レイナとバイソンと魔神
今回少し長めです。
「それで、話って?」
バイソンに連れられてやってきたのは応接室。
二人でソファに腰かけて話を始める。
「なに、懐かしい顔にあったからな、昔話でもと思ってな」
「なんだぁ」
昔話かぁ。よく考えたらこっちに転生してからもう何年も経っている。
そういう意味では、ゲームとして遊んでいたのは昔話と言えなくもない。
「ただその前に、ひとつだけいいか」
「何?」
「お前、この世界に何のために呼ばれた?」
「ん?」
この世界に何のために呼ばれたか? 何のためにって。
「わかんない」
「お前にでもわからないこと、あるんだな」
「なにそれ」
バイソンはちょっと残念そうだ。どうしたんだろ。
「俺はな、この世界にはつい最近来たんだが……自身の種族が魔族だったからか、このあたりに飛ばされてな。最初は戸惑ったもんよ。でも、美魔女王陛下に目を付けられてからは、こっちで用心棒みたいなことをしてたのさ」
「ほほう」
目を付けられたって言い方からして、あまりいい出会いではなかったみたいだねぇ。
「何のためにここにいるのか、理由もわからねぇ。せめているべき場所、理由が欲しいと思ってな」
「で、私に相談?」
「というか、お前なら何か知ってるんじゃないかと思ってな」
「なんで」
私なら知ってそうって、どうして思うかな。
「理由はいくつかある。まず、この世界の神々は元ハイエルフだという話だ。だからお前なら繋がりがあって、何か知ってるんじゃないかとな」
「ほほう」
それはチラッと聞いた記憶があるけど、だからと言って知っているとは限らない。
「バイソンも神様に呼ばれた口なの?」
「いや、俺は……どうなんだろうな」
バイソンははっきりとは言わないが、わからないといった様子を見せる。
「どしたの」
「美魔女王陛下が言うには……奴が魔神召喚の儀を行った日あたりが、俺の転生日、なんだよな」
「へぇ……」
魔神、その話、興味があるね?
「美魔女王は魔神、呼ぶんだ?」
「そうだな、理由はいろいろあるんだろうが、ま、いい理由ではないだろうな」
「そかぁ」
魔神、依り代となりそうなのはアイシェだけど、大丈夫かな。
今になってアイシェをあそこに置いてきたことに後悔しかけるが、まあアイシェなら大丈夫だろうという気もする。あそこには剣聖達もいるし。
「それで、バイソンは美魔女王に呼ばれたのか、神様の召喚なのかわからなくて、聞いてきたんだ?」
「そうだ。何か知らないか」
「んっとね、美魔女王は関係ないと思うよ。魔神の依り代なら、他にいるから」
「なんだと?! ッチ、謀りやがったか」
バイソンは憤慨してズドンと机を叩いて粉々にする。
凄い筋力だなぁ。
「で、その依り代は?」
「アイシェだよ」
「アイシェ……? あぁ、お前の弟子か」
「そ」
だから大丈夫、そう言おうと思ったら。
「なら戻らねぇとな。美魔女王が何するかわかったもんじゃねぇ」
「おぉ」
信用無いねぇ、美魔女王。
「その前に私からもいい?」
「なんだ」
「ハイナは知ってるけど、フレームキラーって何」
「あん?」
バイソンは何言ってんだコイツって顔をした。
「今はそんなことはなしてる場合じゃねぇ気がするんだが……まあ、いいか」
「で、なに?」
「ハイナはご存じのとおり『ハイエンド廃人レイナ』の略だが」
「いや、知らないけど」
廃人的な扱いなんだろうなとは思ってたけど、ハイエンドて。
「フレームキラーってのは、お前の特性というか、才能から来た二つ名だな」
「ん? あぁ」
そうか、もしかしなくても、アレか。
「こっちはわかるんだな」
「まあ、私の体質の話だし」
大して面白い話ではなかったね。ま、いいや。
「じゃ、アイシェ達の様子、見に戻ろうか」
「そうだな」
こうして私達はお互いの……? あれ、私バイソンの話聞いてばっかりじゃない? まあいいや、お互いの境遇について話し。フレームキラーの由来も知ったところで、アイシェ達の元に戻ることにした。
「で、バイソン。もしなんだけど、アイシェになんかあったら、美魔女王の首とってもいい?」
「お前、さらっととんでもねェ事言うな。まあ、魔人復活にかかわることだ。ためらう暇はないだろうな」
