レイナとバイソンと廃都
「よっし、到着~」
夜中。私はアイシェ達の元を抜け出して、魔帝都……あれ。ここ魔帝都のなんていう場所だったっけ……まあ、いいか。魔帝都に転移した。
「で、この惨状は……」
見るに堪えない惨状。目に映るもの、そのすべてが破壊されていた。瓦礫であり、炭であり、灰である。うーん、デンジャラス。
「とりあえず、城のあった方に行ってみるかぁ」
とはいえこの惨状だ。街並みなんて変わってて記憶をたどって歩くには無理がある。
なので、やけにでっかい瓦礫のある方。多分、城の瓦礫の山に向かって移動を始めた。
「で、この惨状はいったい」
私は、一緒に転移で飛んできた、うめむら…………あ、バイソンに話しかけた。
「魔神だ。アイツは魔の神なんて優しいもんじゃなかった。目に映るもの、すべてを灰にしかねない。所謂バケモノだな」
「化け物」
うぅむ。私のイメージとはだいぶ違う。魔の神でもなければ、アイシェを依り代にした時の強さでもない。どうなってるのかなぁ。
「でさ、魔神はまだここにいるの?」
「さあな」
「さあなって」
知らないってことかぁ。面倒だなぁ。
「俺がお前の場所に来るまで、どれだけかかったと思ってるんだ」
「一瞬じゃないの?」
「馬鹿言え。行ったこともないところに転移はできんだろうが」
「アルケに来たことないんだ?」
「そりゃな。転生してこの方、魔帝都だけが俺の世界だった」
「そかぁ」
うーん、じゃああの長い旅路を踏破してきたんだね。そしてその間に、この惨状ってわけだ。
「で、魔王は?」
「あぁ……今回は魔女王の仕業じゃねぇからな?」
「そうなの?」
まだ諦めてなかったのかと思ったけど。違ったみたい。
「魔女王に反発する反乱分子が、今回の黒幕だ」
「ふうん。そいつらは?」
「死んだよ。呼び出してすぐに魔神にやられた」
「へぇ、詳しい」
「まあ、見てたからな」
「ほう」
見てたんだ。へぇ。
「止めなかったの?」
「止めようとはしたさ、ただ間に合わなかった。目の前で召喚が成功しちまった」
「そかぁ」
まあ、バイソンで間に合わないんじゃ、この世界の住民ではもっと無理だろう。
仕方ないね。
「で、だ。そろそろ城なんだが」
「うん」
「斬るなよ?」
「何を?」
「美魔女王だよ」
「あぁ」
犯人じゃないなら、斬ったりしない、大丈夫。
「ていうか、美魔女王いるのかな。こんな惨状で」
「あの方はどんな時でも、ここを離れないとおっしゃっていた。言ったら実行するタイプだ。問題ない」
「そかぁ」
まあ、そういうことなら、とりあえず事情聴取かな。
「いたな」
「お」
確かに、遠目に派手な人が見える。
「来たか。バイソン」
「あぁ。世界最高戦力、連れて来たぜ」
「言われよう」
世界最高戦力って、言い過ぎ。
「して、事情の説明は?」
「してある。ただ、何か聞きたそうな眼はしてるな」
「そうなのか?」
「ん、まあね」
事情聴取は、しないとね。
「事の経緯はいいの。バイソンが間に合わなかったせいだよね」
「おいおい、ひでぇ言い方だな。俺だって苦労したんだぜ?」
「まあ、そうだろうけど、間に合わなかったんだよね?」
「……まあな」
全く、こうなる前に呼んで欲しかったよ。
「それで、なんで私を頼ったのかな。とかはまあ、最高戦力って言葉でなんとなくわかったけど。一番の問題は……魔神、どこ?」
「ふむ、わからん」
「うっわ使えない」
「おいレイナ、相手は王だぞ」
「私も王だもーん」
「そういう設定だったな……」
いやいや、設定だけじゃない、しばらく王のお仕事してたもの。
「よい、事実だからな。正確な位置はわからない、だが、方角なら、わかる」
「なんで?」
「うむ、飛んで行った方向……もあるが、魔族特有の共感覚のようなものだな」
「なるほど、感じ取れるんだ?」
「そうだ。そしてそれはバイソンも同じこと」
「ほう」
「ついてはな、バイソンを連れて、討伐に向かってほしい」
「ほほう」
それはまた、なんというか。最高戦力、だねえ。
「いいけど、いいの?」
「俺か? かまわない。死ぬ気で働くさ」
「おぉう」
そこまでの覚悟があるなら、いっか。
「じゃあ遠慮なく借りますね」
「あぁ、頼む」
「じゃ、いくぞ」
「これだけの為に会いに来たのか?」
「そうですよ。もし悪さしてたら首を飛ばそうかとも、思ったんですけどね」
「むう」
まあ、いっか。今回は悪さはしてそうにない。
こうして私は、バイソンと共に、魔神を追うことになった。
……追いつけるものかなぁ。
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