レイナと王族と責務
「5年後に向けて色々頑張るとは決めたけど……」
5年後、アイシェのところのお子さん達を弟子にする為に、私は5年後は暇でなくてはいけない。
となると、王族の執務、政務を執り行う代わりの人材が必要なわけで。
「どうしたらいいかなあ?」
「私に聞きますか」
宰相のアルフレッドさんに聞いてみる。どうしたらいいかな?
「では僭越ながら。お世継ぎを」
「世継ぎ……子供?」
「はい」
「嫌」
「即答ですね」
嫌だよ。だって子供だよ?
それってさ、つまりさ……。
「私は女の子の方が好き」
「それ絶対に他の方におっしゃらないでくださいね」
「えー」
別に性的に好きなわけではない。ただ可愛いものが好きなだけだ。
そういう意味で言えば可愛い男性ならいいのかな……いや、ないね?
「じゃあさ、王族を育成してみるっていうのはどうかな」
「育成、ですか」
「うん」
そもそもこの国の王族は私しかいないのだけれど、それはハイエルフに成れるまで鍛えたエルフがいないのが問題だ。
なら、鍛え上げてしまえば……あ、年の問題もあるのか。
うーん?
「ねえ、アルフレッドさん」
「なんでしょう」
「この国で一番年のエルフって何歳?」
「そうですね、大老達が2万年ほどあればいい方かと」
「まじかー」
私の感覚だと三万年は必要な感じだ。一万年も足りない。どうしようかな。
「でもまあ、やってみるか」
「何をでしょう」
「大老を王族に育て上げます」
「はい?」
私は疑問符のアルフレッドに説明をする。
「……なるほど、ハイエルフ、王族になるのにそのような条件があったとは」
「でまあ、それを可能にするのは私の直接の訓練だけなんだよね」
「通りで、ハイエルフが存在しなくなるわけです」
まあ、ハイエルフの消失は魔王の仕業らしいけど、そこは今どうでもいいや。
「ってなわけで、大老達を集めてくれる?」
「承知いたしました」
そんなこんなで、私は大老達を王族に仕立て上げ、自分は責務から逃れるという算段を付けた。
「イチジョー陛下。ご機嫌麗しゅうございます」
「ん」
大老と対面で話すのはかなり久しぶり。こんな堅苦しかったっけ。まあいいや。
「単刀直入に用件を伝えます。貴方達を王族に迎え入れる為に私の訓練に参加しなさい」
「王族に迎え入れる、ですか」
大老の一人が声を上げ、訝しむ。
他の大老も同じような反応だ。
「なぜ、私達なのでしょう」
「理由はあります。ハイエルフに転生する条件に一番近いからです」
「転生……ですか?」
私はアルフレッドにもした説明を大老の皆にする。
すると。
「つまり、私たちが王族に、ハイエルフに転生することで、イチジョー陛下のお役に立てると?」
「そうですね」
「なるほど……」
役に立てるどころか、丸投げする気だけど。
「承知いたしました。この話、ぜひ受けさせていただきたく存じます」
「ん。ではまずその堅苦しい話し方をやめようね」
「え。は、はい」
「まだ堅いけど、うん、まあいっか」
弟子にする以上、私は堅苦しいのは嫌だからね。
「これから貴方達は私の弟子。私は弟子とイチイチ王族としての堅苦しい格式を気にした話し方はしないよ」
「は、はい」
私の急な変化に戸惑う大老達をよそに、私は訓練メニューを発表する。
「まず私の分身と戦う訓練かな。一番経験値になりそうだし」
「分身、ですか」
「そ」
そんなわけで私は彼ら彼女らを連れて、訓練場に移動する。
大老は総勢5名。なんとも少ないが。これでやるしかないよね。
「さて、それじゃあ、始めようか。ファントム」
「おぉ!」
私の魔法に驚く大老達。ここから起こる苛烈な訓練に、付いてこれるかな。
アイシェ達にすらファントムを使った訓練なんてしてないしなあ。
「各々武器を持って、戦闘訓練を開始するよ」
「「はい!」」
ちなみに大老だけど、みんな見た目が私よりずっと年上だ。
ハイエルフになると若返ったりするのかなぁ……。
そんなことを考えながら、私は大老王族化計画を進めるのであった。
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