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レイナと旅と戦闘

ブックマーク等、応援ありがとうございます!

 翌朝早朝、アルケの街南門まで来ると、もう既に馬車や近衛兵、アイシェ達が居た。


「おはよーアイシェ」

「おはよう、レイナお姉ちゃん」


 いやホントに早い。こんなお早いおはようはネトゲ以来だ。


「それで、さるお方というのは?」

「えっと、あそこの人みたいです」


 アイシェが指さしたのは馬に乗っている少年。10歳くらいだろうか。

 中々に凛々しい顔立ちをしている、将来はイケメンかな。

 と、そんなことより仕事仕事。


「すみません、この部隊の責任者の方っていらっしゃいますか?」

「なんだ、お前は」

「初めまして、冒険者のレイナです。今回王都までの護衛依頼を受けました」

「お前が……隊長ならあっちだ」

「ありがとうございます」


 指さされた方に居たこちらもイケメンな美青年に声を掛ける。


「あの、冒険者のレイナです」

「あぁ、貴女が噂の冒険者か。よろしく頼む」

「よろしくお願いします」


 なんか「噂の」って辺りが気になるけど、まあいいってことにしておこう。


「それで、王都までは馬で走るんですか?」

「あぁ、そうだ、馬が居ないのなら貸すがどうする?」

「馬なら居るから大丈夫です」


 私はそう言ってユニちゃんを召喚する。


「なっ! 幻獣?!」

「レイナお姉ちゃん?!」

「え、そんな驚く?」


 ただの可愛い馬なんだけどな……まあユニコーンってこともあってちょっと角生えちゃってるけどさ。


「流石、噂通りと言ったところか」

「あのう、その噂ってなんですか」

「ん? そうか本人は知らないものか。いやなに、冒険者になって早々にAランクまで駆け上り、本来の実力はSをも超えると噂されている冒険者が居ると聞いてな。それで今回依頼したのだ」

「あー、なるほど?」


 誰だろうね、そんな出鱈目な噂流したのは。

 Sランク以上の実力ってどのくらいか知らないけど、いつの間にか誇張され過ぎている。


「まあいっか。さて、アイシェ、一緒に乗ろっか」

「え、大丈夫なの……? 二人で乗って」

「大丈夫だよ。というか、乗らないとアイシェ一人で馬に乗るんだよ? 乗馬できる??」

「で、できない」

「じゃあ一緒に乗ろ」

「は、はい」


 そんなわけで一緒に馬に乗り、全員の準備ができたのを確認して私はユニちゃんで駆けだした。

 といっても、普通の馬に速度を合わせるのでそこまでのスピードは出てないんだけど、それでも二人乗りでこの速度なら早いと部隊の隊長さんは驚いてた。


「隊長さん、お名前は?」

「あぁ、俺はナーディルという」

「ナーディルさん、さるお方ってどんなお方なんですか?」

「それは公には出来ない」

「なるほど」


 国の重要人物とかかな。でも正体も知らない少年を守るってモチベーション的にどうなんだろう。

私? 勿論やる気はあるよ。


「それで、今日は何処まで進むんですか?」

「馬の体力次第ではあるが……できれば途中休憩を挟みつつ、夕方まで走ってから野宿の準備をしたい」

「そうですか」


 私は野宿なんて嫌だけどね。

 旅の楽しみと言えなくもないかも知れないけど、ベッドで寝たい。お風呂入りたい。


「アイシェはここから王都がどのくらいの距離か知ってる?」

「お父さんから5日程の距離だと聞いたことがあります」

「うへえ、めちゃ遠いじゃん」


 その間野宿するのか……しんどいなぁ。お風呂も無いだろうし。この場合作っちゃえばいいのかな?


「野宿だけは避けないとね」

「何言ってるのレイナお姉ちゃん」

「都会っ子に野宿は厳しいって話だよ」

「レイナお姉ちゃんは田舎から出て来たんじゃ……」

「あぁ、そういえばそんなことも言ったね……」


 適当に言い過ぎててもうすっかり忘れてた。いけないね、てきとうに生きてちゃ。


「ホントは都会っ子なんだよ」

「そうだったんだ」

「そうなんだよ」


 そんな他愛ない話をしながら進むと、暫くしてこれ以上の移動はさるお方の体力的にも厳しいとのことで野営することになった。

 来たよ、来てしまったよ野宿が。


「ま、こんな時の為の家なんだけどねっと」


 私は街道沿いの広い場所にアイテムボックスに入れてある家を設置した。


「な?! 一体何をしたんだ?!」


 近衛騎士の皆さんが大変動揺している。

 うーん、なんて説明したらいいかな。


「えっと、家をアイテムボックスから出しました」

「アイテムボックス……? というのも分からんが、家を出したっていうのは……」

「魔法で作るところから見せた方が分かりやすかったかなあ」


 私の独り言に呆然とするナーディルさん。

 うーん。


「まま、とりあえず立ち話もなんですからどーぞお入りください」

「あ、あぁ……まずは危険が無いか調べさせてもらうぞ?」

「いいですよ。危険がないと分かったらさるお方もどうぞ」


 私はそれだけ言うと家に入っていく。

 玄関から入り、リビングを見る、さて、今夜は何を食べよう。

 一応インベントリに屋台で売ってた串焼きとかを買いだめしてあるからこれでいいかな?


