レイナと夫婦と祝儀
「暇だなぁ……」
暇すぎて神様のところに行ってから半年ほど経つ。
アイシェとサロスの中は順調で、そんでもって私は二人に構ってもらえず暇で。
そんなときだった。
「何、この音」
ドアをノックする音よりちょっと軽めな、何かをノックする音が聞こえる。
「あ、窓か。え、なんか鳥がめちゃくちゃ突っついてる」
怖い。何あの状態。ホラーなんだけど。
「ま、まあとりあえず暇だったし」
そんな言い訳をしながら、鳥のノックに応えてみる事にした私は、窓のそばまで行って恐る恐るそれを開け放った。
「襲わないよね」
「くるっぽ」
「鳩じゃん」
これなら襲われないね、多分。平和の象徴だし。
で、鳩っていうと、アレかな?
「あ、なんか持ってきてる」
これはいわゆる伝書鳩というやつだ。ホラーではなかった。
「ありがと。もう戻っていいよ」
「くるぽ」
私の言葉がわかるのか、そのまま帰っていく鳩。
「で、中身は」
私は手紙を改めて読む。お、アイシェからだ。
内容は…………ふむふむ、結婚ねーしかもできちゃった婚かあ。
…………はぁ?!
「あのアイシェができ婚? しかも、え、結婚式明日じゃん!!!」
伝書鳩、相当遅いみたい。まあアイシェ達のいるアルケの街はここから遠いから仕方ないのかなあ?
「善を急いだ可能性もあるけど」
まあそこはどうでもいい、問題は結婚式。
これは絶対出席したいイベントだ。
で、さらに問題は……。
「この世界の結婚式のルールが何一つわからない……」
そもそもが元は高校生な私である。こっちに来てから日が経って中身はもう大学生くらいではあるが、それでもいきなり住む世界も変われば社会常識は異なるわけで。
「むむむむむ」
こうなればままよ。なるようになれとしか。
「ご祝儀どうしようかなあ」
私はこの世界の常識に疎い自信がある。なのでお金とか、物とか、何を渡せばいいのかわからない。
「二人とも戦闘狂だから装備でも送ろうかな」
うん、これで違ったら怖いからお小遣いも足しといて……。
「これなら完璧?」
プランを練った私は、早速アルケの街に行こうと旅の準備をする。
といって、移動は転移魔法じゃないと間に合わないから、転移するけど。
「そんなわけで、やってきましたアルケの街」
私は街の外に転移すると、門を目指す。
アイシェとサロスは一緒に暮らすのにアイシェの家族もいるこの街を選んだらしい。
ついでとばかりに書いてあった情報だとサロスは身寄りがないらしく、どこでもいいとか言っていたそうな。
「勇者の末裔ってくらいだから、何かしか事情はありそうだけど……」
そこに突っ込みたい感じは全く無いので、スルーすることにした。
そんなこんなで街に入場。私はアイシェ達の暮らす街の外壁側を目指す。
「ここかぁ」
結構立派な、二階建ての一軒家だった。このあたりには無い感じなので、ちょっと目立つ。
「さてさて、たのもー」
私は家のドアをノックする。
すると中からドタドタドタドタといっぱい音がして。
「「お待たせしました!!」」
「お、おぉう」
サロスとアイシェが一緒に出てきた。何も二人で出迎えなくても。
「もしかして結婚式に出てくださるんですか?」
「そうなのですか、師匠」
「まあ、そりゃあ大事な妹分と弟子の結婚式だからねえ」
式が急すぎて、私じゃなかったら間に合わなかったけどね。
「そうですか、ありがとうございます、レイナさん。ささ、中へどうぞ」
「そうです師匠、立ち話もなんですから」
「ありがとー」
私は二人に進められるままに家に入る。そして案内されるまま食卓らしき席に着く。
「でさ、結婚祝いで欲しいモノとかある?」
「レイナさん、直球ですね」
「流石師匠」
「いやいや」
流石の意味わからないけど、いい意味ではなさそうだ。
まあこんな軽口言い合えるのも、仲いい証拠だからいいんだけどね。
「そうですね、レイナさんから頂けるなら、どんなものでも嬉しいです」
「そっかあ」
そういう風に思ってくれてるなら、最上のものを渡してあげたい。
となると……。
「結婚式までには、戻ってくるね」
「え、どこかに行かれるのですか? 今晩はここでゆっくりと……」
「いやあちょっとした用事がね」
そんなわけで私はまたまた転移で移動する。
行先は…………。
「きちゃった」
「あんたシュレリアのところにもそのノリで行ったらしいわね」
私のマイハウスだ。
いるのはそう、ハラルド神だ。
「ちょっと鍛冶場借りますね」
「鍛冶場を使いに神域に来る奴初めて見たわよ」
そんなわけで、私は最上の一振りを打つと決めた。
二人は喜んでくれるかなぁ?
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