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レイナとアイシェと決闘

「ルールはどうする?」


 アイシェと力試し? 決闘? をすることになったが、とりあえず最初にルールくらいは決めとかないとね。


「最低限、殺しは無しだけで」

「んじゃあこれ使おう」


 私はルーンで非殺と書いた木刀を渡す。


「これを使えば殺しはできないよ。ケガはするだろうけど」

「そのくらいなら、覚悟の上です」


 あえて非殺傷にしなかったのはケガもしないなら好きにできると思われても困るからだ。

 怪我くらいはするよ、って言っとかないとね、何するかわからないバーサーカーさんだからね。

でも最低限殺しなしだけかあ。魔法使っていいのかなぁ。ケガじゃすまないよねぇ。


「それでは師匠、お互いその木刀で戦うということでいいですか?」

「うん、いいよ」


 私も非殺の木刀を構える。

 魔法は無しってことでいいはず。木刀で戦うって言ったからね。

 すると。


「レイナさん、待ってください」

「ん?」

「レイナさんは元々二刀流で戦いますよね?」

「うん」


 よかった、魔法の話じゃない。


「なら、二刀流でお願いします、あと魔法もアリで」

「え、うん」


 そっか、本気でやって欲しいんだね。うんうん。相変わらずだなあ。

 でも魔法はなぁ……。


「それではお互い、準備は」

「いいよー」

「問題ないです」

「それでは――」


 私も二刀流で構えて、アイシェも木刀を構える。

 サロスの合図で開始するつもりだ。


「はじめ!」

「モノ・ト・メルロン」

「イデア・オーバーロード!」


 お互い初手から本気だね。まあ、私はこれ、敢えて口にしなくてもある意味常時発動型だから、あんまり意味ないけど。


「はっ!」

「おっとっと」


 アイシェの鋭い突きから始まる連撃をギリギリのところで躱し続ける。


「つっ、それなら!」

「お」


 今度は最高速の連撃から緩急をつけた連撃に変更だね。


「うんうん、悪くはないんだけどね」

「まだまだ!」


 緩急がついた分、手を出せる時間はあった。

 でも今は、その時ではない。

 私に見えている勝利の未来は、ここで手を出せとは言ってない。

 その後しばらく攻撃を捌き続ける。ひたすらに避けて、いなす。そして。


「はぁ、はぁ、はぁ」

「うん、そうなるよね」


 イデア・オーバーロード。超越者を超えるためのスキルだが、これにもデメリットはあった。

 それは、過剰なまでのステータス向上に対する、大きな負荷だ。


「アイシェ、もう無理なんじゃないかなぁ」

「まだ、です」

「うーん」


 もうこの先の未来は数が減ってる。さっきまでは無数にあった未来も、今は選択の幅が少ない。


「まだ、ですよ。だって、まだ、レイナさんの本気を視れてないです」

「うーん」


 じゃあ、一瞬だけ本気、出すかぁ。


「ちょっとだけだよ?」

「っ! お願いします!」


 そこまで言うなら、ね。いいいよ、本気、出そうか。


「ケガじゃすまないかも」

「レイナさんなら、蘇生、してくれますよね」

「……まあね」


 そうだけど、そこまで覚悟のうえで来られてもなぁ。


「行くよ?」

「はい!」


 ちょっとお喋りしている間にも、アイシェは少し回復したようで、息が上がってない。

 これなら、少しくらいなら、いっか。


「ファントム」

「分身、ですか」

「実体あるけどね」

「……それだけですか?」

「んや」


 それだけかと聞かれたら、まだあるよね。


「イデアケラヴノス」

「つっ」

「おぉ、この人数の範囲魔法をしっかり避けてる」


 流石にイデア・オーバーロードでステータス上がってるだけあって、超人的な回避能力だ。


「単発の魔法なんて!」

「まあ確かにねぇ……髪飾り発動」


 なら、こうするしかないかな。


「メテオ・フォール」

「流星、ですか」

「そだね」


 複数の私で同時に撃つメテオ・フォール。

 ちょっとだけのつもりがだいぶ本気になってしまった。

 これ全部堕ちたら、この星どうなるんだろ。


「どうするアイシェ。降参?」

「…………いえ」


 ちょっとした沈黙の後。アイシェは木刀を手に、流星を見据える。


「一応言っとくけど、私、動けるからね?」

「そうですよね、流星に対処していると、レイナさんに対応できない。かといって無視もできません」

「そだよねぇ」


