レイナと自宅と同居人
「さて、ここが我が家だよ!」
「え、なに。何してくれてんのこの阿保エルフ」
我が家……もといマイハウス……という名の神域に到着した私を辛辣な一言が待っていた。
「阿保とは失礼な。間違いなく実家じゃないですか」
「マイハウスを模しているだけで、違うに決まっているでしょう」
「えー」
いやまあ、そうなんだけど、ねえ?
「この実家のような安心感、間違いない、ここは我が家」
「安心感はいいけれど、部外者ゾロゾロ連れてくるのはやめなさい」
「部外者じゃないですよ、家族です」
「いや……そういう気分の問題ではなくてね……」
「あ、あのぉ」
「「ん??」」
私とハラルド神が長く口論していると、耐えかねたのか、アイシェが声を出した。
「ここ、レイナさんの自宅、なんですか?」
「そだよ?」
「違うわよ!」
「どっちですか……」
もう、ハラルド神、変なこと言わないで欲しい。
「この人は私の家の同居人で、はら――」
「ちょい!」
「もごっ?!」
私が紹介しようとすると、ハラルド神に口をふさがれた。なにかな。
「(あんたね、この子達の前で神様ですって紹介する気?!)
「(ダメでした?)」
「(むしろなんでいいと思うのよ!)」
「(えぇー)」
ハラルド神のサラッと使ってきた頭の中に聞こえるような声に、私もなんとなくフィーリングで返す。
なんて紹介したらいいんだろうね?
「私から自己紹介するわね。私はこの阿保の同居人で、アシエよ」
「アシエさんですか。レイナさんの同居人。ご家族ではないんですね」
「そうね、この阿保の家族ではないわね」
「凄い阿保っていうじゃん」
私、そんなに阿保かな。
「あ、私はレイナさんの弟子のアイシェです」
「知ってるわ。阿保の子の御守りよね」
「ま、まあ、レイナさんはちょっと阿保ですが……流石に御守りではないですよ」
「アイシェにまで阿保って言われた……」
ショックで寝込みそうだ。悲しい。
「それで、そっちは?」
「はい、俺はアイシェの夫で、レイナさんの弟子のサロスです。こっちは娘のレナとレイです」
「よろしくー」
「……(こくっ)」
「そ、よろしく」
皆でハラルド神……もといアシエさんにご挨拶。さて、後は……。
「それで、ホントに何しに来たわけ?」
「遊びに来ました!」
「この阿保だけ叩き出していいかしら」
「ひどい!」
わたしだけ叩き出してどうする気かな。
「レイナさん、アシエさんと仲がいいんですね」
「でしょう」
「なんでそこでドヤ顔なのよ……まあいいわ。何して遊ぶ気で来たのよ」
「特には?」
「考え無しで来やがったわねこの阿保」
「また言った!」
今日阿保って言われ過ぎじゃない? 可哀そう、私。
「はぁ……仕方ないから『遊んで』あげるわ」
「おぉ?」
そういってアシエさんは私を引っ張って出入口に行く。
「どこへ?」
「外よ」
「外」
この空間に外とかあるの? 知らなかった。
「ここは……」
「荒野……ですね」
「荒野、だな」
「こーやー」
なんで荒野? 私のマイハウスはゲームでは神秘的な森の中だったんだけど?
「あの扉は細工してあって、好きなところに飛べるのよ」
「凄っ」
「で、これから遊んであげるわ」
「こんなところで? 何をして??」
「ふっ、それは……こうよ!!!」
アシエさんは言いながら、どこからか出してきた蛇腹剣を振りぬいてきた。
「あぶなっ!」
「ふん、ちょっとストレス発散に付き合いなさい」
「そう来たかぁ……」
子供もいるのに、遊んであげるがこれって、なんていう戦神だろう。
「お子様は観賞してなさい、残りの三人はまとめて遊んであげる」
「え!? レイナさんと……私達ですか?」
「レイナさん相手にそこまで言えるなんて……あの、レイナさん、この方は?」
「う、うーん」
神様とのお遊びの勝負かぁ……。
「まあ、本気で行っていいよ。私も本気出すね」
「え…………師匠が本気を?」
「レイナさんが……なるほど、この方、ただの同居人ではないようですね」
うん、まあ、神様だし。
「本気で行きますけど、いいんですよね」
「いいわよ。私は遊ぶ程度でやるけどね」
「ぐぬぅ……言ってくれる」
これはちょっと懲らしめる必要ありかな?
「なら、行きますよ!!」
「レイナさん、支援します!」
「俺も援護を!」
「はいはい、まとめて遊んであげるから、せいぜい吠えなさい」
「がんばれー」
「がんばれ」
こうして可愛い弟子候補のレナとレイに応援されながら……。
私たち大人組はハラルド神に遊んでもらうことになってしまったのだった。
子供と遊んで欲しかったんだけどな……。
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