レイナとエルフと王族
「今日も元気に暇してますっと」
結婚式が終わってから二年。
私はエルフの国に移り住んでいた。
理由は二年前にさかのぼる。
ある日やってきたエルフの国の使者が、私にエルフの国の王族として国に入って欲しいとお願いをしに来たのだ。
なんでも王族を失ったエルフの国を他国が国として認めず、里扱いされている。
でもって困った末にそういえばハイエルフいたなぁと思って探して私の仮住まいを見つけたらしい。
「でもって、今日も今日とて仕事しますっと」
暇だと手紙に書いておいて、仕事しますというのもなんかなぁだけど、一応仕事はある。
あるんだけど。
「イチジョー様、執務の時間です」
「はーい」
呼ばれて部屋を飛び出す私。ちなみに最初呼ばれたとき、久しぶり過ぎて「誰?」ってなった。私だった。
さて、手紙は後で続きを書こう。
「今日の執務は?」
「謁見対応をお願いいたします」
「またかあ」
知ってたけど、ここ最近これしかしてない。
なので、暇……というより、退屈なのだ。
「ま、いいけど」
これで何もしなかったらより退屈なので、良いということにしている。
「イチジョー陛下のご登壇です」
私はいつものノリの良い感じ……自分で言うのもなんだけど。それは無しにして無言でスッと玉座に座る。
「して、何ようか?」
「あぁ、イチジョー陛下、どうかお聞き届けください――」
ちょっと偉そうに、話を聞く私。これも最初からではない。
最初はいつも通りふるまってたんだけど、王族らしくないと窘められ、矯正され今に至る。
いやあ、堅苦しいの苦手なんだけどなぁ。
「ふむ……なるほど、夫との不仲か」
「不仲なんてものでは――」
これ、王様に相談すること? 家庭内の問題は家庭内かそういうの相談できる窓口でして欲しい。無いのかな?
「モノ・ト・メルロン」
「?」
今の今まで流暢に旦那様との不仲を語っていた女性が「何?」って顔をする。
要は彼女は旦那をいさめて欲しいとかではなく、処罰して欲しいということだった。
でも本当にそれでいいのかなあと思ったから、未来を視ることにした。
で、結果は。
「この女性の言っていることはすべてが本当ということではなさそう」
まあそもそも、目の前にいる女性の感情値とか、色々見えてて、それを見るに感情的になってあることないこと言っている感じだった。
なので信用できないから未来を視て、そこで旦那様が冤罪だと主張する未来。そしてそこで未来を視た私が冤罪を証明する未来まで視た。
なので。ややこしいんだけど、つまり端的に言えば冤罪だ。
「その方の発言、すべて真実ではないな? よってこの度の話は一度夫を交えて、宰相と相談せよ」
「なっ……は、はい」
宰相が困った顔をする。そりゃ困るだろうけど、私だってこれの相手はしたくない。
なので振った。
「以上。次」
まだ何か言いたそうな女性を、兵士が連れていく。うん、残ってもいいことないよ。
その後もこんな感じで、まあいわゆる簡易裁判的な物から、町の困りごと相談まで、幅広く国民の愚痴を聞いて……。
「つ、疲れたぁ」
「お疲れ様ですイチジョー陛下」
宰相が私に声をかける。まだ何かあったかな?
「まだ何かあった? 手紙書きたいんだけど」
「それなのですが」
「ん?」
手紙の件? なんだろ。
「このようなお手紙が届いております」
「んー?」
私は送り主を見る。アイシェだ!
「何々、第二子誕生のご報告……んっ?!」
結婚から二年、子供ができ……あれ? 第二子?
「第一子はいずこに」
「その報告の手紙でしたら、一年前にあったかと」
「あれ、そうだっけ」
ってことは年子かあ、仲良し夫婦だなぁ。
「って違う! 会いに行かなきゃ!」
「困ります」
「困っていいよ!」
「断言されますね……」
宰相が困ろうが知ったことではない。これは一大事、妹分の一大事に駆け付けない私じゃないよ。
え、第一子の時に駆け付けてないじゃんって? それはそれ!
「転移、アルケの街!!」
「はぁ……」
宰相のため息が聞こえるけど気にしない。
私は即座にアイシェの元にへと向かうのであった。
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