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レイナと住吉と既視感

「そうですか……ありがとうございます」


 住吉を人の居る街に連行してから数日。

 例のゴーストタウンの情報は彼からは何も得られなかった。


「私の方で魔法で聞きだした方がいいかな?」

「レイナさん、また物騒な手を考えてますね」

「そう?」


 そうかな? 物騒だったかな??


「でもこのままだとあの街の情報一切なしだよ?」

「そうですね。それは、困りますね」

「でしょう?」


 やっぱりここは私が直接出向くしかないみたいだね。

 とは言え憲兵さんに身柄を預けてしまった以上、どうやって面会すればいいのかな。普通に会えるものかなあ。

 忍び込んで勝手に聞きだしたりしたら……駄目だよね?


「何かまた物騒な事を考えていませんか?」

「い、いや? そんなことないよ」


 危ない危ない、アイシェにはバレているかもしれないね。


「とりあえず、会いに行ってみようか」

「そうですね、このままじゃあらちが明きません」


 そんなわけで私達は宿を出て、住吉の元へ向かった。


「それにしても、本当にあの街の住人ってどうなったんだろうね」

「わかりません……生きているといいのですが」

「物騒だなあ」


 アイシェの発言も相当物騒だと思う。

 でも実際のところどうなのだろう。

 大麻王兼マリファナこと住吉は大麻を製造していた。

 でもそれとゴーストタウン化したあの場所の関係性が見えてこない。

 ……うん?

 なんだろう、妙な既視感が……デジャヴュってやつかな。


「っと、考えている間に着いちゃったね」

「何を?」

「うん、ちょっと……妙な既視感についてね」

「はあ」


 まあ言われても分からないよね。既視感って何だって話だよね。


「憲兵さん、ちょっといいでしょうか」

「うん? あぁ、あの妙な奴を連れて来た嬢ちゃん達か」

「あはは。そうです。その妙な奴に用があって来たんですが……面会できます?」

「構わないが……今朝報告があったかもしれないが、アイツは何も話さないぞ?」

「はい、それを聞いて、私の魔法で聞きだせないかと思いまして」

「魔法で……? そんなことができるのなら、まさしく魔法のようだな」


 そう言うと憲兵さんはちょっと期待するように笑った。


「ですよね。なので、ちょっと会えませんか?」

「それに関しては問題ないぞ。ギルドでも指の数程しか居ない上級冒険者の願いだからな」

「ありがとうございます」


 こうして私とアイシェは住吉に面会できることになった。


「さて、おはよう住吉」

「…………」


 私の挨拶もガン無視し、机に突っ伏した様子の住吉。

 部屋はこじんまりとしており、窓もない密閉空間だ。

 こんな場所で尋問を受け続けて、この姿勢を貫けるなんてなかなかの男だと思う。


「ふうむ。まいっか。チャーム」

「!」


 よし、掛かった。


「それじゃあ住吉、あのゴーストタウンの住人について聞きたいんだけど」

「…………」

「あれ? おーい、住吉ー」

「…………」

「あれ?」


 魔法は確かに掛かってる、でも返事がない。


「住吉、住民の居場所は?」

「…………」

「どうしたんですか、レイナさん」

「うーん、魔法が掛かった感触はあるんだけど……なんか聞きだせないみたい……?」


 どういうことだろうか…………あれ?


「っつう……」

「大丈夫ですかレイナさん」

「う、うん……急に頭痛が……あとデジャヴュ」

「でじゃ……? よくわかりませんが、今日は帰りますか?」

「うーん、そうしようかな……」


 話も聞きだせそうにないし、不調だ、ここは一旦出直そう。

 私達は部屋を出て憲兵さんにお礼を言うと、宿に戻った。


「あぁ、レイナさん、戻りましたか」

「ん。朝の憲兵さん?」

「はい?」


 宿に戻ると朝に私に報告を挙げてくれた憲兵さんが待っていた。


「朝、報告をくれた憲兵さんですよね?」

「誰かからもう報告を聞いたのですか?」

「え?」

「え?」


 どういうことだろう。朝私に報告をしてくれたのはこの人で間違い無いはず。

 まさか双子とか?


「マリファナの件で報告に参ったのですが」

「あ、はあ」


 また? うん? また?

 なんだろう、さっきからこの既視感は。

 でも、とりあえずは。


「報告、はい、聞きます」

「はい、実はあのマリファナという男ですが、アレから一切口を開かないのです」

「そうなんですね……」


 こうしてこの後、憲兵さんから聴取の様子を聞いた私は、暫くして謎の疲労感と頭痛に堪えかねて寝ることにしたのだった。

 …………って!


「いや! なんかおかしいって!」

「確かにおかしいですね」


 私が謎の既視感について言及すると、同じく既視感を感じていたのか、アイシェが同意してくれる。


「だよね?」

「はい、今日のレイナさんは何時にも増しておかしいです」

「え、そこ?」


 っていうか何時にも増してってなんだろう、それだと私がいつもオカシイみたいだ。


「そうじゃなくて、既視感。アイシェは感じない?」

「感じませんが、レイナさんは今日はずっとそのことを考えていたんですか?」

「う、うん。まあね」


 まあ、ずっとと言う程でもないけど、チラチラとそのことが頭を過ってはいた。


「それで、既視感があると何なんですか?」

「え、何って……そりゃあ……」


 それは、まあ…………うん。


「ベタに行くと、同じ日を繰り返して居るとか?」

「それのどこがベタ何ですか……?」


 いや、こういう展開だとお約束っていうか……ねえ?


「うーん、気になる!」

「はあ。では仮に同じ日を繰り返して居るとして、どうするんですか?」

「え、どうするって。うん?」


 どうするって……どうしよう。

 何かこう、突破口というか……手がかりは……。


「住吉?」

「マリファナがどうかしたんですか」

「いや、魔法が掛かったのに反応無いし……彼に魔法を掛けてからなんか頭痛もするし」


 怪しいよね??


「じゃあ明日、また住吉に会ってみましょう」

「うーん、そうだね?」


 まあ今日の所はなんか疲れてるし、頭痛もするから寝ておこう。

 こうして私は、謎の既視感を抱えたまま、眠りに落ちた。



ご読了ありがとうございます!


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次回更新は不定期ですが、書け次第更新とさせていただきます。

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