レイナと姉妹と才能
「朝ごはんおいしいっ!」
朝、いつも通り元気に起きて食べるご飯。今日は軽食風なバーガーだ。
「この前教えていただいたまふぃん、ですか? 朝はこちらの方がいいんですよね?」
「そだねえ、朝から重たいのはねぇ」
まあそれはそれで、元気が出そうでいいんだけれども。でもやっぱり、食べやすい方が嬉しいかな。
「師匠おはようございます、今日はどんな訓練を?」
「ん」
サロスが起きてきて、食卓につきながら挨拶と質問をする。
うーん、どんな訓練……ね。
「まあ、とりあえず得意を伸ばそうかと」
「得意、ですか」
「うん」
「そういえば、娘達は魔法の才能はあったのでしょうか」
「そうねぇ、まあ、あると思う」
レナもレイもどちらも無詠唱で魔法が使えるし、まだコントロールは甘いけど、将来は有望そうに見える。
「それはよかったです、望んだ道とはいえ必ず適性があるものではないですから」
「そっかぁ。そうだよねぇ」
ゲームならまだ、職業は選べるけど、現実はそうはいかない。適性があって、適職がある。
「さて、ご飯も食べたし、訓練しよっと」
「よろしくお願いします、レイナさん」
「はーい」
というわけで、娘ちゃん達を連れて、草原にでも転移すべく、二階の部屋を訪れる。
「入っていいかな?」
「れいなさん、どうぞ!」
「どうも。今日も訓練するよー」
「はい、レイナ様」
さて、それじゃあ転移してっと……。
「今日は何にしようかなぁ」
「れいなさん、難しいの、おしえて?」
「え、うーん」
難しいの、かぁ。それって上位の魔法ってことだよね、うーん。
「まだ魔力操作が甘いから、だめ」
「えー」
「仕方ないよレナ姉、ウォーターボールすらまともに的に当たらないんだから」
「でも使えるよ?」
「使いこなせてないでしょ。使えるうちに入りません」
「むぅー」
あれは使えるのではない、出るだけだ。当たらないし威力も微妙ときたら、使いものにはならない。
「というわけで、魔力操作の訓練をしよう」
「はい、レイナ様」
「えぇ……じみー」
「基本も大事だよ」
まあ、子供からしたら、地味で退屈かもね……。
でも将来を考えたら、基本、基礎は重要だ。
「魔法はイメージ、魔力の流れもまた、イメージで変わるよ」
「いめーじ?」
「……なんていうか、こう、意識とか、印象とか、かな」
今更だけど、この横文字、通じてないね?
「意識、印象……つまり、想像力?」
「まあそんな感じかな。想像を働かせて、水が飛ぶのを、意識的に再現する感覚」
「むずかしい!!」
「難しいのがいいんでしょ?」
「そーゆーのじゃなく!」
「うーん」
まあ、言いたいのはわかるよ、でも、だからと言って上位の魔法なんて教えて、コントロールできなかったら困るからね。
「魔力操作が完璧になったら。一個だけ、最上位の魔法教えてあげる」
「ほんと!?」
「うん。でも今のままじゃ危ないからだめ」
「うー、わかった! 操作する!!」
「うん」
これで、訓練はできそうだね。
「さて、それじゃあ、この的にウォーターボールを当てるために、水を飛ばす練習ね」
「はい、レイナ様」
「うん、れいなさん」
もっと具体的な印象というか、魔力操作を教えてもいいのかもしれないけど、感性って言うのは人ごとに違うから、無理にイメージを教えても伝わらないかもしれない。
なら変な先入観なく、自分でイメージを作らせた方がいい。
さて、どちらが先に的に当てるかな。
「むー、あたんない!」
「何か工夫がいる」
「くふー?」
「例えば……こう」
「お」
レイは今度、土の魔法で筒を作った。その筒の中にウォーターボールを生成。そして。
「風魔法で押し出す!!」
「おぉ」
非効率ながら、ウォーターボールは的に当たった。
「っていうか三属性同時に使えるのかぁ」
レイはレイで天才だった。レナはこれ、できるのかな。
「レナもできる?」
「うーん、両手までなら」
「両手?」
私が訊くと、レナは魔法を使い始めた。風魔法、だねぇ。
「たつまきに、ウォーターボール連射!!」
「ちょ」
視える、私以外が水浸しになる未来が。
「えいっ」
「あっ」
私はサクッとより強い風魔法で竜巻を消し、ウォーターボールは面倒だけど土魔法の防壁で遮断した。
「むぅ、なんで?」
「危ないでしょ、なにしてるの」
「だって、レイがずるしたから」
「してない」
「うーん、ズルではないとも言い切れないけど」
「うぅ……」
多分レイが複数魔法で当てたから、自分だって、ってことだよね。
うーん。
「ごめんね、言ってなかったけど、魔力操作の練習は魔法単独で行おうね」
「なんで?」
「操作が複雑になるからだよ。レイのもそうだけど、威力、全然ないし」
「う」
当たったけど、筒を通している間に威力がだいぶ落ちていた。あれじゃあ使物にならない。
「さ、今度はウォーターボールだけで、当てる練習しようね」
「「はーい」」
こうして訓練の一日は緩やかに過ぎていく。
魔力操作できるようになったら、何教えようかなぁ。
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