レイナとオークキングと流星
ガゼフさんに料理を教えてから半年。
城で出る料理のレパートリーが増え、美味しい食事を毎日楽しめる様になったころ。
ある事件が起きた。
「北の平原からオークキングが群れを率いてこの国に向かってる??」
国王様に呼び出されて主だった重鎮の集まる軍議の間で私の間抜けな声が響く。
「そうです、それでこの群れの討伐をぜひレイナ様に頼みたく」
「それは素晴らしい案ですな騎士団長殿。それなら我が国の国力の低下は最低限におさまるというもの」
「自分の利益ばかりを言うのではない財務官。レイナ殿一人で戦わせる等と騎士道にもとる行為、まして貴族のすることか」
「何をおっしゃいます軍務卿。こんな時の為にレイナ殿は勇者殿を育てていらっしゃるのです。何も一人で行く必要はありますまい」
「はあ」
それからもあーでもないこーでもないとぎゃーぎゃーと会議は続く。
なんだか会議が踊ってるよ。軍務を預かるラーズ卿は私に押し付けるのに反対してくれているがかといって別に私を庇っているというよりメンツの問題を語っている。
財務官はオークたちとの戦争になった場合に掛かる費用の事でも考えているのだろう。
そして騎士団長は私一人にやって欲しいみたいだ。理由は分らないけど仲間の、騎士の命には代えられないのかな?
「私一人でいいですよ」
「何、それは本当ですかレイナ様」
「ほれ、レイナ殿もこういっておられる」
「むぅ、しかし……」
オークキングならゲーム内でも相手にしたし強さは大体わかる。
正直本気を出せば一瞬で終わる相手だ。
「それじゃ、行ってきますね」
「な、待たれよレイナ殿!」
「はい?」
軍務卿のラーズさんはまだ何か言いたいことがあるようだ。
「本当に貴女一人で倒せるのか?」
「簡単だと思いますけど」
もうここまで来たら実力を隠す気も失せて来ている今日この頃である。
いっそ派手にやっつけて私の実力を見せて置くのも悪くないかもしれない。
「それじゃ、行きますね?」
「あ、あぁ」
ラーズさんはそれ以上は私を止めようとはしなかった。
だが、私を止める者がまだ二人いた。
サロス君とアイシェだ。
「師匠、俺も連れて行ってください!」
「私もレイナお姉ちゃんの剣として戦いたいです!」
「はあ……」
この二人が一番面倒かもしれない。
あれから半年、今やサロスは30レベル、アイシェは32レベルになっていた。
生半可な騎士より強い分、二人とも自分が戦えると自負している。
でも実践の経験はまだ少ない。たまに魔物狩りに連れて行った程度だ。
オークの群れ相手に立ち回れる程の力は彼らには無い。
「今回は私の仕事だよ、二人は待っててね」
「そんな、俺、戦えます!」
「私だって!!」
「はいはい! 二人の気持ちは嬉しいけど、今回は相手が多いの。範囲魔法で一掃する予定だから二人に出番はないよ」
「っ……そう、ですか」
「分かりました……」
露骨に残念そうにする二人。この二人もしかして戦闘狂に育てちゃった?
「さて、じゃあ何処かから私の活躍みててね」
「「はい!」」
私は二人に見送られながら城壁の方へ飛んでいく。風魔法のフライだ。
「さて、北の大草原に居るって話だったけど」
北に向かって飛んだ私はすぐにオークの大群を見つけた。
あー、アレはこの国の戦力じゃちょっと厳しいね。
オークのレベルは20~25と騎士一人一人と大差はないが種族の差がある。戦闘に向いている魔物達相手と同レベルでは分が悪い。
せいぜい二人で一匹を相手にするのがいいところだろう。
数十万はいるオークの軍勢を倒すのは困難だ。
ましてオークキングまでいるのでは勝ち目は無いだろう。
MOAでのオークキングには周囲のオークを強化する能力があったし、レベルも50とそれなりだった。
どう考えても騎士団に勝ち目はない。
「さて、降隕の杖を装備して……永劫回帰の髪飾りのスキルをオンっと」
一気に魔力が三倍になりMPも増加。
そして杖の力を使って……。
「メテオ・フォール!!!!」
魔法を発動すると何処からともなく轟音が響き渡る。
あ、上だ。
「ってデカ! っていうか数!」
大きな隕石が北の大平原に無数に降り注ぐ。
その威力は凄まじく、こちらにまで衝撃波が届く。
城なんてきっと今頃地響きで大変な事になっているだろう。
「や、やり過ぎた……」
明らかにやり過ぎた。試運転でまずは杖だけでメテオ・フォールすべきだった。
永劫回帰まで使うと圧倒的にやり過ぎだった。
「威力は魔力依存、数は消費MP依存かぁ」
そりゃ永劫回帰の力で魔力MP共に3倍になったらこうもなる。か。
「ま、過ぎたことはどうしようもないよね!」
そう私は楽観的にとらえることにした。
しかしこの時の私はまだ知らなかった。
この日、人々は空を見て恐れおののいた。巨大な流星群が降りそそぐ様に。
後に流星の日と呼ばれ。その地を神の怒りの落ちた場所として神殿を立てて祭り上げることになる。
その始まりだった。
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