レイナと流星と約束
「はー、どうしよ」
朝。私はいつも通り元気にしゃっきり起きた後、早速独り言。
どうしようと言うのはアレだ。約束についてだ。
「まさか翌日には魔力コントロール完璧になるとか、思わないし……」
これまた一人ごちるのだが、うん。先日約束したウォーターボールを的に当てられるようになったら最上位の魔法を教えるという話。これ、翌日には達成されてしまったのだ。
「何教えようかな……」
とはいえこの約束、流石に的当てが早すぎたので、当日は明日教えるということにして流したのだが、実際教える約束になった今日を迎えてなお、何を教えるか決まらない。
「あんまり危ないの教えるのもなぁ」
かといって、最上位の魔法を教えるといったのに、安全な中級程度の魔法を教えるのも違う。
「まあ、もうちょっと考えてみよう」
そう呟きながら、階段を下りる。
朝ごはん、朝ごはん。
「おはよー」
「おはようございます、レイナさん。お客様が来てますよ」
「こんな朝っぱらから? 迷惑ー」
「悪かったな」
「おぉ」
私の率直な感想は、お客様に聞かれていた。で、お客様っていうのは。
「えっと、なんだっけ、うめ――」
「バイソンだ」
「そう、それ」
「お前わざとやってるだろ……」
こんな戯れも、昔馴染みならではだね?
「で、何しに?」
「お前に用があってな。ま、簡単な頼み事さ」
「ほほう。お断りします」
「話聞いてからにしろや」
「だって、私今長期の仕事入ってるもの」
「まあ、そういうなって」
「えぇ……」
まあ、昔馴染みのよしみで、ちょっとだけ聞いてあげるか。
「で、何?」
「あぁ。お前以前に、魔人を倒したよな」
「あぁ。あのよわっちい方の神」
同じ神の部類でも、ハラルド神とはだいぶ違う。人を依り代にしたからかな?
「強い方の神を知らねぇが。まあいい。それでな、人を依り代に降臨した、土地の縁を使って、また呼び出した馬鹿がいる」
「ほほう」
まーた魔人かぁ。
「それに今度は、人を依り代にしていない」
「ん?」
ってことは、魔人ではなくて、魔神本人?
「わかるか? これは世界滅亡レベルの危機だ」
「うぅん」
まあ、ヤバそうなのはわかる。最近本当の神と戦ったばっかりだし。
でも、だからといってなぁ。
「私、今師匠してるから」
「話は聞いた。このご夫婦の娘さんだってな」
「うん」
「俺が面倒みるから、その間にちゃっちゃと倒せ」
「無理」
「即答かよ」
「そりゃね」
いくら何でも、本物の神と私では強さに差がある。今のままでは勝つのは難しいだろう。
「お前でも勝てないとなると、滅ぶしかねぇな。と、言いたいところだが」
「ん?」
「お前、本当に勝てないのか?」
「というと」
なんでそんなこと聞くんだろう。
「お前、明らかに前より強くなってるよな?」
「ん??」
明らかに、とは。
「ステータスみたの?」
「いや? 視えないからな」
「へ?」
私とバイソンの強さは、そこまで、つまり、ステータスが覗けなくなるほどではないはずだ。
確かにアイシェに勝って、レベルは上がったけど。それ以外…………あ。
「あの飴……はぁ」
「なんだ?」
「いーえ、なんでも」
あの飴ってそういうこと? これを見越して渡してた?
「嫌になるねぇ」
「だから、なんだよ?」
「なんでもないよ」
「わけわからねぇ奴だな」
まあ、バイソンに言っても、仕方ないしなぁ。
「でさ、バイソン」
「なんだ」
「見栄えが良くて、最上位で、安全な魔法無い?」
「ん? そうだな……」
私の唐突な質問に、バイソンは悩んでくれる。いいヤツだね。
「メテオとかどうだ」
「何言ってんの」
「いや、小型化すれば、簡単に消せるだろうし、見栄えはいいし、最上位で、上空から発生する分に、着弾まで時間があるから、消しやすいだろ?」
「なるほど?」
確かに、そういわれて見れば、そうだ。
「ありがと、バイソン」
「おうよ。ありがとうついでに魔神も頼むわ」
「うーん。まあ、善処はするよ」
「十分だ」
バイソンも納得はしてくれたみたい。
さて、後は流星を見せるのと……。
「どうやって教えたらいいかなぁ」
そこが一番問題なんだよね。ま、いっか。なんとかなるなる。
こうして私は、バイソンと久しぶりに会い、厄介ごとに巻き込まれつつも、娘ちゃん達に教える魔法が決まり、ほっとするのであった。
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