レイナとハイエルフと暇
「うーん! さいっこうに暇!!」
月日流れること半年ほど。サロスとアイシェの恋仲は順調であり、非常に喜ばしい。
アイシェのご家族も、身柄の無事と安全を王に約束させてからお家に帰した。
で、そうなると私は一人なわけで。
「久々の一人……か」
暇、退屈、寂しい。
もうね、あの騒がしい日々が懐かしいわけですよ。
ここまではイベントたっぷりだったのに、急に事件とかイベントなくなるし。
もうね、暇なんですよ。
「うーん」
やりたいこと、というか、やれたらいいな? 的なことはある。
でも実際できなかったらなぁ、とか、色々考えて実行に移していない。
暇だ暇だという割に、何も行動しないのだから怠惰もここに極まれりといったところだ。
「さて、そろそろ動くかぁ」
私は部屋の片隅から立ち上がると、転移魔法を使う。
行先は……。どこだろうね、あれ。
「魔法はイメージだからね」
どこ、って名前はわからなくても、イメージを強く固めれば……。
「えいっ」
私は転移に……成功した。
「な、なんですって」
「きちゃった」
おあつらえ向きに真っ白な空間、佇む……佇んでないな。ごろごろしてる。ま、いいか。一人の女性。彼女は私の急な来訪に驚いているようだ。
「そんなかるぅいノリで神域にこないでくださる?」
「いやあ、あはははは」
「笑えばいいとこじゃないですわよ」
食の神であり創造神ともされているシュレリア様の元に来てみたのでした。
「まったく。それで? どうやって来たかは……転移?」
「そうですね、よくわかりましたね」
「まあ、魔力の名残でなんとなくですわね……それで? 何の御用かしら」
何の用。かあ。
「暇なんですよね」
「ごめんなさい、ぶっとばしていいかしら」
「暴力反対!」
怖い怖い、神様短気だなぁ。
「暇なのは本当ですけど、本当は用件は違います」
「はぁ。じゃあ聞こうかしら?」
「はい、私、その、レベル、あがったみたいなんですけど」
「え」
そう、実はこの半年……というか、この世界に来てからの積み重ねなのか、つい半年前にレベルが上がった。
「それ、いつですの」
「アイシェの剣を止めたらなぜか急にレベルアップしました」
「……ふうん」
神様は考え込む、そして。
「あのこ、超越者を超えるスキルを持ってましたわね?」
「そうですね」
「つまり一時的に貴方より強い、まあステータスだけだけれど、強いわけですわね」
「ふむふむ」
「で、それに勝った……と言っていいのかわからないけれど、それがトリガーかもしれませんわね?」
「なるほど」
確かにそれはありそうだ。魔王を倒したり、斬ったりもしたけど、アイシェに勝った? のがトリガーか。
「それで、何か変化は?」
「それが、とんでもなくステータスが上がりました」
「……まあ、本来超越者、これ以上ないほどの力を持ったものが限界を超えてしまったのだから、その先は本来制限……いえ、際限がないんですわ」
「際限」
なんで制限って言葉と言い換えたんだろうね。
「まあ、貴女なら悪いことに力を使ったりしないでしょう」
「まあ、使う気ないですけど」
「ならよしですわ」
「え」
なんかこの話、終わり?
「とりあえず、一言いいかしら」
「はい」
「次からは神殿で祈りをささげてから来なさい」
「届くんです?」
「えぇ。だから次アポなしできたら、ぶっとばしますわ。わかったら返事して帰ることですわ」
「は、はぁい」
神様、実はすごく怒ってたね。怒気が凄い。
「それと神様」
「なんですの」
「ビーフシチューの差し入れです」
「後100万年くらいいてもいいですわよ?」
「手のひらちぎれそうなくらい返しますね」
本当に食の神様なんだなぁ。
「また来なさい? 何か困ったことがあれば同族のよしみで面倒見てあげますわよ」
「ありがとうございます」
神様は神族だから、同族ではない気もするけれど。
こうして私は久しぶりにシュレリア神とお会いして、軽いお喋りと報告をしてから、差し入れを渡して帰るのであった。
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