レイナと魔神と原初
「うっわ、あぶな」
私は今起きた出来事につい声をあげる。
それは魔神の攻撃だった。
「無茶な戦い方するなぁ」
これはバイソンに対する感想。
そう、魔神の私に対する攻撃が、際どくて『あぶな』ではなく、バイソンの戦い方が、危ない。
そういう無茶するから、戦況把握は重要だ。死人が出ないようにしたいからね……少なくともこの戦いに参加してるメンバーからは。
さて、そんなことを考えつつも、さっさと魔神を倒したい私。
バイソンのような芸当はできないけれど、それでも倒すの事態は難しくない、難しくないが。
「やっぱり危ない。ソードビット、援護にいって」
バイソンとか、剣聖達が劣勢なので、ソードビットを支援に送り出す。
残された魔神と私。
魔神はソードビットの邪魔が少なくなり、動きやすいのだろう、逃げる速度が上がった。
「まあ、それでも私の方が速いし……なにより、私は近接戦しかできない剣士じゃないからね――プロエレスフィ・ケラヴノス!!」
久々の原初魔法。最近イデアばっかり使ってたからねぇ。
本質的には近い二つだけど、イデアは超越者なら使える魔法。超越者自身がイデアとよばれる究極の理念から生まれた存在という設定でもあったので、ここから来た名前。
大して原初魔法、つまりプロエレスフィは魔法事態が原型であり、これをもとに誰でも使えるようにしたのが、現在の魔法。
本来魔法は原初魔法、ハイエルフしか使わないものだったというのが、この世界の設定。
で、なんでこんなことを今考えているかというと……。
「プロエレスフィ・ケラヴノス」
「およ」
そう、なぜか、イデアではなく、プロエレスフィを使ってきたのだ。魔神が。
「魔神さんもハイエルフ?」
いやまあ、厳密に言えばこれはハイエルフでなくてもいいのだろうけれど。
何せ使用者を指して原型とするイデアと違い、プロエレスフィの魔法は魔法事態を指しての原初、原型である。
であるなら、原初の魔法を使うなら、それがたとえ神でも、変ではないのだ。
「とはいえ私の方が威力が上だね。ここは飽和攻撃でおしきろ。プロエレスフィ・ケラヴノス連射!」
私はもう面倒なので、無詠唱は当たり前、魔法名も一回だけ言ったら後は面倒だからひたすら連射した。
で、雷をそれだけ連射するとどうなるかっていうと、まあ、その。
どうなるの?
「なんか、ちょっと空気が薄くなった、気がしなくもない」
なんとなく、くらっとする。雷で周りの環境に影響を与えすぎたかな。
「まあでも……魔神は死にかけだね」
流石に捌き切れなかったようで、死にかけの魔神。
あれだけ原初魔法を使われて、まだ生きているのだから、なんとも生命力に溢れている。
いやまあ、もう死にかけなのに、溢れているはどうかと思うけど。
「未来も見えてるけど……はぁ」
これでコイツを倒したら終わりなら、よかったんだけど。
「来ちゃったなぁ」
それは魔神であり、死に体ではないもの。
それは魔神であり、分身では無い物。
最後にも一回。それは魔神であり、全く見覚えのない『新手』。
「誰?」
「…………キサマヲコロスモノダ」
「うへぇ」
理屈とか知らないけど、これが多分本来の、魔神なのだろう。
つまり、あれだ。ここにいる死に体の魔神が分身Aで、それがさらに強化分身したのがバイソン達の相手。で、今目の前の空間に突然出てきたのが。
「シネ」
「いやいや」
これが本当の魔神であり『神』である。
つまりそれがどういうことかというと……。
「速いって。そして馬鹿力」
高速で薙がれた魔神の腕が空を斬る。この場合斬るが正しいだろう。
だって、空間が本当に斬れてるから。
「断空剣改め、断空拳ってところかな?」
剣士スキルの断空剣を素手で行う。なんとも恐ろしい。
「さて、犠牲無くして勝つには、ここからが本番」
バイソンや剣聖が死ぬ前になんとかしたい。
そう……蘇生魔法が効く程度のうちに、ね。
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