レイナとアイシェと水の都
翌朝、私達は朝ごはんを宿で頂いてから旅立った。
「短い間だったけど、楽しい街だったね?」
「そうですね、特に学者さん達が……ふふっ」
アイシェが思い出し笑いするのも分かる。
街中には学者らしき人達が研究費の為か、大道芸のように様々なことをやっていた。ある学者は口から火を噴き、ある学者は静電気を目で見えるようにして楽しませていたり。
内容は様々だけれど、兎に角それを必死にやる学者さんとそれを楽しそうに見る住民達のバランスが面白かった。
前のめりに目を輝かせて見る少年に、見飽きたようにしながらもついつい見てしまう大人達。
まあ兎に角、面白おかしい街だった。
「エルフの同胞を探す旅が終わったらまた来てみてもいいかもね」
「そうですね、その時は皆で来ましょう」
皆でって言うのはサロスとかも含めてってことかな?
そういえばアイシェには妹ちゃんもいたよね、今度はその子も連れて来てあげられたらいいかも。
「旅の楽しみがどんどん増えちゃうなあ」
「いいじゃないですか、増える分には」
「そうだね」
本当に、その通りだ。その通りのハズだ。
「さて、それじゃあ気を取り直してエルフの里に向かうよ!」
「はい!」
それから私達は北にあるエルフの里に向かって旅をする際中、とある噂を聞いた。
勇者達がついに四天王を撃破したという話だった。
なんでも一度は敗北、撤退したものの、次の戦いでは見事な勝利を収めたそうな。
特にサロスの成長が素晴らしかったようだ。相変わらず成長の速い子だ。
「アイシェも負けてられないねえ」
「私はレイナさんに付いて居ますから、あまり剣を抜く必要がないのは少し残念です」
「まあ使わなくて済むなら越したことは無いよ。平和な証だね」
「まあレイナさんと居るから、ですけどね」
なんでそこで私を強調するかなあ。私って防災グッズか何か?
「今度、久しぶりに訓練する?」
「いいんですか?」
「一対一でみっちり教えてあげようじゃない」
「ありがたいです!」
「マジかあ」
冗談半分だったのにめっちゃ前のめりに喜ばれてしまった。
そこは「お手柔らかに」とか言うかと思ったのに、これはもう訓練ホリックだね。
「それじゃあ次の街に着いたら訓練して上げるよ」
「ありがとうございます!」
「うんうん」
いい返事だね、やる気満々で私の方が疲れそうなくらいだね。
「お、もうすぐ街に着きそうだよ」
「アレが水の都キナティスモースですね」
今度私達が辿り着いたのは水の都、美しの都と名高いらしいキナティスモースだ。
名前がめっちゃ覚えにくい。
「ここで旅の疲れを取る為に数日泊まって、その間に必要なら訓練してあげるね」
「はい、お願いします!」
「うん……」
休憩する気あるかな、この子。妹分ながらに生真面目な子なのでちょっと心配だ。
「一応言っておくけど、ここに滞在するのは」
「旅の疲れを癒す休憩ですよね」
「う、うん、わかってるならいいんだけどね?」
うーん、本当に大丈夫かな。
「それじゃあまずは宿を探そうか。いい宿取りたいね」
「そうですね、宿の質に依って休憩の質も変わって来ると思います」
「うんうん」
そういうわけで私達は宿を探すことにした。
といっても流石に観光地というか、宿の数も多く、何処を選べばいいものか悩んだ私達は街の中心にある綺麗な湖がよく見えそうな位置にあるちょっと小高い丘の宿を借りることにした。
理由はズバリ、眺めがよさそうだから、だ。
「こんにちわー」
「はい、いらっしゃい」
「数日泊まりたいんですけど部屋はありますか?」
「えぇ、ありますよ」
「一拍いくらです?」
「100リーネですね」
「おぉ」
確かアルケの街の宿は一泊5リーネだった。そう考えると流石に観光地、お高い値段設定をしていらっしゃる。
「それじゃあ5日程お願いします」
「はい、それじゃあ500リーネですね」
これで私が最初の頃門番に出した500リーネと同じ値段。うーんなかなかいいお値段?
でもスライム500匹分と考えると、安いよね?
「レイナさん、良かったんですか? 結構高いお宿みたいですけれど」
「そう? 良心的だと思うけどなあ」
部屋から見る眺めはまさに絶景だった。
湖の青と空の青が一体になって素晴らしく美しい絵になっている。
「うーん、これで500リーネなら安いよ」
「レイナさんの金銭感覚ってどうなってるんですか……」
え? 何かおかしかったかな……。
「そんなことよりさ、観光しない?」
「いえ、修行したいです」
「……アイシェここには」
「休憩できましたがまだ疲れてませんので」
「うぅ……妹分が真面目過ぎるよぅ」
仕方ない、ここまできたら付き合ってあげますか。
私は覚悟を決めて、アイシェと訓練することにしたのだった。
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