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レイナと本選と一回戦

「さあ始まりました! もう第何回かも数えられないほど遥か昔より続いたこの料理大会! 今年は期待の新星も多い中、常連もまた、数多く参加しているようですね!」


 なんか、うん、色々ツッコみどころ満載な司会者の大きく変声された声を聴きながら、私は待合室で待機していた。

 待合室はなんか病室みたいだ。真っ白で、穢れがない。

 私がそんな部屋を眺めながら、懐かしささえ感じていると、近くに座っていた青年がふと、笑いだす。


「ふっふっふっ。期待の新星、ですか。確かに、言いえて妙ですね」

「しかり、ここにいる魔女の名をすれば」

「おぉ?」


 ここにいる魔女。それって。


「初めまして、流星の魔女殿。わたくし、李陽と申す」

「我は李仁と申す」

「「我らは双子、合わせて創生の料理人!!」」

「りよう、りにん」


 なにこの、凄くネタキャラ感満載の二人。


 二人合わせて『料理人』的な、うん、え、つまらな。


「何か用ですか?」

「いえ、一回戦の相手がかの伝説の魔女殿と聞いて、胸が高鳴るというもの」

「一回戦」


 そっか、このお笑い系な人もこの大会の出場者なんだね。


「あれ、でも……あ、いいや」

「なんだ、流星の魔女殿。何か言いたいことがあるならば――」


 とそこで、待合室の扉にノックするものが現れる。


「失礼します。一回戦出場の方、こちらへ」

「あ、はい」


 というわけで、私は呼びに来てくれた関係者の人に付いて行く。

 そしてその後ろを……李陽さんがついてきて、その後ろには……うん。


「あの、お仲間、というか、ご兄弟、捕まってますよ」

「なにぃ?!」


 私の言葉を聞いて振り返る李陽さん。後ろにはこの大会の運営陣に捕まっている李仁さん。


「弟に何をする!」

「そ、そうだ、我は李陽にいの弟、李仁なるぞ!」

「あぁ、うん、やっぱり」

「何か知っているのか魔女殿」

「うん」


 いや、だって、ねえ。


「あの、この大会は『1対1』の料理勝負をする大会なので、どちらかしか出られませんよ?」

「「何?!」」


 どうやらこの二人、今回が初参加の、所謂新星のようだ。

 それで二人で屋台をやった流れで、ここにも二人で来ちゃったんだろう。

 私もアイシェが知らなかったら、二人で来てたと思う。


「そ、それでは我は一人で戦うしかないのか」

「そんな、馬鹿な、我ら兄弟は二人で一人……」

「あぁ、そうとも……一人では……」

「「半人前……」」

「えぇ……」


 ホントにネタみたいな人たちだなぁ……。かといってルールはルールだし。


「どちらか一人しか会場には出られません!」

「くそう! 兄者! 兄者だけでも先に!」

「弟よ!! くっ……先に行って待っているぞ!!」

「いやだから、先も後もなく一人なんだって」


 このネタキャラ相手にするの? 私。

 なんか初戦から不安だなぁ……。


「まあでも、私は私のできることをするだけだよね」


 というわけで、やってきました会場に。


 大会はコロッセオのような建物を貸し切って行われているので、実際に料理するのは屋外だ。


「さあ、やってまいりました!! 今大会の優勝候補筆頭! 予選では数々の目新しくも質を担保した料理を出し! 圧倒的な人気と売り上げで勝ち進んできた流星の魔ぞ……レイナ選手!!」

「「「おおおおお!!!!!!」」」

「今、あの司会者嫌な場所で噛んだね」


 あれじゃあ私がマゾみたいだ。勘弁してほしい。


「対するは! 遥か中央国からやってきたこちらも期待の新星! 李陽殿だ!!」

「「おぉおおおおおお!!」」

「くっ……本来なら、ここに李仁もいたはず……!」

「あはははは」


 まあ、そもそも1対1ってルールだし。ねえ。


「さあ。今回はどんな料理が飛び出すのか?! さっそく行ってみよう!! 試合、開始!!」

「え、ルール説明とかないの」


 ルールが説明されないまま試合開始。え、どうしよう。

 李陽もまた、若干のためらいをみせながらも、作業を始めている。


「ルールは簡単、時間無制限、食材は問わず、あるもの無いもの使ってよし! 食べられるかどうか、それだけが肝要です!」

「まじかあ」


 食べられればなんでもいいって、大丈夫かなぁ……。まあ、簡単なルールなのは助かるけどさ。


「じゃあ私もちゃっちゃと作りますか」


 ということで、私は孤児院から買い上げて、アイシェに捌いてもらった牛肉を取り出す。

 さて、いっくよー。


「って、包丁とか何にもないじゃん?」


 そう言ってみて周りを見ると、案内されたところにあるテーブルと、横に小さなクーラーボックス的なものがあった。

 流石にここに包丁は無いよね、と思いつつも開けてみる。

 ……うん、無い。

 そしてちょこっとだけ食材が入っている。これを使ってもいいし、使わなくてもいいということかな?

