レイナと新しい出会いと旅立ち
エルフの奴隷商の一斉摘発により、エルフの奴隷が解放されてから二年程。
未だに私はアイシェ達の指南役をしていた。
とはいえ呑み込みの早い二人だ。ここまで来るともう教えることも少ないので、たまに相手をしては壁になり、より強くなるためにどうするか考えさせて、後は二人で訓練しているのを見ているという事が増えて来た。
で、二人の訓練を眺めながら思う。
私何やってんのかなぁと。
今更ながら旅はどうしたのだろう。いや、別に城下町に降りれば楽しい事は十分あるしいいんだけど、せっかくなら世界を旅してみたかった。
とは言えもう三年くらい経つ。最初は数年教師をって話だったけど、一体いつまで教師をすればいいのであろう。
アレ以降神様も音沙汰全く無いし。
一人前になるまで付き合うつもりだったけど、もう二人とも立派に戦士してる。
私の役割はもう終わった気がするんだけど。
「レイナさん、今の試合どうでしたか?」
「え?」
私が物思いに耽っている間に決着がついたようだ。
勝ったのは見た感じアイシェっぽい、相変わらず勇者より強い天才少女だ。
最初はオーク解体が出来る子くらいのイメージしかなかったのにね。
「二人とももう一人前だなあって思ったよ」
「そんな、私なんてまだまだです」
「師匠に比べたら俺達なんて」
「謙遜しないしない。この国で二人に勝てる人なんていないんだよ? 謙遜も過ぎれば嫌味になっちゃうんだからね」
まあこの国にって言うのに私を入れてないのはズルかも知れないけどそこは良いよね。
私この国の人間じゃないどころか何処にあるかもわからなエルフの国の王族だし。
「でも、師匠がいます」
「そうです、レイナさんに勝てる人なんていません」
「私はこの国の人間じゃないよ。ハイエルフなんだからね」
二人はそれでも譲らなかったけど、ホント立派に育ったものだ。
「今の力じゃまだ魔王には勝てないかもしれません」
「そうです、魔王の復活が近い今、もっと強くならないと」
「ん?」
今なんて言った? 魔王の復活が近い? そんなものは初耳だ。
「魔王が復活? するの?」
「え。レイナさんは知らないんですか? レイナお姉ちゃんと出会った頃から有名な噂話ですよ?」
「そもそも俺は魔王の復活に備えて王様の管理下で修行する為にここに移動してきたんですよ?」
「そうだったんだっけ?」
そんな話聞いた覚えがない。
けどそうかあ、魔王が復活ねえ。
それで二人は強くなりたかったんだね。偉いなあ。
「まあ魔王でも師匠には勝てないと思いますが」
「そうですね、レイナさんに勝てる相手になんて勝てる気がしませんから。先代勇者様が倒せたのなら、レイナさんが倒せない訳が無いです」
「う、うーん」
私は出来るだけそう言うのには関わりたくなかったけどもうどっぷり関わってしまってるんだよね、勇者の育成とか最たるものだ。
「師匠が星を降らせれば一発ですよ!」
「そうです! レイナさんなら圧勝です!」
「いやいや、二人ともあんまり私を当てにし過ぎない方が良いよ?」
そもそも魔王と戦うのは勇者の役目で私がそれを横からかっさらう気なんて毛頭ない。
魔王を倒して英雄になるのはサロスでいい。
もしどうしても力が足りないなら私がちょっと手助けをするだけだ。
勇者パーティの魔法使い、その辺で終われば丁度いい。
「さて、その話は後にして休憩にするよ」
「「はい」」
私達は話を切り上げると休憩に入る。
するとそれを見計らってか騎士団長がやって来た。
「休憩中の所済まないが、玉座の間に来てもらえないだろうか。できればレイナ様もご一緒に」
「私も?」
こういう時私がメインで呼ばれることがあっても私がオマケであることは少なかった為ちょっと気になった。どうやら今回私は随伴の教師程度の役割とみた。
そう思いながら玉座の間に着くと、もう既に幾人かの重鎮と見知らぬ顔が三つ程あった。
「よくぞ来た勇者サロス。それに冒険者のアイシェとレイナ殿」
国王に呼ばれてやって来たけど、一体何の話だろう。
見知らぬ三人と関係があるのかな?
