レイナと料理と作戦会議
「一回戦突破、おめでとうございます!」
「いやあ……うん」
一回戦の勝利を祝う、所謂祝勝会をしている私とアイシェ。
でも、相手が相手だったこともあり、あまり勝った気がしていない私もいた。
「なんだか嬉しくなさそうですね」
「まあ、相手が半人前を自称してたからね……」
二人揃って一人前、そんなことを言っていたとアイシェに話すと、アイシェは笑った。
「運も実力のうちと言いますし、レイナさんの勝ちで間違いないですよ」
「そお?」
それならいいんだけどね……まあ、いっか。
「そんなことより、あの時言っていた言葉が気になります」
「というと?」
あの時って、どの時だろう。
「早い安い美味いって奴です」
「あぁ」
あれって観客席にもしっかり聞こえてたんだね。
「それで、気になるって、何が?」
「えっと、語呂はいいと思うのですが」
「うん」
まあ、有名なキャッチコピーだしねえ。
「早いと美味いはまだしも、本戦に安いは関係ないかと」
「……あ」
確かにそうだ。屋台の時ならまだしも、本戦で安いは関係ない。
「今気づいたって感じですね」
「う、うん」
そうかあ、そうだよねぇ。
「次は早くて美味しくて、満足感ある料理を考えてみるよ」
「そうですね、採点方式がわかった今、それがいいと思います」
いやあ、ルールもわからずに参加するって怖いんだね。
でも次は大丈夫、ルールに則った、より点数が取れそうな料理を考えるよ。
「というわけで、祝勝会兼、作戦会議もしてはどうかと思います」
「それはいいねぇ」
美味しいものを食べながら考えれば、これいいかも、と思える作戦も思いつくかもしれない。
「まず、この大会の審査員ですが」
「お?」
いきなり審査員の話? なんで?
「どうやら各国から集まった美食家のようでして、食の知識はそれなりに豊富なようです」
「それなりに」
「はい、レイナさん以下かと」
「お、おぉ」
私を持ち上げてくれるのはいいけど、以下とか言われちゃうとちょっとビックリする。
「なのでそこそこです。そこで、ですが」
「うん?」
「目新しいモノを狙ってみてはどうでしょう」
「ほう」
美味しいモノ、早くできるモノでもなく、目新しいモノ。かあ。
「なんでかな?」
「はい。美味しいのはレイナさんの料理ならまず、間違いないと思います」
「お、おお」
「早くできるのも、魔法やスキルがあるレイナさんなら、問題ないかと」
「うん、まあ、そうだね」
確かに、スピードは普通に作る速度の比ではない。
「となると後は満足感という、面倒な課題なわけですが」
「あー」
一口に満足感と言っても、ちょっと漠然としている。
満腹になれば満足かもしれないし、幸せなら満足かもしれない。
ちょっと色々ありすぎて困る。
「満足感は、新しいものを食べたという感覚でも得られるのではないかと」
「おぉ」
なるほど、そうかもしれないね?
「というわけで、レイナさん得意の目新しい料理がいいのではないかと思います」
「得意ってわけでもないけどね……」
たまたま、この世界になかっただけだ。うん。
「そしたらまあ、やってみるよ」
「はい、期待しています」
「うん」
さて。それじゃあ何を作ろうかな……。
そう思いながら食事をとり。
私は思考を巡らせるのであった。
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