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アイシェと魔王と超える力

 レイナさんの魔法で草原に飛ばされてすぐ。

 私は剣を構え、魔王を見据える。


「転移か……あのエルフ、意外と本当にハイエルフなのかのう?」

「ハイエルフですよ。というか、操魔は使わないんですか」

「使わぬ。あのエルフに何をされるか、わかったものではないからな」


 まあ確かに、レイナさんならこの戦いをどこかで見ている可能性はある。

 でも、レイナさんは人の眼を気にしなくていいと言ってくれたし、大丈夫かな。


「そうですか、それでは、始めますか」

「そうじゃのう。フォールン・ムーン」


 魔王はいきなり魔法を使ってきた。何の魔法なんでしょう。


「かかっ。これであのエルフもこの世界も終わりじゃよ」

「今のは……」

「月を落とす魔法じゃよ。此度の復活までに、結界の中で編み出した魔法よ」

「月を……」


 そういわれて、私は空を見上げる。


「あ……」


 つい、そんな言葉にならない声が漏れる。

 月が、迫ってくる。


「あのエルフが気付いてどうこうする前に、この世界は終わりじゃよ。かっかっかっ」

「……」


 確かに、レイナさんってちょっと鈍感だから、気づかないかも。

 でも……。


「なら、私がどうにかすればいいだけですよね」

「何?」


 私は、魔王は無視することにした。

 正直に思う。この魔王は敵ではない。私にとって、いや、レイナさんにとって。


「身体能力強化」

「ほう」


 そして、これだけだと足りないかもしれない。だから。


「イデア・オーバーロード。モード・レイナ」

「ん? なんじゃそれは」


 私の、いつの間にか得ていたスキル。イデア・オーバーロード。

 その能力は……正直どういうものなのかまではわかっていない。

 それでも確信できる一つの効果があった。


「これは、私が私の知る限り最強の人を超える力。超えるだけだから、勝つ力ではなかったけど」


 実際、レイナさんとの試合で、これをこっそり使ったことがあった。物は試しというやつだった。

 でも結果は、身体能力強化を合わせても、届かなかった。


「まあ、もっとはっきり言えば、特定の人物のステータスを超えるってだけなんですけど」

「なるほど、それであのエルフを超えたわけか」

「そうです」


 そう。だから今の私は魔力すら、レイナさんを超えている。だから。


「これで、斬ります」

「何?」


 前から考えていた、レイナさんの大技の攻略。

 星を降らせるほどの技をもった、あの人に勝つためのビジョン。


「行きます」


 私はそれだけいうと足に力を一杯に込め、地面を蹴って空に上がる。

 そして。間近にせまった月を見て。


「星じゃないけど……!」


 ちょっとだけ、この技のお披露目に関していえば、どうかなと思いつつ。それでも私はこれを星と見て、叫ぶ。


「流星斬!!!」


 星を斬るために編み出した技。

 過去、剣聖の星斬りをみて、そういう対処もアリなのか、と。剣で斬る、言うだけは簡単だが、難しく。それでいてシンプルな答え。

 でも、剣聖は大きさと重さを見誤って潰れた。だから。


「粉々になるまで一瞬の、無数の斬撃で斬ればいいだけ」

「なん……と……」


 私は斬った。星を……いや、月を。


「粉々にしちゃったから、風に乗って消えますよ」

「…………」


 魔王はこれで終わったと思っていたのだろう。

 だけど、そうはならなかった。


「は、かかっ。これは……負けじゃの」

「認めるんですか」


 私は問う。負けを認めるということは、死を認めることだ。

 私はレイナさんのように甘くない。勝つために殺める覚悟はある。


「星を斬る化け物に勝つ自信はないのう……」

「そうですか」


 私は、それだけ言うと。


「流星斬」


 魔王を。斬った。星と同じように、粉々に。

 血風が、舞う。


「レイナさんはぐろい? の苦手だから。生々しい死体なんて残せないですからね」


 まあこれでは、逃がしたと思われる可能性もあるんだけど。

 でもレイナさんなら、わかってくれるから、いいよね。


「どうやってレイナさんと合流しよう」


 思ってみれば、レイナさんがいないと帰れない。いや、王都はすぐ近くだけれど。

 まあ、なんとかなるよね、多分。


「レイナさんみたいな発想かな。これ」


 そう思ってちょっとだけ、笑えた。

 師匠に似たのかもね。


「帰ろ」


 私はそれだけ呟くと、とりあえず王都に向かった。


ご読了ありがとうございました!

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次回更新は次回日曜日の21:00までを予定しております。

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