「此度集まってもらったのは他でもない、魔王バートが復活したからだ」
「ついに魔王が!!」
サロスが衝撃を受けたように答える。
まあいきなり復活しましたとか言われても困るよね。
「そこで勇者には魔王の討伐に向かって欲しい。旅の仲間、戦力はこちらで用意させてもらった」
そういうと見知らぬ三人が勇者の前に出て来る。
どうやらこの三人が仲間の様だ。
「一人目はチームの目であり耳になりと重宝する忍びの者だ」
「スキア、よろしく勇者」
一人目はくノ一だった。この世界にも忍者居たんだね。
「二人目は力自慢のウォーリアーだ」
「ズィナミだ。よろしくな勇者様!」
こちらは大柄な体育会系と言った感じの好男子だ。といっても20後半くらいだろうけど。
「そして三人目がチームのブレイン兼魔法担当になってくれる賢者だ」
「ソフィアです。よろしくお願いします……と言っても、流星の魔女様には遠く及びませんが」
ソフィアという女性はチラッとこっちを見る。やめて、その二つ名。
「それで、師匠達が呼ばれた理由はなんでしょうか?」
「うむ、強制では無いが、できれば旅に参加してやって欲しいと思ってな」
「すみません、お断りします」
私の回答があまりに即答だったのでその場の全員が驚いた。
いやいや、行くわけないでしょ。魔王だよ? 勇者の戦う相手だよ。
私はやるべきことはやって来たし、そろそろ自由な旅に戻りたい。
「理由を聞いても?」
「エルフの国に帰ろうかと」
「むぅ……そうであったか」
嘘だけど。でもエルフの国は探しておきたい、今後の為にもね。
「もしどうしても私が必要になったら呼びに来てくれたら行くよ、サロス」
「……わかりました、師匠」
何かを決心した様子で答えるサロスに心配になる、大丈夫かな。
そういえばアイシェはどうするんだろう。
「それで、アイシェ、君はどうする」
「レイナさんの旅に同行します」
「そうか……そなた程の剣士、そうはいない、惜しいものだ」
「はっ、過分な評価有難き幸せにございます。ですが元々私はレイナさんの旅のお供でしたので、レイナさんがお断りする以上、私もそうさせていただきます」
「そうか……」
どうやら勇者パーティへの勧誘が狙いで私達は呼ばれたらしい。
でもそもそも私は数年教師をするって約束しかしてないし、その約束はもう果たされたと思っている。
というのもサロスはこの世界ではもう一人前と言える勇者だからだ。
「それではエルフの女王レイナ殿、その供であるアイシェ殿に報酬をお支払いしよう」
「え」
「当たり前であろう、この数年、勇者の成長目覚ましいものがあった。それと言うのも二人のおかげ。この国を代表して礼を言う」
とまあそんなわけで。
私とアイシェは褒賞金をたんまり貰って城の外に送り出されたのであった。
「いやあ、このお金、アイシェの実家に送ろうね」
「え、いいんですか?」
「勿論。可愛い妹分の為になるからね。私はこう見えてお金には困ってないし」
まあこう見えても何もエルフの王族な上にプレイヤーなんだから当たり前かもしれないけどさ。
「なんだか申し訳ないです、レイナさんに助けてもらったお礼をしたくて始めたお供なのに貰ってばかりで……」
「そんなことないよ。今の私が居るのはアイシェのおかげだよ。アイシェから貰ってる分を私が返したいくらいなんだから」
未だにあの森で迷っていたことは覚えてる。
マップは便利だから気づいたら街に向かえたかもしれないけど、他の事でもアイシェに助けられたのは間違いない事実だ。
「そんな、レイナさんには私とお母さん、二人の命を救ってもらいました。このご恩を返すまで、旅のお供をしますよ」
「なら一緒に居てくれることが恩返しだね。一人旅は寂しいし」
これも本心だ。
乗合馬車とかを使って旅を楽しむのもありかも知れないけど、やはり見知った人との旅とは別格だと言えるだろう。
「そう言ってくれると嬉しいです」
アイシェが満面の笑みで答える。
そういえばアイシェは良かったのかな……。
「ねえアイシェ、サロスに付いて行かなくて本当によかったの?」
「はい? まあサロス君とはライバルみたいなものですから、いつか決着は付けたいですね」
「あ、そういう……」
残念、どうやらこれは片思いだったようだ。
どうもサロスは途中からアイシェを意識していた節がある。
さっき私と一緒に来ると言ってた時も見るからにショックを受けていたし。
この思いが届く日は来るのかなあ。
「さあ、それでレイナさん、エルフの国ってどこにあるんですか?」
「え? 知らないよ?」
「え?」
私がすっとぼけた事を言うもので、アイシェも変な声が出ている。
まあ普通知らないと思わないよね。
「いやあ、ハイエルフなのはそうなんだけど、エルフの国? っていうの。何処にあるのかさっぱり知らないんだよねえ」
「じゃあなんで断ったんですか?!」
なんでって、そりゃあ……。
「旅したかったから……??」
「はぁ……呆れました。まさか魔王から世界を救うより旅を選ぶなんて」
「まま、そう言わずにさ、楽しくやろうよ。何かあったら私だって魔王討伐に手を貸すくらいはするしさ」
「というかレイナさん一人で十分な気がしますけど……」
「いやいやそれは無いって……」
それじゃあ勇者の面目丸つぶれだ。そんなKYな事はしない私だよ。
「それより旅旅! 楽しまなくちゃ!」
「はあ、そうですね。私はレイナさんに付いて行きます。そう決めたんですから」
そんなこんなで私達は旅をすることに決定。
目的地はまだ決めてないけど、できればエルフの国かなぁと思っている。
そのためにまずどこに行くべきか。
「何処に行ったらエルフの情報を手に入れられるかなあ」
「エルフの国を探すんですか?」
「そそ」
なんだかんだ言って同族には会いたい、色んな意味で。
「そうですね……それなら東にある帝国の魔導都市レイナールなんかがいいのではないでしょうか」
「そんなのがあるんだ」
「エルフと言えば魔力が高いことで有名ですし、魔法といえば魔導都市レイナールですよ? レイナさん、ホントに何処から来たんですか……」
異世界から来ましたとは言えないよね。
さてこういう時は。
「それじゃあその魔導都市とやらに行こうか」
「え、あはい」
話題を逸らして先に進む私を追ってくるアイシェ。
さあさあ、楽しい旅の始まりだ。
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