レイナと馬車と山賊
「いやー馬車は楽でいいねえ」
「そうですね。この山道を徒歩でというのもいい訓練になりそうですけど」
私とアイシェは今、疫病の流行った街での一件を終え、目的地を目指して旅を続けている。
「訓練って、アイシェは本当に好きだねそういうの」
「こうしている間にもサロスも強くなっているかもしれませんからね」
「張り合うなあ」
いつの間にかしっかりライバル意識を持っているようだ。
まあサロスの方はどうかというと……ねえ。
「お嬢さんたちは何処まで行くんだい」
「へ?」
乗合の馬車だったので、向かいに座っていた男性が声を掛けて来た。
何処までって言われても……何処だっけ?
「アイシェ、何処まで行くんだっけ」
「東の帝国にある魔導都市レイナールですよ」
「あぁそう、それそれ」
そう言えばそんな話をしてたよね、うん。
「レイナールか、それじゃあ砂漠を抜けるのかい?」
「はい」
「え」
砂漠? マジで言ってる?
「私暑いの嫌いなんだけど」
「レイナさん、エルフの国、探したいんですよね?」
「まあ、そうだけど」
「なら我慢しましょう」
「はい」
うぅ……暑い場所に行くのは嫌だなぁ……でもエルフの国は見つけておきたいし……。
「それに、冷気マントを被ってればそんなに暑くないそうですよ」
「冷気マント?」
何それ、ドラえ〇んが出してくれる道具か何かかな?
「氷属性の魔法が布に掛かっていて、涼しいらしいです」
「へぇ、便利な魔法だねえ」
「レイナさん程ではないと思いますよ?」
「そ、そうかなあ」
私も私で相当便利な魔法使いだと思われている様だ。
「レイナさん、涼しくする魔法とか使えないんですか?」
「そっか、そう言うのもありなんだよね」
それなら氷魔法で砂漠を氷漬けにすればいい。私って天才では。
思い付いたのはアイシェだけど。
「マント無くても行けるかも」
「そうですか、マントは高級品なので無くてもいいのならそれに越したことはないですね」
そう私達が話していると、向かいの男性が追加で話しかけて来る。
「そうかそうか、マント無しで行くなら気を付けなされ。あそこは暑さだけでなく魔物も強いからね。火を噴く魔物に注意するといい」
「なるほど?」
火を噴く魔物かあ、どんななんだろうね? ドラゴン?
「十分気を付けます、ご心配ありがとうございます」
「いやなに、女性二人旅なんて珍しいからね、つい応援したくなってしまったのさ」
「あはは、なるほど」
確かに物騒な世の中だもんねえ。盗賊とか……。
「山賊とかいますもんねえ」
「ぬ?」
私が言うのと同時に、山賊達に囲まれた馬車が止まった。
「それで、何が狙いなんですか?」
「何を言って」
「貴方がこの山賊のリーダーなのは、プロパティみて最初から知ってますよ」
「レイナさん?!」
「……なるほど、流石噂の聖女、魔女なだけある」
乗合馬車に乗ってターゲットの位置を知らせて襲う。
そういう山賊なんだろうね、この人達は。
「というか私が流星の魔女って知ってて襲ってくるって正気?」
「ふん、星なんぞこの山道で使えるもんなら使ってみるがいいさ」
「なるほどねえ」
つまり暗に舐められているのだ。
流星さえ使えなければ勝ち目があると。
「さてアイシェ、行けるかな?」
「抜かずに、殺さずにですね」
「そうそう」
「行けます」
「よしっ」
という訳でまたしても賊退治をすることになってしまった私達。
結果は見えてるけど、その後どうしようかな……?
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