 流石にそれはわかってるようだ。でも、それでも諦めない。

 未来は……今でもしっかり視えている。


「アイシェ、強くなったね」

「はは、まだ終わってないですよ?」

「うん」


 でもまあ、視えてますし。


「新・流星斬!」


 アイシェは地上から高速で上空に飛び上がり、新しい技で流星を切り刻む。

 それも無数にあった流星を同時に、粉になるまで細断だ。恐ろしい技だね。


「まだぁ!!」

「おぉ」


 そして落下してる勢いで、私に向かって……。


「新・流星――」

「エポケー」


 時が止まる。そして。アイシェも、止まる。


「ごめんね、結局これが対策できない時点で、アイシェに勝ちはなかったんだよ」


 最初から見えていた未来。時間対策のできていない事実。これが勝敗の決定的な差だった。

 とはいえ、だ。


「どうしたら負けを認めてくれるかな……っと」


 いいながらも私はアイシェの後ろ、上空に浮遊し、アイシェの手を取り、木刀を引っこ抜く。


「これでいっか」


 剣がないなら、負けも同然だ。


「はい解除」


 時が動き出す、そして。


「斬! ……?!」


 着地する寸前に発動するはずの新・流星斬は止まり。アイシェは木刀のない腕で地面に対して受け身を取る。


「剣は……」

「ここ」


 私はアイシェの分の木刀を持って、うん、三刀流だね。


「いつの間に……」

「時間止めたからね」

「そんな、ことが?」

「できるよ?」

「……はは」


 アイシェは乾いた笑いを浮かべ、そして。


「負け、ました」

「ん、そっか」


 ついにアイシェは、負けを認めた。これで、決闘は終わりだ。

 さて、それにしても。


「アイシェ、これ、上げるね」

「これは?」

「付けたら見せてあげる」

「??」


 私はアイシェにアクセサリ―をあげた。そして。


「エポケー」


 時を再度止める。


「こ、これは」

「これが時の止まった世界だよ」

「……!」


 対峙間対策用のアクセサリーだ。あるだけで時間を止められても認識でき、数秒だが行動もできる。


「ちょうど私が一回のエポケーで止められる時間と同じくらい動けるから、完全対策になるよ」

「……決闘前に欲しかったです」

「ははは、それはだめー」


 そんなことしたら勝ちにくくて困る。


「でも、そっか、分身に、高火力広範囲魔法、流星、二刀流、そして時が止まるのかぁ。勝てないわけですね」

「まあね」


 それ以外にも、未来が視えてたり、確定できたりするんだけど、それは言わないでおこう。


「まだ、頂には遠く及ばなかったということですね」

「うーん」


 でも、私相手じゃなければ勝てた気がする。言っちゃ悪いけど、バイソンとかね。


「私は絡め手多いからね」

「ふふ、ただ二刀流でも相当強いじゃないですか」

「そお?」


 アイシェに褒められると嬉しいね、剣の腕だけなら、私より上だと感じたし。


「アイシェの子なら、この上を目指せるのかもね……」

「そういう手もありますか」

「まてまて」


 冗談で言ったのに、私越えをさせようとするアイシェ。怖いなぁ。


「冗談ですよ、子供がそう望む未来があるなら、別ですが」

「そっか、そだね」


 子の未来は親の物じゃないもんね。流石アイシェだ。


「さて、負けたわけですし、これは返しますね」

「いいよ、あげる」

「いいんですか?」

「いいよ」


 もしかしたらアイシェの子が、これを引き継いでリベンジマッチに来るかもだからね。

 そのくらいはサービスだ。


「今回いい戦いをしたご褒美ってことで」

「全然善戦できた気がしないのですが……」

「あはははは」


 そんなことはない。結構いい勝負だった。久しぶりに面白かった。


「そろそろ時間が動き出すね」

「長いですね、時止め」

「凄いでしょう」


 私は誇らしげに胸を張ってみる。


「流石です、レイナさん」

「お、おぅ」


 冗談で言ったのに、褒められちゃった。


「サロス、私、負けてしまいました」

「見てたよ。すごい力だったな」

「サロスにも視えてない時間も、あったんですよ」

「? そう、なのか?」


 サロスは時止め、視えてないもんね。


「さ、かえろ」

「そうですね」

「はい、師匠」


 こうして私とアイシェの決闘は終わった。

 後は帰るだけだね! 帰ってアイシェの子たちと遊ぼうかなぁ。遊べるかなぁ。


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