レイナと国王と法
今回短めです、更新をしっかりできるよう頑張ります。
「いいね、その調子!」
「はいっ!」
「ダメダメ、言った傍から調子に乗らない、フェイントだよ」
「うぐっ」
国王に畜産業について直訴してから一週間、私は今日も今日とてサロスとアイシェの稽古をしていた。
「それじゃ、次はアイシェとやってみて」
「はい!」
「わかりました」
二人の模擬戦を見ながら思う。
私はいつまでこうしているのだろうと。
神様が言うには今のまま勇者の育成をしていればいいらしいけど……。
それがいつまでなのかはさっぱりだ。
「せいっ」
「っ! はあっ!」
「やってるなあ」
二人とも気合が入ってる。いつもいつも鍛錬ばっかりなのによく飽きないなあ。
「さてと……今日はこの辺にしようか」
「もうですか?」
「うん、ちょっとやることあるからね」
そう、私は思い出したのだ、やることを。
今まですっかり忘れていた大事なことを。
「二人は訓練続けたかったらやっててもいいよ。私は抜けるけど」
「そうですか、アイシェ、やれるか?」
「はい、やれます」
「そか、じゃ、頑張ってねー」
私は二人に手を振ると、そそくさと退散する。
向かうのは執務室だ。
「国王に会いに来たんだけど」
「レイナ様ですか……少々お待ちください」
私は部屋の前に居た衛兵さんに声を掛けて中に入れてもらえるか確認を取ってもらう。
まあ大体入れるんだけどね。
「どうぞ、お入りください」
「どうもー」
私は言われた通りに部屋に入る。
すると国王が真面目に執務をしている真っ最中だった。
「レイナ殿、何様かな」
「いや、ちょっとエルフの奴隷の件でね」
「ぬっ……」
私の言葉が予想外だったのか、たじろぐ国王。
それとも、王族の私から直にこの話をされるのは嫌だったのかな。なんて。
「この前十人くらい助け出したんだけど、この国じゃエルフの奴隷は一般的なのかな?」
「そのようなことはない。むしろ我々としても手を焼いている」
「そうなんだ、じゃあ助けたのは問題無いね?」
「あぁ……だがそうか、まだそんな輩が居たか」
「まだってことは前はもっと居たのかな」
「まあ、そうなる。だが法によって定めて、あるべき秩序を取り戻した筈であったが……」
「未だに悪い奴は居ると」
なるほどね、国としても無視している訳ではないという事でひとつは安心だ。
ま、まだまだ不安要素が多いんだけどね。
「いますぐにどうにかできる問題じゃないよねえ」
「そうなるな……」
うんまあ、これについては国王を責めても仕方ないし、直ぐにどうこうなるとは思ってなかった。
「でもまあ、私から一応言っておくね、エルフの奴隷問題、何とかしてね」
「わかっている……貴女を敵に回す怖さは誰よりも、な」
「またそういう事言うー」
だから敵になったりしないって。って、まあ自分から意図的に私の敵になるって言うなら、その限りではないってことになるんだけど。
「私の方でも色々調べてみるよ、いいよね?」
「あぁ、構わないとも。我々に貴女の権利を侵害することが出来ようか」
「そう? なら、自由に探させてもらおうかな」
マップとサーチを使えばそれなりに人探しに便利だ。
流石にマップ上じゃ名前と種族くらいしかわからないから奴隷かどうかは見て確認すればいいだろう。
「ちなみにこの国に奴隷じゃないエルフっている?」
「居ないだろうな。エルフはそもそも森から出ることがほとんどないと聞く」
「あー。そうだよね」
危ない危ない、ここで知りませんでしたなんて言ったらお前エルフの王族じゃないのか? って話になってしまう。
「そういう意味では私はレアケースだから」
「王族が1人旅だからな、珍しいのは間違いないだろう」
「1人ではないけど」
うん、知ってた。そういう認識だよね。
アイシェも居るから本当は二人旅になってるけど。
「とりあえずエルフの奴隷の件は私の方でも捜索させてもらうね」
「あぁ、わかった。こちらも全力を尽くすことを約束しよう」
こうして国王との話を終えると、私は空いた時間でエルフを探すことにした。
アイシェ達の稽古に戻ってもよかったけど……また忘れないうちに片付けておきたいもんね。
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