レイナと鍛冶と超越剣
今回いつもより長いですが、お付き合いいただけますと幸いです。
「どんな剣がいいかなぁ」
鍛冶場に入った私は早速どんな剣を作るか考える。
真っ先に思い付いたのはソードビットだった。
「これ、複製できるかな」
できるんだったら手っ取り早い。私と御揃い……いい感じ?
結婚式に刃物とか、結婚式に姉と御揃いの剣とかいうセンスのなさは今はいい。
贈ると決めた以上は最上の物を、だ。
「鍛冶スキル、複製……できないかぁ」
まあ神様? からのギフトだしねえ、無理かぁ。
「なら似てるの作ろうかな」
とはいえ似てるのを作るくらいなら、ちょっと遊び心を混ぜたい。
というわけで……。
「鍛冶スキル。作成。素材設定、ルーン付与。っと」
さてさて、これで後は……。
「カンカンカンッと。完成~」
早速1本完成だ。これを後……6本。
「カンカン、カンカンっとね~」
サクサクと次の剣を打つ。打つときにルーンと魔力を込めて、一本一本最上の一振りを。
「さて、これで……7本の剣を統一作成して……」
7本で一対の剣の完成だ。
「後はサロスだね」
サロスには……。
「鎧かな」
アイシェが死なない人がいいとか言ってたし、死ににくくなるように鎧にしよう。
「カンカン、カンカンカンっと」
今度もルーンと魔力を込めて最上の鎧を打った。
「さて、これで帰って渡すだけだね」
そう思い、帰ろうとすると。
「まった」
「はい?」
ここの神様。ハラルド神から待ったがかかった。
「あんたそれ、とんでもない剣よね」
「ん? そうですか?」
「ぶっちゃけあんたのビットより強いわよ」
「はあ」
まあ、そうかもしれない。けど、ビットにはまだルーンを書いてない。
書いたらどっちも同じようなものだ。
「それ、地上に持ってくのよね」
「まあ」
「誰に渡す気なのかしら?」
「アイシェですね」
「アイシェ……? あぁ、あの子」
ハラルド神は「うーん」と考え込んだ後、一人何度か頷くとまたしゃべり始めた。
「あの子に渡すのはいいけれど、こういうの、これっきりにしなさい」
「はあ」
「あのね、わかってないみたいだけれど、その剣、あの世界を滅ぼせるレベルの力が備わっているわよ? そんなものをおいそれと地上に送り出すことは、神としても容認はできないわ」
「むぅ」
そんなに危険なものかなぁ……まあ、ちょっと、ちょっとだけ思ってたよりいい出来だけど。
「だから、そうね、信頼できる子なのよね」
「はい」
「だからその子が使うのは許すわ」
「おぉ」
「でも、その子が使い終わったら……回収しなさい」
「…………はい」
その言葉の意味、わかったけど、あんまりわかりたくない言葉だった。
「じゃ、そういうことで、いってらっしゃい」
「いいんですか」
「いいわよ」
「じゃあ、行ってきます」
そう言って私は神域から地上に戻った。
「アイシェーただいまー」
「あ。レイナさん」
鍛冶にそこまで時間を使ったつもりはないけど、さて、今はどういう状態かな。
「なんていうか、一瞬で戻ってきましたね、師匠」
「へ?」
そうなの? そっか、神域とここだと時間の流れが違うのかな……。
「それで、レイナさん」
「何?」
「その、周りに浮いている剣、なんです?」
「あーこれ」
私はアイシェに剣の説明を始める。
「これはね、セットネーム『ヘブン・ソード』っていう七本一対の剣でね」
「へぶん・そーどですか?」
「うん、横文字にしたの失敗だったね」
相変わらず横文字に弱い世界である。困っちゃうね。
「一本一本説明しとく?」
「え、あ、はい」
というわけで、私の打った剣を紹介する。
「まずはこれ」
「小さ目な剣ですね、それに二本あります」
「うん、でも切れ味はダントツでこれだね」
「そうなんですか?」
「うん、名を神動剣・シグルスダガー」
「しんどうけん」
シグルスダガーは横文字だ。何言っているかわからなかったかな。
「刃の部分が高速振動して相手を切り刻む剣だね」
「振動する意味、あるんですか?」
「え。うーん、なんとなく……?」
「なんとなく、ですか」
こう聞かれると、なんで振動するのかって言うのは……うーん。
「つ、次行こうか」
「あ、はい」
お次は……これ。
「こちらも二刀流にどうぞ。二本のビームソード」
「びーむそーど」
これは完全にわかってないね?
「熱で切り裂く剣だね」
「熱で、ですか」
「すごーく熱いから、扱いに注意」
「そうなんですね」
とはいえ、この世界にも炎の剣とかあるし、似たような物かな?
