レイナとウルフ100匹とBランク
ウルフ討伐から帰ると、ギルドで依頼の達成報告と、数が5倍だったこと、そして何故か私の強さについて報告をすることになった。
「そうですか……レイナさんが一人で……100匹のウルフなんてBランク案件なのに」
「はい。俺達が見ていましたから、間違いありません」
「いやあ……あはははは」
ロイドさん達にはここに来るまで散々褒めちぎられた。
なんならPTに正式加入しないかとまで。
でもまあ一人旅を今は楽しんでいる(?)ということにして丁重にお断りした。
「とりあえず、ウルフの死体があるということですので、こちらで素材を買い取りますね」
「解体してないけどいいですか?」
「手数料は引かれますがそれでもよろしいでしょうか?」
「あ、はい」
手数料くらいはまあ、発生するよね。流石に解体するのもタダって訳には行かない。
そう言う意味ではアイシェには悪いことしたかもね、今度会う事があったら補填しなくちゃね。
「それでは数が多いので、倉庫に出してもらってもいいですか?」
「はい。問題無いですよ」
そう言うと、受付のお姉さんが倉庫に案内してくれるというので付いて行く。
「ここです」
「おぉ」
中は随分こざっぱりしているけれど、とても広いホールのような場所だ。
これならウルフ100匹なんて余裕で入るね。
「じゃ、出しまーす」
私はそう言うと、ウルフ100匹を倉庫に出した。
「本当に……大量ですね」
「20匹はロイドさん達の分なんで、お願いしますね」
「はい、わかりました」
受付のお姉さんはそう言うとさっさとカウンターに戻ろうとする。
お代はカウンターでかな?
「こちらがウルフ80匹の買い取り額と、今回の依頼の正式な報酬となります」
「ありがとうございます」
今回の依頼はギルド側の調査不足の落ち度があるとして報酬はBランク相当にちょっと色を付けたくらいの額を貰った。
それプラス80匹ウルフの買い取り額で結構なお金になった。
具体的には一ヵ月の宿代くらい。
「それで、レイナさん、ちょっとご相談があるのですが」
「へ? なんですか??」
なんだろ、嫌な予感がする。
私の予感は良く当たらないけどね!
「ギルマスと相談することになるとは思いますが、今回の件と朝の一件、レイナさんの実力を考えるとGランクは不適切だと思われます」
「はあ」
「そこで、レイナさんにランクBを与えられないか進言するつもりです」
「え」
うーん、それは……。
ありがたいけど、良いのかなあ……。
「さ、行きましょう」
「は、はい」
そんなわけで、ギルマスに会う事になった私。
うーん、こういう展開、嫌いじゃないよ! 読む分にはね!
実際自分がってなると緊張するっていうか、メンドクサイっていうか……。
「失礼します、ギルマス、例の冒険者です」
「おう、入れ」
「はーい」
なんか「例の冒険者」って表現が気になるんだけど……。
まあ、いっか。
「よく来たな。俺の名前はジークだ。よろしくな期待の新人」
「は、はあ」
そう名乗ってニカっと笑ったのは筋骨隆々な如何にも元冒険者なギルマスだった。
「それで、わざわざ連れて来たってことは何かやらかしたか」
「はい……それが――」
受付のお姉さんが事のあらましを告げる。
「わっはっはっはっは! そうかそうか! ウルフ100匹を同時に相手どったか!」
「笑い事じゃありませんギルマス! レイナさんにこの調子で森を荒らされたら新人が育ちません!」
「森を荒らすて」
そんな私野蛮な事しないよ? ホントだよ?
「まあヘレナの言う通りだわな。よし。レイナ、お前今日からBランク冒険者になれ」
「え、いいんですか?」
こんなあっさり認めちゃうの? あらまあ。
「お前の実力はラッツ達をたやすく退けた事、ウルフ100匹の討伐が証明しているからな。ああ、ただそうだな、もしまだ実力を隠している様ならとっととランクを上げろよ。そうじゃないとまたラッツみたいな連中に絡まれかねないからな」
「はあ、なるほど?」
ランクを一気に上げたら今度はイカサマだ! って絡まれそうだけど。
「それじゃ、気が向いたら高ランクのクエストに挑戦してくれ」
「分かりました。ヘレナさん、Aランクのクエストってあります?」
「ちょっと! レイナさんも真に受けないでくださいよ!」
「はっはっは! いいじゃないか。実力者、おおいに大歓迎だ」
「どもども」
ここで私にはわかったことがある。
私にこの世界で陰の実力者ムーブは無理だという事だ。
どうあがいても実力が露呈してしまう。
色々と脇が甘いのかもしれないね。
「さて、それじゃあ話は終わりだ」
「はい、ありがとうございました」
私はBランクにしてくれたギルマスにお礼を言うと部屋を後にした。
さて、次は何をしようっかなあ。
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