「そか」
この言い方だと、私の味方をしてくれると思ってよさそうだね。
「さてさて、中はどうなってるかな」
アイシェ達の待つであろう謁見の間、その扉の前についた。
ちょっと深呼吸。そして、扉を開ける。そして。
「っ! ソードビット!!」
「おい待て!!」
目の前に映った光景に、私はソードビットを出し、手に握り、美魔女王に斬りかかる。
「ぬう! お早い到着だな、流星の魔女殿」
「アイシェ達に何をした!!」
「何、魔人の依り代に良さそうな『魔王殺し』がいたからな、身柄を頂いただけのこと」
「そう、なら……!」
コイツは敵だ。
部屋に戻ったら、アイシェ達が全滅していた。
全員床に倒れて、いた。
「身体能力強化! 髪飾り発動! ソードビット展開!」
コイツはここで倒す。全力で。
「エポケー!」
時を止め、その隙に首を落とそうと思った。でも。
「時間魔法か、効かぬよ」
「どうでもいい!」
私はそれでも切りかかる。
美魔女王は避ける。けど……誘導はできてる。
「そこ!」
「ぐぬぅ!」
私の一撃が入り、美魔女王の両腕が肩から飛ぶ。
「終わり!!」
「ま、まて!」
「何!!!!!」
ここでバイソンの待ったがまたかかる。
何かなあ。今ちょっとイライラしちゃってるんだけど?
「ま、まず状況確認だろ!! 相手は一国の王だぞ! いきなり切りかかって腕飛ばす馬鹿がいるか!」
「知らない。アイシェをやったって言ったじゃん!」
「そりゃ、そうだが、それ以上は必要ないはずだ!」
「…………っ。そう、だね」
ついカッとなって首まで飛ばすところだった。
「ふ、はは、この私にここまでのことを、たったの数秒で出来る化け物が魔女とな」
「何、それ」
「戦闘スタイルもそうだが、どうみても剣士だと思ってな」
「魔技剣士だし」
流星の魔女は神からもらった力を行使した結果付いた名だ。
本来はルーンブレイダーだ。
「これでは……魔神を呼び出しても、消滅させられるのがオチか」
「そうだぜ、美魔女王。このハイナなら、間違いなく魔神ですら葬る」
「ハイナいうな」
バイソンなりに場を和ませようとしたのかな? なごむ必要性、ないけど。
「とりあえず、アイシェ達回復するね」
「おう」
「すきにするがよい……」
許可も出たのでオールヒールとオールキュアをかけてみる。
「っ? これは……どういう」
サロスが起き上がる。他の剣聖達も。でも。
「アイシェ?」
「……」
アイシェだけが起き上がらない。なんで?
「ふ、ふふ、流星の魔女でも、できぬことはあったようだ」
「どういう意味かな」
私は笑っている美魔女王を見る。
「言ったはず。身柄を頂いたと。転がしただけと思うか?」
「つまり、依り代として扱ったってこと?」
「その通り。もう、魔神化が進んでいるのよ」
「ははーなるほどー」
私はそういうと、美魔女王の首を……。
「まてまて! キレるな! 冷静になれ!!」
「まだ斬れてないよ?」
私は美魔女王の首を指す。
「そっちの斬るじゃねぇ! 意外と冷静か!!」
そう、私以外と冷静。ただちょっと美魔女王を飛ばせばアイシェ戻るかなと思っただけ。
「で、どうすればいいかな」
「魔神化したらもう止める術はない。が、魔神ってのは人を依り代にして魔人となったとき、核ができるそうだ」
「ほほう?」
「それをつぶせば、あるいは」
なるほど、核を潰せば。核だけを潰せば、アイシェは無事かもってことだね。
「わかった、任せて」
「フレームキラーの本領、見せてもらおうか」
「ははは、ご期待にそえるかなあ」
私は笑いながら、ソードビットをもう片手に持つ。
本来の戦闘スタイル、二刀流だ。
「さて、久しぶりに全力戦闘、行きますか」
魔人の依り代になったアイシェが起き上がる。魔人の復活だ。
まずは様子見。核がわからないで切りかかっても、傷つけるだけだからね。
こうして、神の危惧した通り、魔神は魔人として降臨。私が直接対決することになったのだった。
ご読了ありがとうございました!
感想、評価、ブックマーク等頂けますと励みになります!!
次回更新は次回日曜日の21:00までを予定しております。




