レイナと王族と教師
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「さて、王都までの護衛ご苦労だった。これにてお前たちの任務は終了だ」
「ふう、よかった。何事も無くて――」
いやホント、山賊に襲われた程度で済んで良かったよ。強力な魔物とかには一切遭遇し無かったし。
「と、言いたいところだが、レイナ嬢、君には王城まで来てもらおう」
「……はい?」
今なんとおっしゃいました? 王城に来てもらう? 何故故に??
「この度の働きは見事であった。それにその魔法の才。素晴らしいものだ。ぜひこの国の力になって欲しい」
「えーっと」
話が読めないよ。この国の力にって、それは勧誘? 断れない系の?
仕方ない……ここは必殺技を使うしかないね。効くか分からないけど。
「私こう見えてハイエルフなので、人の国に仕えるのはちょっと」
「何?! そ、そうだったのか……いや、そうだったのですか」
「う、うん」
こちらがエルフの王族(?)と分かって態度が変わった。
そう言えばこの世界のエルフってどんな立ち位置なんだろう?
エルフの国とかあるのかな。
「それではやはり、此度のお礼も兼ねて王城へ来ていただけませんか」
「まあ、行くだけなら」
そのくらいならまあいいかな。この国の宮廷魔導士になれとか言われたら嫌だけど。
「あぁでも、アイシェも一緒じゃないと行かないよ。妹分だからね」
「えぇ?! レイナお姉ちゃん?!」
私の言葉にアイシェは驚く。何でだろ、二人一緒なんて当たり前だと思うけど。
あ、もしかして王城に行くのに緊張してるのかな? 私もだから大丈夫だよ。
「わかりました。それではご同行を」
「はーい」
私の態度って王族らしからぬ感じだけどいいのかな信じちゃって。
でも実力は見せたから、長く生きてるエルフだって事くらいは信用されてるのかな?
まあ本当は人生経験16年だけど。
とまあ、そんなわけで私達は王城に向かう事になった。
道中アイシェはオドオドしっぱなしだったけど、まだ着いても無いのにこれで大丈夫かなあ……。
まあ私もちょっと緊張してきたけれど。
王城までの街並みは壮観だった。アルケの街に比べて人通りも多く建物も大きなものが多い。
ここだったらしばらく滞在して買い食い生活をしても楽しそうだね。
そんな風に街中を見ながら行くこと十数分。
お城の前についに辿り着いてしまった。
「こ、ここここ、が王城」
「アイシェ、動揺しすぎだよ。落ち着こう?」
よく考えたらアイシェはアルケの街の平民だもんね、緊張するのも無理はないのかも。
こっちはまだ設定上王族だから対等な感がある分幾いくらかマシというものだけど……。
「嫌なら待っててもいいよ? 宿くらい取ってくれると思うし」
「い、いえ、一緒に行かせてください!」
「そう? なら行こっか」
さて、王城で一体どんなイベントが起きるのやら。
お城の中に入ると随分と世界が変わったように感じた。
外の街並みも凄かったけどここはもう別世界だね。
内装の作り、飾り、彩りの豪華さがまさしくファンタジーのお城って感じ。
「これからレイナ様には国王様に会って頂きます」
「! ……わかりました」
来てしまったよ権力者との接触イベント。
ここは無難にかつスマートにこなして帰りたいね。
って言うか呼称が「レイナ様」になってるね、ちゃんと王族扱いってことかな?
「こちらが玉座の間です」
「緊張するなあ」
「レイナお姉ちゃん緊張してないでしょ……」
隣でガクブルしてるアイシェを見ていると自然と落ち着いてくる。
自分より怖がっている人が居ると不思議と怖くない現象みたいな感じかなあ。
とりあえず扉を開けてもらい、私達は玉座の間に招かれる。
そして国王様? の前まで行く。
アイシェは膝をついて伏せてるけど、私はどうしよう。一応エルフの王族だし対等な立場っぽく振舞うべき??
「あなたが情報に上がって来た冒険者兼ハイエルフのレイナ殿かな」
「はい、エルフの王族たるハイエルフのレイナです」
「ふむ、疑う訳では無いがステータスカードを見せては貰えぬか? 我々にはエルフとハイエルフを見分ける術がそれしかない」
「はい」
疑われてるね完全に。まあいいけどね。そりゃ珍しいでしょうからね、ハイエルフなんて。
MOAでも私だけだったし。
「どうぞ」
「ふむ、確かにハイエルフだな」
私はステータスカードを見せつつ、ステータスカードの便利な機能を知った。
それは見せたい情報だけ見せられるってことだ。
なので種族と名前だけ表記してステータスとレベルは隠しておいた。
「それで、かなりの腕と聞いているが、レベルとステータスを教えてもらう訳には行かないのかな?」
「それはちょっと困りますね」
「そうか……ではこの国で宮廷魔術師として働くというのはどうか。冒険者より破格の条件を約束しよう」
「それもお断りさせて頂きたく思います」
私は旅して楽しく生きる気だ、それに私がここに残るのではアイシェをお家に帰す約束が果たせなくなる。
「残念だ。ではせめて、数年でいい、ここで教師をしてはくれないか」
「教師?」
それはどういう発想? なんでそんな話に?
「レイナ殿が守って来た人物、サロスだが、彼は勇者の末裔だ」
「勇者?」
それってファンタジーとかで出て来る魔王と戦うアレだよね?
「そうだ。そのサロスの教師として訓練を付けてやって欲しいのだ」
「あ、そういう……」
つまりこの国王様はいい選手=いいコーチと思っているタイプということだ。
私にそんなのが務まるとは思えないけど。
とは言えここまで色々断っている。ちょっと悪いことをしている気がしてきてしまったのでそのくらいならいいのかなと思ってしまう自分が居る。
どうしたものかと悩んでいると当の本人、サロス君から声が掛かった。
「どうかお願いします、俺に力を与えてください! 弱いままは嫌なんだ!!」
「えぇ……」
あの口数の少なかった少年が頭を下げてお願いしてきた。
どういう心境の変化なのだろう、いや、そうか……彼は勇者なんだ。
ふと、山賊に襲われた際の悔しそうな顔を思い出す。
もしかして、彼は勇者なのに弱いことが悔しくて、守られているだけなのが悔しくてあんな顔をしていたのかな。
「うーん」
でも私なんかでいいのかな、ぶっちゃけ強いモンスターと戦うのに同伴してパワーレベリング……くらいしか修行が思いつかないんだけど。
「レイナお姉ちゃん、私からもお願いします!」
「へ? アイシェ???」
なんでアイシェまで頭を下げているの?
「私、山賊に襲われた時、怖かったんです。覚悟をしてついて来たつもりだったけど、実際の戦いを見て手が震えて。レイナお姉ちゃんが張ってくれた防御の魔法が無ければ死んでいたと思います……」
「いやいやそれは……」
そんなことにはならない。防御魔法も無しに放置なんてしないし、もし防御魔法を使わないなら二人から離れたりしない。
「お願いします! 私も強くなりたいです!」
「お願いします! 俺も強くならなきゃいけないんです!」
「私からも、再度乞おう、勇者の教師になってくれまいか」
「う、うーん」
少年と少女、二人の想いに気圧される私。
……はあ、まあ、仕方ないかな?
ここまでされたら私だって空気を読む。
「わかった、わかったよ。二人が一人前になるまで面倒みるよ」
「「ありがとうございます!」」
こうして私は勇者サロス君とアイシェの教師になることになった。
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