レイナと魔神と風
「早く片付けたいけど……っ」
魔神との戦闘中、遠目にバイソン、剣聖チームの戦闘が目に入る。
バイソンは……倒したように見えた魔神の分身が再生して劣勢。剣聖達は私のビットでなんとか支えてる感じ。
つまり、私がここを打破しないといけない。いくつか手はあるけど、どこで使うべきか。
「考えても答えが出ないものは、やってみるしかないよね」
というわけで、私は戦闘中にインベントリを漁る。
もちろんその間魔神が待ってくれたりはしないので……。
「ファントム」
分身を戦わせる。ちょっとだけ時間を稼げれば御の字だよ。
「あったあった」
私の秘密兵器。このタイミングで使うのが正しいかは別として、この劣勢を打破するには、まずは一つ、手を打ってみるしかない。
その、第一手。飴ちゃんである。
「ほんと、こんなものホイホイ渡していいのかなぁ」
実のところ、ここ最近、夢に出ては飴ちゃんをくれる神様であったが、もしかしなくてもこういう闘いの為……なんだろうなぁ。
「さて、これで勝てるといいけど」
飴でレベルアップしたけど、どの程度強くなったのかな。
「プロエレスフィ・ケラヴノス」
魔法名を口にする。すると。
ガオォオッ! と大きな音がした。
いつも雷魔法を使うと大きな音がする、でも、こんな音ではない。頭を?でいっぱいにしながらよく音の先を見る。あれは。
「竜?」
なんか、見覚えのないバチバチとした、雷で出来ていそうな竜が、魔神に飛んでいく。
「魔法の形変わっちゃったよ……」
意味のある変化なのかはよくわからないけど。ま、強くはなってそう。
「形といえば」
魔法はイメージだ。そもそもが形に囚われる必要はない。
うーん。できるかな。
「そもそも形の無い物だし……うーん?」
形に囚われず、イメージし、形を与える。
よくわからないけれど、やってみる。
「…………! できたかも」
私の周りに、風の流れが生まれる。強烈にして苛烈な、暴風。
「これで。いっくぞー」
戦闘中に試すことではないけど、未来を変える為には、見えてないことをするしかない。
「って、速っ」
暴風を纏った私は、暴風の流れを常に制御して、移動速度、攻撃速度、あらゆる面で風のフォローを受ける。
「とうっ」
あまりの速さに、コントロールが難しいが、自分のことなら未来確定ができるようで、誤操作はしない。
ファントムを倒し切って、こちらに目をやった瞬間、暴風のアシストで魔神の背後に回ることに成功。
そのまま剣を振り上げる。剣にも腕にも、暴風の加速を乗せる。
「ヅッ。キサマ、ナニヲシタ」
「魔法だけど」
「マホウ?」
魔神が魔法を知らない? というよりは、これが魔神の知ってる魔法じゃないってこと、かな。
「これはオリジナルだからね、命名するなら、そう、アネモイ・エピタヒュノ」
命名のセンス無いなとは思う。何しろ単語を組み合わせただけの名前だ。
意味は風神の加速とか……かな。
「カゼ、カ」
「エルフの得意属性だからねぇ」
本来、適性のある属性という意味では、エルフは風だ。
私は超越者として、プレイヤーとして全属性使えるけど、使えるだけ。
得意の属性はやはり風だったりする。
「そしてこれは複数の複数の効果を持たせているよ」
1つは加速の風。ボレアース。
1つは力の風。ゼピュロス。
1つは守護の風。ノトス。
1つは移ろう風。エウロス。
最後の風以外は強化系。最後の風は変化系統の風だ。
「ま、実験台として体験していってよ」
「コロス」
「はははは、無理じゃないかなぁ」
魔神は言いながら拳を振るう。
それを守護の風。ノトスが受け流す。
そして現れた隙に、ボレアースで加速した私の剣が、ゼピュロスを纏って振り下ろされる。
「ヌ」
「どうかな、感想は」
私の剣は言いながらも留まることはなく、ひたすらに魔神を押し込んでいる。
「キサマ、ハ、ホウチデキナイ」
「ん?」
放置できない、どういう意味かなぁ。
「ヒトガ、カミニナルジダイハ、コナイ」
「ん??」
余計意味が分からない。何の話だろう。
「キテハ……ナラナイ!!」
「おぉ……」
気合の入った魔神さん、今度は格闘術を混ぜた、対人的かつ、効率的な戦闘スタイルを取る。
「カミガヒトノマネゴト、ナド、クツジョクデシカナイ、ガ」
「うーん」
神様が人の様に技に頼る。それは力だけでは勝てないということだ。
「私も神様の真似、してみようかな」
私は魔法を構築する。戦闘中だから本来なら難しい、だけど。
「エウロス、お願い」
移ろう風エウロス。これはいわゆる操作、変化を起こすだけの風。
強力な風にしたのは、言うまでもないけど、理由は簡単。
私の魔法数、威力を調整するとなると、ここまでする必要があるからだ。
魔法の選択、威力、持たせる意味、などなど、戦闘に関する様々な移ろいを任せる風。それがエウロス、つまり。
「オート戦闘モード」
魔法の構築は私がやって、体の動きや魔法の選択、発動はエウロスがやる。
意識ある風。移ろう風。それがこの魔法だ。
「さて、どうやってアレを再現しようかな」
この魔神に勝つための、高火力魔法。どうやって再現すべきか、私はエウロスに包まれながら、熟考した。
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