レイナとバイソンと美魔女王
「此度の剣聖戦、不成立とする」
「ほぉ~」
剣聖戦が終わり、アイシェ達が転移魔法で帰還すると主催国の主、美魔女王が突如としてこのようなことを言い始めた。
「剣聖戦とはそも、代理戦争である。それがだ、みんなで仲良く帰還とは、どういう了見か」
「ふむふむ」
つまりあれだ、人死にが出なかったのが、気に入らないのかな?
そんなことをつい考えてしまう。
「バイソン、我も加勢するゆえ、此度の不手際、取り返してみせよ」
「……ふん」
バイソンと呼ばれた男がめんどくさそうに美魔女王の前に出る。
バイソン……?
「梅村じゃなかったけ」
「バイソンだ!!」
「おおぅ」
盛大なツッコみを受けてたじろぐ私。
「ッチ、相変わらずだなレイナ」
「ははは、ごめんごめん」
いっつも梅村だったかバイソンだったか、忘れちゃうんだよねえ。
「さて、それで、だ。美魔女王陛下」
「む?」
私とちょっとしたやり取りをした後、バイソンは美魔女王に向き直る。
「この女、レイナには勝てねぇ。挽回してぇのは山々だがな。無理はおススメしねぇな」
「無理だと? 我とお主で、こやつに勝てないと」
「そう言ってる」
どうやら美魔女王とバイソンで意見が割れたようだ。
美魔女王は剣聖戦の結果が納得いかないから、ここで全員倒してでも、魔族の国の勝利にしたいのだろう。
でもって、バイソンは……。
「もしどうしてもレイナとやりあうってんなら、俺はレイナにつくぜ」
「むう」
どうやらやりあう気はないらしい、私の側に付くとまで言い出した。
「そなたにそうとまで言わせるほどの力があるのか? そのハイエルフに」
「ある。こいつは規格外で、次元の違うバケモノだ。数々の異名を持ち、とんでもない力と才能を持っている。勝ち目がない」
「あらあら」
誰がバケモノかな。失礼な。同じ超越者なんだから、ステータスにはそんなに差がないでしように。
「こっちじゃ流星の魔女なんて呼ばれてるようだが、俺から言わせりゃ、流星ごときより、此奴にはほかにもっとヤベェ力がある」
「ほう、かの流星よりも、か」
「あぁ。例えばフレームキラーとか、ハイナとかな」
「っ! 梅村!!!!」
私はヤバい過去を掘り起こされて、ついバイソンを梅村と呼び、怒ってしまった。
「むう、その怒気、そのあふれ出る魔力、なるほど、バイソンの言うことは本当のようじゃな」
「ようやくわかってもらえたか」
あれ、もしかして梅村に一杯食わされた?
私が怒るように誘導して、私のこと、怖がらせよう、みたいな。
「であれば今回の剣聖戦、西方王国の剣聖、アイシェの勝利とし、我々は負けを認めろと」
「そういうこったな。このバケモノ相手にするよか、いい結果になると思うぜ?」
「…………ふう」
どうやら美魔女王も、バイソンの説得で少し落ち着いたようだ。
「それでは、此度の剣聖戦は、西方王国の剣聖、魔王殺しアイシェの優勝とする!」
「おぉー」
よかったー。アイシェの優勝だ。
「やったねアイシェ、よくやったね!」
「いえ、殆どがレイナさんのお力のおかげです」
「んん?」
なんで私? なんもしてないのに。
「レイナさんの剣のおかげですから。ありがとうございます」
「あー。ふららね。どういたしまして」
ふらら、そんなに活躍したかな? 最後ちょっと使った程度では?
「さて、それでだ、レイナ」
「おお?」
アイシェと楽しくおしゃべりしていると、バイソンが話しかけてくる。
「ちょっと二人で話がしたい、いいか?」
「ん、いいけど」
なんだろうね、二人っきりになりたいなんて言われても、ドキドキしないのは彼が旧知のバイソンだからかな?
「それじゃあ、場所を移すぞ」
「うん。ちょっと行ってくるね」
「お気をつけて」
というわけで、私はバイソンに付いて、部屋を出る。
大丈夫かなぁ、私とバイソンいなかったら、美魔女王暴れたりして……。
そんなことを思いながらも、私はバイソンと共に部屋を後にした。
ご読了ありがとうございました!
感想、評価、ブックマーク等頂けますと励みになります!!
次回更新は次回日曜日の21:00までを予定しております。