「危険は無いようだが……何故風呂まであるんだ」

「そりゃ入るからでしょ。乙女が二人もいるんだよ?」

「そ、そうか……」


 なんであんな当たり前のことを訊くかなあ。

 もしかしてこの世界ではこういう魔法は廃れてるの?

 これって低レベルでも覚えられる魔法なんだけどな……。

 私がそんなことをぼんやり考えているとさるお方たちが入って来る。


「部屋は自由に使って。私とアイシェは残った部屋を使うから」

「あ、あぁわかった。そうさせてもらおうサロス様もそれでよろしいですか」

「ああ、構わない」


 ここに来て遂にさるお方の名前が聞けた。

 サロスっていうんだね、堂々とした態度といい勇気がある。


「お風呂は先に使わせてもらうよ? いいよね」

「普通の旅では風呂なんて入れん。好きにしてくれていい」

「そ。じゃあ先に入るから。出たら貴方達も入ってね」

「私達もか?」

「そりゃまあ、そんな汗だくで布団入られてもね」

「むう……そうか、ならばそうしよう」


 どうやら地の利はこっちにあるようだ。素直にいう事を聞いてくれる。

 偉い騎士さんなんだろうけど、横柄ではないようだ。


「さ、アイシェ、お風呂に入ろうね」

「お風呂、ですか?」


 おや? アイシェはお風呂をご存じない?


「お湯に浸かるんだけど、もしかして初めて?」

「は、はい、普通街ではお湯で体を拭く程度ですので」

「そうなんだ……」


 そう言えば宿に泊まった時、私風呂にも入ってないわ体も拭いてないわで散々だったね??


「じゃあきっと気持ちいいよ。クセになると思うなあ」


 元の世界の私もお風呂なんて人生の途中から抜け落ちてたから新鮮だ。

 早速浴場に向かって、脱衣室で服を脱ぐ。


「さ、入るよ」

「は、はい」


 アイシェは初めての体験、私は久しぶりのお風呂だ。


「ふぅ、気持ちいい」

「はふぅ」


 体をさっさと洗った私とアイシェは早速お風呂に浸かる。

 やっぱり入浴はいいね、心が洗われる感じがするよ。


「はー、最高~、アイシェはどう?」

「はい、最高の気分です」


 満面の笑みのアイシェを見て作ってよかったなぁと思う。

 やっぱりお風呂は大事だね。今後もこの家にはお世話になりそうだ。

 というか、よく考えたらこれがあれば宿要らず? いやいや、その街ごとの特産物などを楽しむならやっぱり宿は取っておくべきだよね。

 宿に泊まるのも旅の楽しみ方の一つだ。だからと言って旅の野宿は嫌だけど。


「さて、そろそろ上がろうか」

「はい。レイナお姉ちゃん」


 私達はお風呂を上がり、着替えると騎士とサロス君を呼びに行く。

 

