レイナとボートと水しぶき
「今日こそ観光するよ!」
「はい、わかりました」
「およ?」
思ったよりアイシェは昨日みたいにがっついて来なかった。
「どうかしましたか?」
「いやあ、また訓練したがるかなあと思って」
「あぁ、いえ、訓練もいいですが私もその、レイナさんと観光したいので」
「そっかー、そっかそっか!」
うんうん、嬉しい事言ってくれるね! うちの妹分は!
「それじゃあ観光にレッツゴー!」
「れっつごー?」
そっか、こういう横文字は通じないんだったね。
「さあいくぞ! って意味かなあ」
「あぁ、そうですね、行きましょう!」
そんなこんなで私達は水の都を観光することにした。
「まずはやっぱり買い食いだよねー」
「レイナさん食べるの好きですよね」
「まあねー」
数年間とはいえ点滴と流動食だった生活の所為かやはり食べられることに対する感動はひとしおだ。
「ん、この串焼き美味しい」
「あ、私にも分けてください」
「じゃあアイシェの持ってるそれと交換ね」
「はい、いいですよ」
アイシェの持ってるフルーツ串刺しという斬新な物を頂く。
うん、美味しい果物にうすーく水あめが絡んでいて甘くておいしい。
「いやあ、こんなに楽しいのもやっぱり二人一緒だからだねー」
「そう言ってもらえるとお供している甲斐があります」
そうやって私達は楽しくお喋りしながらこの都の名所である湖まで向かった。
「湖ってボートとか出てたよね」
「はい。観光名所の最たるものですから。結構な収入源だとか」
「へ、へえ」
これからロマンチック? に湖観光という時にお金の話は若干無粋かも知れないと思ったけど、それもまたこの世界を知るってことなのかな。
「というかアイシェって結構物知りだよね」
「レイナさんが知らな過ぎる気もしますけど……王宮に居た時に勉強させてもらっていたので」
「そうだったんだ?」
へえ、それは知らなかった。独自に知識の大切さを知って学んでいたんだね。偉い。
私なんて二人の訓練が終わったらあとはのほほんと昼寝とかしてたなぁ……。
「頼りになる妹分が居て私は幸せだよ」
「そう言ってもらえると嬉しいですね」
などと話しながら進んで行くとついに湖に着いた。
「せっかくだからボート、乗るよね?」
「そうですね、そうしましょう」
一人20リーネでボートに乗る私とアイシェ。もちろん一緒のボートだよ。
「さ、全力で漕ぐよ!」
「そんなことしたら湖が荒れるから止めてください!」
なんかアイシェに注意を受けてしまった。私の全力って言っても魔職だから大したこと無いと思うんだけどなぁ……。
「じゃあアイシェが漕いで」
「私ですか? いいですよ」
そう言ってアイシェがボートを漕ぎ出す。ボートは停泊場を離れて湖の上をすいすいと進む。
「いいねーなんかまったりしてて素敵な気分だよ」
「それは、良かったです」
アイシェは漕ぎながらなのでちょっと言葉に力が入ってる。
「大変? 変わろうか?」
「いえ、別にこれくらいは、大したこと無いです」
そういうアイシェは確かに大したこと無いと言った様子だ。まあ慣れないから力が余計に入っちゃってるのかもね。
「特にこの湖から見る街の景色がいいね、風光明媚っていうのかな」
「確かに、この景色は素敵ですね」
アイシェもボートを漕ぐ手を一旦止めて景色に見入っている。
はー、平和っていいなあ。
「これを守るためになら、魔王と戦ってもいいかも」
「レイナさんって本当に旅好きですね」
「そっかなあ」
旅が好きって言うより、生きるのが好きって感じがするけど。生きてるって実感できる生き方が好きだ。
「さてアイシェ、そんなわけだから戻って対魔王特訓でもしようか」
「え、本気だったんですか、意外です」
「そ?」
「えぇ。レイナさんだから『魔王討伐は勇者の仕事でしょ』って結局やらないものかと」
「まあ、それはそうなんだけどさ」
その考えは今でも変わらないんだけど、いざって時の為に私達が動ける状態にはなっておいて損はない。
なにせ四天王に一回負けてるしねぇ……心配にもなるよ。
「さ、帰りは私が漕ぐよ!」
「お手柔らかにお願いします」
この後、帰りのボートで大量の水飛沫を上げながら帰ったのでアイシェとボート貸しのおじさんにたくさん怒られた。
後日、私とアイシェは話し合って休暇を切り上げてエルフの森に向かう事に決めた。
理由は魔王討伐の手助けをすると決めたからだ。
そのついでにエルフの里も確認したい。
「さ、行こうかアイシェ」
「はい、レイナさん」
私達は再びユニコに乗ると、旅に出る。
今度の目的地はここから北西にある森林地帯だ。
そこにエルフの里があり、恐らくその奥、大陸北方に魔王の城がある。
さて、サロス達に追いつけるかな?
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