レイナと料理長とケーキ
「ケーキを作ったよ」
「けーき」
剣聖戦を終え、魔人の一件も片づけた後。
帰路についた私達は転移魔法で王国に戻った。
すると、アイシェの優勝を祝って祝勝会を執り行うという。私は王様達ともひと悶着あったし、遠慮しようと思ったんだけど、アイシェやサロス、後なぜかついでに料理長の「出て欲しい」という圧に負けて、結局参加することになった。
で、今は何しているかというと。
「ケーキをご存じない?」
「存じ上げません」
「そかあ」
どうやら料理長はケーキを知らない様子。
私は参加する祝勝会のメインになる出し物……デザートの作成を手伝っていた。
「じゃあ……ここにレシピを出して」
「おぉ! これは……よい紙を使っていますね」
「まあ、ねえ」
よい紙……? コピー用紙だけど。この世界の紙基準だと、いい紙みたい。
「というわけで後は分業体制で行こうと思います」
「はあ」
いまだ何をすればいいかわかっていないので、そういう声も出るよね。うんうん。
「料理長には一番大変かつ重要な生クリーム作成をやってもらいます」
「ほほう、なまくりーむですか」
クリームを存じ上げないとは、この世界の食文化偏り過ぎでは。
「完成品がここにあります」
「ほお」
「で、これと同じようになるまで、レシピ通りにしてください」
「ほほう」
生クリーム作成、本当はネット通販でハンドミキサーを買った私は楽にできるけど、料理長たちに一々ハンドミキサーを貸すわけにもいかないし、人力でやって覚えてもらうこととした。
「ひたすら混ぜてくださいね」
「お任せください」
その間に私はスポンジ部分を作成することにして……隠れて作り置きのスポンジを出した。
「後は生クリームを待つだけなんだけど」
料理長、必死にかき混ぜている。
あれ、いつ終わるかなぁ。
「あの、料理長」
「は、はい、なん、でしょう」
「変わりましょうか」
「いえ、これも、料理の道の、探求ですから!」
「はあ」
どうやら私から色々学びたいという意思が未だにあるらしく。
これも修行と言わんばかりだ。
「どうしよう、暇」
ただ料理長の横で生クリーム作成を見ているのも暇というもの。
うーん。かといって「レシピ通りにね」と言って帰ってしまっていいものか。
「うーん、料理長」
「なんでしょう?」
「レシピ通りにできそう?」
「えぇ、まあ、なんとか、形になるかと」
「そっか」
んじゃもいいや、帰ろ。
「じゃ。あとはレシピ通りに、私一旦帰るから」
「え」
私は驚いた様子の料理長を置いて、転移魔法でアイシェ達の待つ森の中の家に帰るのであった。
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