「次、5本目。遠近対応。ライフルブレイド」
「らいふる」
これもわかんないかぁ。
「銃のことだね」
「銃、ですか?」
「うん、ここのね、引き金。これを引くと剣の先から遠距離攻撃が飛び出すよ」
「な、なるほど」
今は結婚式前だし、試すのは今度かなぁ。
「後の2本はなんです、師匠」
「次は6本目、龍殺剣ジークフリート」
「なんか物騒な名前ですね……」
「それにやたらと細長いな」
これにはサロスも食いついた。無茶苦茶細いからね、この剣。
「アイシェの使ってるメイン武器がエストックだからね、似てるように細剣として使えるよ」
「なるほど、ありがとうございます」
まあ、これはほとんどただのよく切れる剣だ。ほとんどね。
「最後。7本目はシールドソード」
「これは……盾と剣、ですか?」
「そ、盾形の剣だね」
盾、カイトシールドのような見た目で、でも淵は刃になっている。
「これはどんな能力が……」
「イージスっていう盾のスキルが使えるよ」
「いーじす」
これもわかんないかぁ。わけわからないモノ渡された感じになっちゃうね。
「まあ、最強の盾であり、よく切れる盾だよ」
「な、なるほど」
「これをアイシェにプレゼントするね」
「いいんでしょうか」
「いいよ。私のソードビットみたいな感じで、おそろいだね」
「ありがとうございます、レイナさん!」
アイシェが喜び受け取ると同時、ヘブンソードが、動いた。
「え、ちょ、あの、レイナさん?!」
「ん?」
「なんか、こう、ガチャガチャして、変形しているんですが?!」
「そだねえ」
「そだねえって?!」
私は説明していなかったことに気づいていたが、驚くアイシェが見たかったなんて理由は決して口には出せない。
「最初に言ったけど、7本で一対の剣だからね、合体くらいするよ」
「合体?!」
そう言っている間にも合体は終わり、そして。
「こ、これは」
「これが真の姿、超越剣ヘブンズ・オーバー・ソード」
「超越剣……」
色々な物を超越しているという意味で、なんとも安直な名前だけど、いいよね。
「あの、なんか、変形した後、とんでもない魔力を感じるんですが」
「そりゃまあ、一個一個が神の域の武器だからね、七本集まれば神の域すら超えるよね」
「超えちゃ困ります!!」
神域で作った、最上の一振り、それは神をも殺しうる剣で。
それが七本集合した最終決戦兵器ともなれば、神を殺すどころか。たやすく灰塵に帰す剣となる。
ゲーム時代はよく一生懸命作った剣で邪神レイドとか行ったなぁ。ソロだけど。
「あそうだ、それ、レーザー出るから気を付けてね、ビームともいう」
「れーざー?!」
アイシェはいいながら、どう気を付けていいのかわからない様子で。あ。それは不味い。
「アイシェ、それは引いちゃ駄目だよ?」
「何をですか?!」
「引き金」
「これですか!」
アイシェは言いながら引く。テンパってたんだね。あはははは。
でもって、そんなことすればレーザーが出るわけで。
「なんか出た!?」
「レーザーだよ」
そのレーザーはアイシェが構えていた方向、斜め上、虚空を切り裂き、そして。
「あ、やば」
あの方向、太陽に向かってるね。あのままだと太陽が消し炭……もとい消しガスになってしまう。
「エポケー」
私は時を止めて対策を考える。
うーん。
「とりあえずこれの向きを変えて。固定して。あっちのレーザーは……」
どうしようね、私でも止められるか、ちょっと微妙だ……。
うーん…………。サロスの鎧、借りるかあ。
「このレーザーの先にサロスの鎧を固定して。受けさせれば完璧」
と、そこまでしたところで、時が動き出す。
「ひやぁああああああああ?!」
「師匠?! 師匠はどこに!!」
「ここだよ?」
「師匠、これを止めてください!」
「もう止まるよ」
レーザーを打ち切ったヘブンズ・オーバー・ソードは止まり。
アイシェは涙目でこっちを見ている。
「うん、ごめん」
これは悪いことしたね。でも、まあ何とかはなったし。
「あそうだ。サロスにはこれね」
「これとは」
「今降ってくるよ」
レーザーを止め、役目を終えた鎧が降ってくる。
「これは?」
「名をヘラクレス・アーマー。12回まで攻撃を無効にしてくれる無敵な鎧だよ」
「は、はあ」
まあ、今一回使ったから。あと11回だけど。
「一日に一回、全回復するから、一日に12回はなんでも防げると思っていいよ」
「そ、そうなんですね」
アイシェの剣に比べたら微妙だったかな? でもあの剣の攻撃を止められるほどの防具だし、見劣りしないと思うんだけどなぁ。
「ありがとうございます、師匠」
「いえいえ、どういたしまして」
これで二人の結婚祝いは完璧だね。あとは式を楽しむだけだ。
こうして私は二人に結婚のお祝いを渡し、結婚式に参加するのであった。
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