レイナとエルフと結界
エルフの里……国? を目指して旅を初めて二日、寄り道なく、召喚獣で進んだ旅はすぐに終わった。
つまりまあ、二日目には森についたんだけど。
「後はこの森からエルフを探すだけ……って言ってもねえ」
「はい、広すぎますからね、この森」
そう、広いのだ、それもすごーく。
一回魔法で空を飛んでみたけど本当にかなり広範囲に森が広がっていて困った。
なんならエルフが住んでいるなら開けた場所があるかなとか思ったけどそんなことも無くて、更に困った。
なのでクークルに聞いてみたけど、マップには森しか出てなくて全然使い物にならなかった。まあ森の中の地図っていうのも無いよね。
「どうします? レイナさん」
「まあ手がない訳じゃないけどね」
「そうなんですか?」
こういう時こそエルフの本領発揮だ。
「ちょっといいかな? エルフの里って知らない?」
「何してるんですかレイナさん。それ木ですよ」
「そうだよ?」
「?」
アイシェは何が何だかわからない様子だ。
「エルフは一部の動植物とお話しできるんだよ。知らなかった?」
「え、えぇ、知りませんでした。レイナさんがおかしくなったのかと思いました」
「胸に来る言葉だね……」
一言多いよアイシェ……。
まあそんなわけで手近な木に訊いてみたんだけど……。
「あ、知ってるみたい」
「本当ですか!」
これならエルフの里まで余裕だね。
「森の木々が案内してくれるみたい。いこっか」
「はい!」
森の木々の声を聴きながら歩く中、アイシェに声を掛けられる。
「あの、レイナさん」
「何?」
「今更なのですが、こんな能力があるのなら、初めて出会った時も森から抜けられたのでは?」
「……あ」
確かに、そうかもしれない。でもあの時は、ねえ。
「ちょっと気が動転してて」
「そうなんですか?」
「そうなんですよ」
そんなこんなでお喋りしながら歩くこと十数分、遂に私達はエルフの里についた。
そして囲まれてしまった。
「何者だ! どうやってこの場所を知った!!」
「えーっと、木々に訊いて来たんだけど?」
私はもしかしてエルフだと認識されていないのかと思って長めな髪に隠れた耳を出してみる。
「な、同族か。それもよく見ればすさまじい魔力量だ……も、もしやハイエルフ様でいらっしゃいますか?!」
「一応そうだけど」
「し、失礼しました!!」
この中で一番偉いのか、話していた男性が謝ると同時に膝をつくと、他のエルフも同様にそうした。
「いやいや、気にしないで。人間と一緒だし気づかなくても仕方ないって」
「そうですね、エルフは人間嫌いと聞いたことがありますから」
まあ私はアイシェのこと大好きだけどね。
普通のエルフは違うみたいだ。
「それで、この里で一番偉い人に会いたいんだけどいいかな?」
「は、それなら私という事になっております」
「あ、そうなんだ」
じゃあもう話は簡単だね。
「そのうちまたこの里に来てもいい? 外の世界で同族に会えるのって珍しいでしょ。たまにこうして仲間に会いたいなって」
「おぉ、エルフの王族たるお方がわたくし達を仲間とおっしゃってくださいますか……それに対し私達は弓を向けてしまいましたこと、深くお詫びいたします」
「あぁーうん、気にしない気にしない!」
イチイチ会うたびに堅苦しいのも嫌だから、今のうちにフレンドリーな感じにしたいものだ。
その後、私達は王族とその妹分ということで大層豪勢な歓迎を受けた。
特に料理は絶品で、森で採れたのであろう果物やキノコを使ったモノが多かった。
「それで、勇者たちが倒そうとしている魔王の事なんだけど」
「はい、私共で知っている事ならお答えいたします」
「復活はもうしてるんだよね?」
「そのようですね、結界が破られたのが一ヵ月ほど前ですから。もう完全に回復したものかと」
「ん?」
結界? どういうこと?
「結界って何?」
「ご存じないのですか? いえ、そうですね。ハイエルフは神の域の存在とされるお方。下々の事に意識が行かないのも無理は無いのでしょう」
「いやあ、そんなことはないけど……」
単純に異世界人だからってだけなんだけどね。
「それではお話しいたしましょう」
それから彼……カイルというエルフが語ってくれたのは魔王の中でも最強とされる魔王は死んだのではなく封印したということ、その結界に先代勇者と共に戦ったエルフが携わっている事。
そしてそれを管理する役目をこの里のエルフが担ってきたということだ。
「死んで復活って言うんじゃないんだね。そっかあ」
「此度の勇者殿は魔王を倒し切れると良いのですが」
「うーん……」
聞いた感じその先代の勇者とサロスにはそんなに強さに差はない。きっと苦戦を強いられるし、再封印がやっとだろう。
もっと時間があればサロスの方が強くなったとは思うけどね。
「それで、このお話を聞かれたという事はレイナ様は魔王に興味をお持ちで?」
「うん? うーん、まあね」
とは言ってもやっぱり私は補助に回って真正面から戦うのはサロス達に任せようとは思ってるけどね。
「それでは魔王討伐をお考えですか?」
「まあそうだね。平和じゃないと旅もロクにできないし」
色んな街を周って来たけど、まだまだ生き足りない世界だ。楽しむ前に魔王に台無しにされるわけにはいかない。
「旅ですか……」
「そ、どうかした?」
「いえ、そのような理由であの恐ろしき魔王と戦うとは、流石としか言えません」
「そ、そうかな」
流石に理由が阿保の子っぽかっただろうか。
ちょっと考えてみる……うん、少なくとも真っ当な理由ではないね。
「それでさ、勇者パーティが今どうしてるかとか知らない? 足並みを揃えたいんだけど」
「それでしたら先日勇者パーティがこの森を通って魔族領に入るのをエルフの偵察が目撃しております」
「おぉ」
なら丁度いいタイミングだね、今からでも追いかければ間に合いそうだ。
「それなら明日になったらここを発つよ、早く再会したいしね」
「おぉ、勇者パーティとはお知り合いでしたか」
「まあね」
その勇者を育てたのは私だし。
「それでは、今日はここでお開きにしましょうか」
「そうですね、歓迎ありがとう」
「いえいえ、ハイエルフのレイナ様を敬うのは当然の事ですから」
「あははは……」
まあ私、そこまで時長く生きてないけどね。全然小娘だけどね。
とまあそんなわけで、私達は歓迎の宴会を終わると、今晩の寝床に案内され、翌日までぐっすり眠った。
翌朝、寝坊した私をアイシェが揺り起こすところから朝が始まった。
「ふぁー。同種の里だと思うとゆっくり寝れちゃったね」
「レイナさんは今までも結構寝坊助だった気がしますけど……」
「そう?」
思い返してみる。そんなときもあったかもしれない。
「さ、それじゃあ魔族領、魔王の城向けて出発だよ」
「はい、覚悟はできています!」
私が居るとは言え勇者パーティと違ってこちらは二人だ。これまでと違って危険な旅になるだろう。その覚悟だろうね。
「じゃあいこっか」
私が言うと、アイシェはいつものように私の後に付いてくる。
さてさて、最強の魔王との闘いの旅だ。気を引き締めた方がいいよね?
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次回更新は次回日曜日の21:00までを予定しております。