 あるモノもないモノ使っていいって話だったし、ね。


 というわけで、私は包丁の代わりに……ソードビットを取り出した。


「いけ、ソードビット!」


 私は刻みたい食材を空に放つと、それをソードビットで切り刻む。


「おおっとレイナ選手! これは派手なパフォーマンスだ!! 料理の点数には関係ありませんが!!」

「だよねぇ」


 これで関係あったらびっくりだよ。


「さて、お次はこっちでだしを作って」


 私はできるだけ手際よく、料理を作っていく。


 何が加点対象になるのかわからないけど、料理は手際も重要だ。

 そんなこんなで、数十分……かかるところを魔法とスキルで短縮を重ねて5分。

 私の料理は完成した。


「はい! 牛丼いっちょう!」

「「「おぉおおお!!」」」


 私の料理のできの速さに、周りが驚く。そして、料理を出された審査員もまた、驚いて目を見開く。


「これは、ギュードンというのですか」

「延ばさなくていいですけど、まあ、はい」


 これもまた、この世界では知られていない料理のようだ。


「早い安い美味いで有名なんですけどね」

「ハヤイヤスイウマイ?」

「なんで片言」


 まあいいけど。とりあえず食べてもらおう。


「それでは早速……」


 審査員、およそ5名が箸を取る。

 そして気づいた。あ、この国箸使うんだね。


「こ、これはうまい! 最初はこんな短時間で出されたものなどろくな味ではないと言ってやろうと思っていたが……いや、これは美味く、また巧く作られていますな」

「確かに! こんなおいしいお肉は初めてだわ!」

「うむ! このタレか? こいつも米に合う!!」

「びゃーうまい!」

「玉ねぎの甘みと辛みが絶妙にマッチしていますぞ!」

「おーっと! これは高評価だ!!! 流石は予選ダントツ一位のレイナ選手だ!!」

「いやあ、どうもどうも」


 皆さん美味しく食べていただけたようで何よりだ。

 そして私の料理の採点が出る。


「採点はスピード、味、満足感の三つで採点されます! 各項目は5点満点、一人合計15点までとなります! さあ、結果は?!」

「そういう採点項目なんだ」


 じゃあ手際も大切だね、スピードと味に関わるし。満足感はボリュームと味のバランスなのかな?


「おぉっと! ここでまさかの、いきなりのオール15点!! 暫定勝利だ!!!」

「えぇ」


 いや、いくらなんでもひどくない? 今まだ李陽さんが料理してるのに、満点だしちゃうって。

 こういうのって普通、後に点数的に勝てる要素を作っておくように満点は出さないものでは……。

 でもまあ、お互い満点なら……その時はどうするんだろうね?


「さあ、これは後がない、李陽選手! どう出る!!」

「つっ!!」


 そしてこの後、李陽さんは頑張りに頑張って料理を出した。

 んだけど……。


「おぉっと、ほぼ3点と4点だ!! これは、これはぁああ! レイナ選手の、勝利―!!」

「「「おぉおおおおおおお!!!」」」

「あはははは……」


 まあ、そりゃあそうなるよね。だって。


「くそっ! 李仁がいれば! こんなことにはならなかったんだ!!」

「う、うん」


 だろうね、だって……。


「流星の魔女、これで勝ったと思うなよ! 我ら双子、二人そろって一人の料理人ぞ!」

「う、うん」


 彼が作った料理、それは……。


「この『ラーメン』だって、二人でなら、スピーディにかつ美味しくできたのだ!!」

「うん……そうね」


 彼が作ったのは、ラーメンだった。

 でも、彼一人の手際はお世辞にもいいとは言えず、5人分できたころにはもうラーメンは伸びきっていたのです。

 なので、審査員からは美味しくないと大ブーイング。

結果。


「次は勝つ! いいな!!」

「は、はい」


 こうなってしまった。のである。


「まあ、次は、お互い全力でやりましょう」

「くっ……これでまだ全力じゃないというのか!!」

「そ、そういう意味ではないけど」


 今は何言っても駄目だね。


 こうして、私の一回戦目は終わり、次の二回戦へと駒を進めたのであった。



ご読了ありがとうございます!


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次回更新は不定期ですが、書け次第更新とさせていただきます。

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