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レイナと商業ギルドと畜産経営

「さて、行きますか」


 王城の自分の部屋に転移魔法で戻ると、私は急いで国王の元に向かう。

 恐らく今の時間なら執務室だろう。


「あの、国王に用があって来たんだけど」

「レイナ様、いくら何でもいきなり押しかけられては困ります」

「そこを何とか。とりあえず取り次いでくれないかなあ」


 私は笑顔でお願いしてみる。

 私はこれでハイエルフだし結構な美人だ。笑顔でお願いしたらほら、多分行ける。


「は、はい、分かりました……」

「およ」


 なんか思った反応と違う……怯えた様子で了承された。

 もしかして笑顔でお願いされて怖かったんだろうか。圧的な物を感じちゃった?


「国王陛下、レイナ様がお会いになりたいとのことです!」

「む? うむ、入れよ」

「は!」

「じゃ、おじゃましまーす」


 国王からのOKもでたところで私は早々に部屋に入る。


「それで、何様かな」

「うん、ちょっとアルケの街の孤児院の事で訊きたいことがあって」

「孤児院? しかもアルケの街か」

「そう、私の妹分、アイシェの母親がそこで働いているんだけど、そこが随分酷い状況でね。とりあえず母屋を直して来たんだけど……」


 そこから私は国王に助成金がどうなっているのかについて聞いてみた。


「実際そこまで厳しい生活しなきゃいけない程助成金は少ないの?」

「いや、そんな筈はない。この国では孤児の育成にも力を入れているくらいだ。そんなはずがない」

「じゃあ誰かの監督責任?」

「そうなるかも知れないな……調べるからしばし待っては貰えないか」

「いいけど、もし解決しなかったら」

「わかっている、その時は貴女が敵になると覚悟しよう」

「そこまでは言わないけどね……」


 なんでみんなちょっと私を暴れん坊みたいに思ってるのかな。

 やっぱり何だかんだ強い力を持っていると、その影響力も凄いのかな。


「じゃあ私、一旦アルケの街に戻るから」

「待て、そういえばどうやってアルケの街と行き来をしている」

「え、転移魔法」

「転移魔法??」

「ここでもかあ」


 もう何度目か分からない転移魔法の説明をすると、国王にあれこれ頼まれそうになったが丁重にお断りした。


「さて、行きますか」


 私はアルケの街に転移すると、不動産を探した。といっても、この世界にそんなものがあるのか知らないけど。

 そう思って街中をさまようと、あった、商業ギルドが。

 ここなら一手に引き受けてそうじゃない? じゃなくても情報くらいはありそうだ。

 そう思い私は商業ギルドの扉を開けて中に入る。


「おぉ……」


 中はわりと豪華な造りをしていた。流石に商業を生業とするギルドなだけあるってところかな。


「あら、アナタはもしや流星の魔女様では?」

「えっ」


 ギルドに入るなり、私は不名誉な二つ名で呼ばれて焦る。


「申し遅れました、わたくし、この商業ギルドのマスターのシューマです」

「初めまして、レイナです」


 私を流星の魔女と呼ぶのは止めて欲しいけど、とりあえず今はそんなことはどうだっていい。問題は今目の前にあるチャンスを掴めるかだ。


「あの、ギルドマスターならこの街の土地を売ってる人とか、場所を知りませんか?」

「土地ですか? 何にお使いで?」

「畜産をしようかと」

「畜産?」


 あれ、この世界ってその概念も無いの? 私が買ったお肉は一体どこから。


「えっと、牛や豚を食用に育てたりすること……かな?」

「牛を……牛車にするのではなく?」

「はい、牛車ではなく食用です」

「面白いことを考えますね?」

「そうですか?」


 そういうものかな。割と普通だと思うんだけど。これももしかして現代知識無双?


「それでは土地は広い方が良いでしょうか」

「そうですね、あと、できれば借りるのではなく買いたいです」

「なるほど、ですと、ここなどはいかがでしょう」


 シューマさんは何処からともなく地図を出すと場所を示してくれた。

 一瞬ポーチから出したように見えたけど、魔法のポーチかな?

 とまあ、そんなことより、孤児院から少し離れた辺りに大きな空き地があるようだ。


「この辺りは治安があまりよくない風潮があるので安く買えますよ」

「それに広いですね。でも治安が悪いんですか?」

「というより、孤児院の子供達が居ますので、一種の偏見のようなものだと思ってもらえれば」

「あぁ……」


 育ちの悪い子達が居るのを治安が悪いっていう言葉にすり替えているわけだ。


「じゃあここ、買います」

「一応安くはなっていますがそれでも結構お値段しますよ?」

「大丈夫です、お金ならあるので」


 ゲーム内通貨が非常に多くある私からしたら大抵の買い物ははした金だ。

 これで子供たちが救われるなら安いものだ。

 アイシェにもお願いされたしね。


「それでは、白金貨30枚になります」

「白金貨」


 ってどのくらい?


