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レイナと本とレイナール

「ここが魔導都市レイナールかあ」


 魔導都市なんて言うからどんな場所かと思っていたけれど意外と普通の街並みだ。

 変わっているといえば如何にも魔法使いですって見た目とか学者ですって見た目の人ばかりが目に付くことくらいかな。


「さて、ここでどうやってエルフの国の情報を集めようか」

「え、クークルで見れるのに、ですか?」


 アイシェの意見はもっともだけど、やっぱり自分でも調べておきたい。

 クークルを信じないわけじゃないけど、絶対あってるという確証もないからね。


「一応ね、一応」

「一応、ですか。それなら図書館などはどうでしょう」

「え、あるの?」


 この世界に図書館なんて立派な物があるとは思わなかった。普通こういう世界観だと本って貴重品で庶民は読み書きできないから要らない物だと思ってたけど。


「この都市には学術者が多いですからね。ありますよ」

「なるほど」


 読み書きできる人が居ればそれだけ需要もあるんだね。


「という訳で付きましたよ図書館っと」


 道行く人に図書館の場所を聞きながらなんとか到着した図書館。

 なんとか、というのはこの街、意外と迷路のような造りになって居る所為で散々道に迷ったからである。


「それじゃあまずは受付にでも行こうか」

「そうですね、利用する上でのルール等もあるかも知れませんし」


 こういう所をキチッと考えてるアイシェは本当に真面目な子だ。

 私は単純に受付さんがエルフに関する本を知ってないかなと思っただけだったりする。


「あのー、すみません」

「はい? なんでしょう」


 受付らしき場所にいたメガネのお兄さんに声を掛けるとこちらを向いてキリっとした顔をした。


「ここの本って自由に閲覧可能なんでしょうか?」

「いえ、一定の条件がございます」

「というと?」

「まず、学士号を持っている事、それかAランク以上の冒険者であることが条件となります」

「Aランク以上の冒険者ならいいんだ?」

「はい、Aランクともなれば情報の扱いも丁寧なものでしょう。信頼を置ける相手にのみ、この図書館の本は開示されるのです」

「な、なるほど」


 でもそれなら、とりあえず私達は閲覧可能ということになる。


「それで、ご用件はそれだけで?」

「あ、私これでもSランク冒険者なんだけど、ちょっと探し物をしてて」

「Sランク冒険者が探し物ですか」


 受付のお兄さんは興味津々という感じに私に注意を向ける。


「えっと、エルフに関する記述がある本って無いですか? できれば何処に住んでるか知りたいんですけど」

「うん? 見る限り貴女自身がエルフのようですが」

「えーっと、わけあって帰り方が分からなくなっちゃって困ってるの」

「そうですか……それでしたらこちらにある本が役に立つでしょう」


 そういうと受付のお兄さんは受付から出て来きて「どうぞこちらに」と言って私達を案内してくれる。

 身分確認してないけど、口頭だけでよかったのかな。


「こちらでございます」

「これがエルフの国について書かれた本?」

「はい」

「では、ちょっと失礼して」


 ページをめくってみる、エルフの生態や特徴について書かれた話がつらつらと続き、途中でエルフの里の話に変わる。

 エルフの里はどうやら元居た大陸の北部にあるようだ。

 しかし大陸の北部と言うと……。


「魔族領が近いよね、これだと」

「おや、この本をお読みになれるとは、流石エルフですね」

「へ?」


 なんで今褒められたの私。


「この本は古代のエルフ語で書かれた物とされており、今でも解読しようとしている学者達が大勢いる本なのですが、流石はエルフ、いえ、これ程昔の言語を知っているのならもしやハイエルフですか?」

「えっと、まあね。でも周りには秘密でお願いしますね」

「はい、情報管理は私の仕事の一つですから。漏洩は絶対にしません」


 よかった。生真面目そうな人だから信用できそうだし。ここの学者さん達には悪いけど、ハイエルフだとバレてあれやこれや聞かれたりしても何もわからないので困るしかない。

 そうなると色々面倒なので私はこの情報だけ持ち帰ってさっさと北に向かってみることにした。


「さて、アイシェ、北に行くよ」

「は、はい。というか凄いですねレイナさん。あんな難しそうな本読めるなんて流石です」

「いや……うん」


 異世界転生特典で異世界言語の理解が出来るんだよとは言えないね。


「それにしても北ですか。レイナさんも言ってましたけど魔族領が近いですよね」

「うん、ちゃんと里が残ってると良いんだけどなぁ……」


 これで魔族に滅ぼされていたり魔族から逃げて移り住んでたりしたらどうしていいかわからなくなる。

 常々思っている、同胞は必ず見つけたいと。


「さて、用事は終わったけどせっかく来たんだしちょっと観光していこっか?」

「そうですね、レイナールの料理は何処とも違って変わった味わいがあると聞いたことがあります」

「おー、それは楽しみー!」


 そんなわけで私達はレイナールの街を練り歩き、買い食いをし、夜前には宿を取って宿場の夕食を楽しんだ。

 旅の醍醐味はやっぱり料理かな。各地で変わった料理と出会えることが一つの楽しみだ。


「この香草焼き? おいしいね」

「そうですね、肉汁がぶわっと広がると同時に香草の香りもまた口の中に広がってとても美味しいです」


 またこれが一人飯ではなく仲間と一緒って言うのが良いね。妹分と一緒の食事。うん、最高!


「はあ、幸せ~」

「はい、こんな幸せが続くと良いですね」

「そうだねえ」


 その為には世界を支配しようとしているのか破滅させようとしているのか知らないけど、魔王って言う存在を勇者にやっつけて貰わないとね。

 どうせ北のエルフの里に行くのだ。もし必要なら私の力も少しくらいなら貸してもいいだろう。


「もしかしたら北でサロス達と会えるかもね」

「そうですね、サロス君達も北の魔王城を目指しているハズですから」


 そうなればサロスは喜ぶだろうなぁ、アイシェに会えて。

 私も久しぶりに弟子に会えるのは嬉しいし。


「さて、目指すは北のエルフの里だよ!」

「はい!」


 私達はそう言って気合を入れると同時に、ベッドに飛び込んだ。


「まあ、明日からだけどね」

「はい、そうですね」


 二人で笑い合いながら布団にもぐる。

 本当に、こんな幸せがずっと続けばいいのにね……。

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