?」
「そんなことないよ。ただちょっと盛っただけで」
「盛ったって、何をですか」
「魔力とデータ」
「でーた」
「あぁ」
これは伝わらないのね。
「ま、なんていうか、全力で作った『私が考えた最強の剣』みたいな?」
「なんとなく作ったんですよね?」
「そだよ? なんとなく、作ってみたくなったの」
「……それでこれ?」
「流石師匠としか……」
「うーん?」
そんなのこの剣凄いかな。ソードビットの方が強いけどなあ。
「ちなみに、お名前は」
「ふらら・ラッハだよ」
「ふらら・ラッハ」
どっかの神話の剣から取った名前だ。
「フラガラッハっていう神話の剣から取った名前だね」
「それでふらら・ラッハですか」
「ふさわしい名前かと」
「ですね」
「そお?」
神話に出てきそうな剣ってことかな。この世界の基準だとこの剣でもそうなのかあ。
「まあ、でも、レイナさんのソードビットを見慣れているせいか、すんなり受け取れる私がいます」
「そうだな、アレに比べれば」
「そこまで良し悪しわかるんだ」
どっちがいいかまでわかるなんて、もしや鑑定眼でも?
「明らかに異常な魔力ですからね」
「見ただけで死を覚悟できるレベルの圧がありますからね」
「そうなの?」
あらまあ、それはビックリ。
「まあ、レイナさんの方が明らかにヤバいので、そのあとにソードビットを出されても、まあそういうこともあるかと」
「師匠の方が脅威だからなあ」
「私そんななの」
周りからそう見えているとは思わなかった。
今度から気を付けよう。
「さて、そんなわけで、お喋りはこのくらいにして、そろそろ出ようか」
「そうですね」
「はい、師匠」
こうして、私達は束の間の休息を挟み、また旅に出るのであった。
ご読了ありがとうございました!
感想、評価、ブックマーク等頂けますと励みになります!!
次回更新は次回日曜日の21:00までを予定しております。