「白金貨は金貨10枚で1枚、銀貨1000枚で一枚ですよ」

「ほう」


 えっと、確か銀貨1枚が1リーネだから、今回は3万リーネか。

 え、やっす。

 正直リーネなら兆単位で持っている、破格の安さだ。


「じゃあこれで」

「なっ……一括ですか」

「まあね、安く売ってもらうんだしこのくらいね」


 ギルマスに応対して貰えたおかげで話が早いってこともある、このくらいは当然だろう。


「流石は英雄と言ったところですか」

「それ程のものじゃないよ」


 ホントにね、ただ暇だから妹分のお願いを聞いてるだけだ。


「それで、働き手などの募集は致しますか?」

「ううん、孤児院の子共たちに頼む気だよ」

「え、孤児院の子ですか……?」

「うん、仕事を与えて、自活できるようにするの。いいでしょ」


 そしたら私も食用の牛や牛乳で美味しい料理が作れるし、皆幸せなはずである。

 多分、きっとね。


「そんなことまで考えているなんて……力だけでなく知恵もお有りなのですね」

「そんなことないよ」


 力は貰い物みたいなものだし、知恵は現代の一般知識だ。


「さて、それじゃあとは、あ、牛と豚を買いたいんだけど」

「それならセットでお届けしますよ、一括支払いしてくださったお礼にね」

「え、いいんですか?」


 それはありがたいけど、いいんだろうか。


「えぇ、孤児院の子達を救う為と聞かされれば、この程度の事はさせてください」

「ありがとう」


 どうやらシューマさんは良い人の様だ。ここまで面倒を見てくれてるんだから。

 それに、孤児院の現状を把握しているみたいだし。


「今度お礼しますね」

「いいですよ。好きでやっているのですから」

「そっか」


 私も好きでやってるからお礼といわれても困るというか、嬉しいけど困るから、気持ちはわかる。


「じゃ、後は子供たちの方だね」


 私は用事も済んだのでサクサクと歩き、さっき買ったばかりの空き地に向かう。


「リソースは木材で……牛舎っと」


 私は簡単に牛舎と牛を放つための庭を造る。

 囲いも作って……流石に牧草とか生えてないね、この辺は魔法で大地に栄養を与えたら何とかなるかなあ。


「よいしょ、よいしょ」


 まだまだやることはいっぱいだ。少しづつだけど進めていこう。

 そんなこんなで作業をしていくと、遂に牧場が完成した。

 思ったよりはこじんまりしているけど、まあいいよね、自活さえできればいいんだし。


「後は孤児院の子達がやる気あるかだなあ」


 という訳で私は早速近くにある孤児院に戻るとアイシェが子供たちの世話をしているのが見えた。


「アイシェ、ただいま」

「あ、おかえりレイナお姉ちゃん」

「ちょっと子供達と話があるから皆を集めて貰える?」

「うん? わかった」


 私がお願いするとアイシェは院長さんとお母さんにも話して子供達を手早く集めてくれた。


「えっと、私はレイナです。流星の魔女とか呼ばれてますけど、それはいいとして……。今日は皆さんにあるお願いがあってきました」


 さて、ここからが本題。断られたら私の苦労が泣いて悲しむ。


「皆さんに牧場の経営をしてもらいたいのです」

「ぼくじょうってなあに?」


 私の言葉に孤児院の子供が質問する。まあ、知らないよね。


「牧場っていうのはね、牛や豚を食用とかで育てる場所だよ」

「食べちゃうの?」

「う、うん」


 まあ、そうなるか。

 そっか……食べちゃうのが気になるかあ。

 自分で育てた子が食べられるんだもんね、ショックだよね。


「それで、その仕事をしてくれたら、売り上げは全部孤児院で貰っていいことにしようと思ってます」

「いいのですか、レイナ様」

「いいんです。子供たちの為になるでしょ」


 こんな状態放っておけないしね。かといってただただ助けるのでは為にならない。自活するというのが大事なのだ。


「どうかな、皆やってくれるかな?」

「それをやったら今より生活が楽になって、院長先生も楽になるの?」

「うん、そうだね。皆いい生活が出来るようになると思う」


 この国じゃ食用の牛や豚は珍しいだろうから、料理人に差し出せばかなりいい儲けになるだろう。

 まあとはいっても、そんなことになったら今度は子供たちが危ないから、あんまり高値で取引させる気はないけどね。

 子供と家畜が狙われるような街になっては困る。

 ていうか何なら私が育った牛や豚を引き取ってもいいくらいだ。


「やってくれる?」

「やる!」

「僕も!」

「私も!!」


 おぉ、皆やる気だねえ。

 よかった、働き手が見つかって。


「それじゃあ、明日からお願いね」

「「「はい!」」」


 こうして私は孤児院を立て直し、子供達に仕事を与える事に成功した。

 後日、国王から孤児院の件でお礼と謝罪を受けたけど、それはまた別の話。


ご読了ありがとうございます!


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次回更新は不定期ですが、書け次第更新とさせていただきます。

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