レイナと山賊と追跡
翌日の朝。
「うん! 凄くぐっすり寝れたね!」
私は夢なんて見ることなく、思いきりぐっすり眠った後だった。
「神託はそこまで都合のいい便利機能ではなかったてことかな……」
まあ仕方がない。こればっかりは神様の都合次第なのだろう。
とはいえ、これでは大麻王とやらを探す方法が限られてしまう。
うーん、どうしよう。と、私が悩んでいると、扉をノックする音がした。
「レイナさん、入っていいですか」
「どうぞー」
私がOKを出すと、アイシェが入って来る。
「レイナさん、神託はありましたか?」
「それが無かったんだよねえ。どうしよっか?」
私が問いを投げかけると、アイシェは直ぐに答えを出した。
「この間捕まえた山賊から、まだ情報を引き出せるかもしれません。今から追うのはどうでしょうか」
「やっぱりそうなっちゃうかあ」
今の所情報を得られそうな相手がそのくらいしかいない。
かといって、彼らのような下っ端みたいなのがボスの位置を知っているかも謎だけど。
「仕方ない、隣街までいこっか」
「はい」
そんなわけで私達は朝食を摂った後、直ぐに隣街へ移動を開始した。
「この辺りは山道が多いし、地面を移動すると時間が掛るから……」
「なんですか?」
移動する前。何で移動するかを考えて、私はシロちゃんを呼ぶことにした。
「はい、召喚っと」
「んっ?!」
私がシロちゃんを召喚すると、アイシェが固まった。
「どしたの」
「レイナさん、この、えっと、ドラゴン」
「あぁ、私の召喚獣でシロちゃん、よろしくね」
『よろしく頼む』
「はい、よろしくお願いします……って喋った?!」
「反応面白いなあ」
『うむ、普通はこうだと思うぞ、主』
そういう物かな。私の時はどうだったかな。
「さて、シロちゃん、隣街付近まで連れてってくれる?」
『隣街とはどこだ?』
「えっと、何処?」
「レイナさん……ここからだと北西になりますね」
「らしいよ?」
『心得た』
シロちゃんは分ってくれたみたいだけど、コンパスも無しに方角言われただけで位置なんてわかる?
私はもちろんわからないよ!
「それじゃアイシェ、乗ろうか」
「は、はい」
未だ驚きを隠せない様子のアイシェを乗せて、シロちゃんは北西に向かう。
『それで、今回はどういう意図で我を呼んだのか』
「山道移動するの大変だから飛んだ方が速いかなあって」
『そうか、確かに飛んだ方が速いな』
「それだけでドラゴンを使役する人なんてレイナさんだけだと思います……」
「そっかなあ」
っていうかそもそもこの世界にドラゴンを召喚できる存在が居るかも不思議だけどね。
「さてと、マップでこの間の山賊達でも追跡しておこうかな」
「追跡ですか?」
「そうそう」
忘れていたマップの機能の一つ、追跡。
一度会った人物や魔物を文字通り追跡できる機能。
それを使って今、彼らがどういう動きをしているか見てみる。
「動いてるなあ。まだ街に着いてないのかな」
「かも知れません。この山道ですからね、移動が遅くても仕方が無いです」
「そっかあ」
これなら街に入る前に追いつけそうだ。
「レイナさん、まさかこの……シロさんに乗ったまま山賊の前に立ったりしませんよね」
「え、なんで?」
「御者さん、絶対腰ぬかしますよ」
「あー」
そう言えば御者さんにお願いして連れてってもらったんだったね。
流石にドラゴン飛んで来たらビックリするかな。
「じゃあ近場で降りて、別の移動手段使おうか」
「そうして欲しいです」
『ふむ、残念だ、最後まで主の役に立ちたかったのだが』
「大丈夫、シロちゃんはいつだって助けになってくれてるよ」
そんな話をしながら飛ぶこと数分。もう追いついた。
「山道がどれだけ過酷か分かるね」
「そうですね、飛べるのは便利です」
『ではな、また呼んでくれ主』
「うん、またね!」
私はシロちゃんを送還すると、今度はユニちゃんを呼び出した。
「ユニちゃん、山賊達を追跡してるから、追ってくれる?」
私が問いかけると、シロちゃんみたいに話たりはしないけど、肯定するかのように嘶いたユニちゃん。
「それじゃ行こうか」
「はい、レイナさん」
こうしてようやく、私達は山賊に追いついた。
これで情報が得られると良いんだけど……。
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