「上がったのでお次にどうぞ」

「あぁ。それでは行きましょうサロス様」

「ああ」


 それだけ言うと、サロス君と騎士達はお風呂へ向かった。


「さて、私達は寝室で寝ようか」

「え、護衛なんですよね。寝ちゃっていいんですか?」

「あー、この家私の許可なく入れないからね。壊そうにも壊せないだろうから大丈夫だよ」


 私のスキルで作られた家だ。木材とはいえレベル80クラスの敵でも無ければ壊せない。

 そんなのがホイホイいる世界だったら世界があっさり崩壊しそうなので、そうなっていないという事は居ないのだろう。

 まあそれも確証ではないけど。何せ私が転生しているんだ。他のプレイヤーも転生している可能性はある。

 自分だけが特別だと考えるのは危険だとも思う。

 とは言えそんな事を言い始めればキリがないのであまり気にもし過ぎないけどね。


「さて、寝よ寝よ」

「は、はい」


 そして私達の王都への旅の一日目は終わっていった。

 そして三日後、旅ももうそろそろ終わると聞いた頃。

もうすぐ王都かという所で山賊たちに囲まれた。


「クソ、やはり現れたか!!」

「どうします団長!」

「冒険者はサロス様を、私達が山賊を攻める!」

「え、まあいいけど」


 まさかこの中で一番強いだろう私が防御側とは思わなかった。

 まあ何とかしろって言われて大量虐殺するのも嫌だけど。


「サロス……様はこちらに、私の傍なら安全なので」

「……あぁ、よろしく頼む」


 なんか悔しそうな表情なんだけど、どうしたんだろう。


 そんなサロス君のことはお構いなしに戦闘は始まる。

 一人一人は騎士の方が上の様だがいかんせん数が多い。

 多勢に無勢という奴だ。これはマズイ。仕方ないね、そろそろこちらも動こう。


「プロテクション・ウォール。この中にいれば安全だから、ちょっと私は敵の数を減らしてくるよ」

「レイナお姉ちゃん私も!」

「アイシェはサロス様と一緒に居て。いざって時は頼りにしてるんだからね」

「は、はい!」


 まあ二人の方に敵を行かせる気なんてないけど、一応こうでも言っておかないと付いてきそうだからね。


「トルネード!」


 私は二人の傍を離れると射程内に入った山賊の集団に範囲魔法を放つ。


「冒険者?! サロス様はどうした?!」

「安全な場所に匿ったから大丈夫。ほら、さっさと倒すよ」

「あ、ああ」


 とは言えさっきの魔法だけでも結構な数が減った。

 後は……アイツかな。

 私は山賊の首領らしき男を見据える。


「痛いけど我慢してよね……エアシュート!」


 空気の弾丸を盗賊の首領にお見舞いすると首領は50mくらい吹っ飛んだ。

 やば、死んでないよね。


「詠唱無しの初級魔法であの威力……なるほど、確かに腕はSランクはあるようだな」

「お褒めにあずかり光栄ですっと。さ、他の奴らはどうするの? まだ私達とやり合いたい?」


 最初は調子のよかった山賊達もトルネードで半数をやられ、首領まで瞬殺――殺してないけど――されたらもう殆どが降参と言った様子だった。

 そんなんなら最初から襲わなきゃいいのに。


 そう思っていると一人の山賊が動き出し、叫んだ。


「抵抗するな! したらこのガキどもを殺すぞ!」

「へ?」


 そういった盗賊はプロテクションウォールの外で叫んでいる。

 馬鹿なのかな。


「はあ、その結界、貴方じゃ壊せないし、入れないでしょ」

「ふん、こんな魔法くらいっ」


 そう言って斧を掲げると結界に振り下ろし――弾かれた。


「はぁ……仕方ないなあ」

「クソ、クソっ! な、お前近寄るな! 魔法使い風情が!」


 私が近寄ると斧を大振りで振り上げる。

 いやいや、この距離で大振りとか対人経験なさすぎ?

 私は振り上げられた手を掴んで盗賊をぶん投げた。

 投げた方向には首領が居て上に被さる様に落ちる。

 我ながらナイスコントロールだ。


「ぐふっ」

「はあ。それで? 他にはいる?」


 今度こそ全員諦めがついたのか皆武器を下ろして投降する。

 逃げようとするものも居たが土属性の拘束魔法で捕まえて置いた。


「はいこれで終わりっと」


 なんとか山賊達との争いも収まると私はふうっと溜息を吐いた。何とか誰も殺さずに済んだね。

 そう思っていると、ナーディルさんが近づいて来た。


「ふむ、お前は人を殺したことがないのか?」

「え」


 急な質問に狼狽える私。

 あるか無いかで言われたらあるはずだ。でもそれは間接的で直接的ではない。


「ある……けど」

「そうか。山賊相手に命の心配をしてやっている様だから、殺しが出来ないのか余程に余裕があるのかと思ってな」

「あはは」


 完全に図星だ。そりゃ余裕はあったけど、それ以上に人を殺したくはなかった。


「まあいい、お前ら、残りの投降した者たちを縛り上げろ。王都の詰め所まで連行するぞ」

「はっ!」


 戦闘で傷ついた騎士達も多かったが、余裕のある騎士達が山賊達を縛り上げていく。

 傷ついた騎士達には私が回復魔法を掛けて周ることにした。


「ヒール、ヒール、ヒールっと」

「おぉ、こんな一瞬で治るなんて」

「まるで大神官さまの魔法のようだ」

「もしや聖女様では」

「えぇ」


 治してあげた人たちの反応が大げさすぎて怖い。王都に付いてから変に噂になったりしないといいな。


「よし、こっちは終わったぞ、おい、そいつらは……?」

「あぁ、治しといたよ」

「治しといたって……一体いくつの魔法が使えるんだ……」


 あれ、この世界じゃ魔法は複数使えるとおかしいの?

 そんなことないよね? 冒険者ギルドにいかにも魔術師ですって格好の人もいたくらいだし。


「あ、それでサロス様は?」

「あぁ、無事だ。だがこちらから接触することができないのだが?」

「あ」


 そう言えば防御陣魔法敷いたままだった。これじゃあナーディルさん達も接触できないよね。


「もう終わったのだろう、ならこちらから出ればいいだけだ」

「サロス様! ご無事で何よりです!」

「……ああ」


 またサロス君が悔しそうにしている、何でだろう?

 まあでも考えても分からないし、かといって本人に聞くほどの仲でもない。仕方ないのでこの問題は一旦置いておこう。


「それじゃあ移動を再開するぞ」

「はーい」


 私は返事をするとユニコにアイシェを乗せて走り出す。

 なんだかアイシェも浮かない顔だけど気のせいかな。

 そして後日。ついに王都に到着した私達は門番の居るところで山賊達を引き渡した。


ご読了ありがとうございます。

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