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妹の裏切りによって婚約破棄されてしまいました。が、その後、私は良縁を得られたのです。けれど妹は幸せにはなれず……。  作者: 四季


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7話「裏切りなき人と共に」

 いや、そんなことはない。


 実際ウェボンがミレナといるのを目にした時はショックを受けた。

 そこまで大きなものではなかったけれど。

 それでも確かに、あの時は、感情が揺れ動いていた。


 悲しい記憶を思い出してしまって――ある種の衝撃を受けてしまった。


「……実は私も、なぜか、ショックを受けていました」


 私は心をそのまま打ち明けることにした。

 隠しても意味がないと思ったから。

 この際すべて明かしてしまおうと思ったのだ。


「おかしいですよね、婚約したわけでもないのに」

「そ、そんな! ……嬉しいです、そう言っていただけて」


 意外な返しが来る。


「そうでした、ここでこうして話すのも何なので、少しカレー店にでも寄っていきませんか?」

「カレー……ですか」

「お嫌いです?」

「いえ。ただ、あまり食べたことがなくて」

「そうですか、では、試しに行ってみませんか?」

「良いですね! そうしましょう」


 意外な流れで、カレー屋に行くことになってしまった。


 ――ウェボンと共にたどり着いたカレー屋にて。


「ベルリーズさん、その、不快にしてしまってすみませんでした」


 ここは不思議な香りがする。

 スパイス、というのは、確かこういう匂いだったような気がする。


 ふわっと柔らかく、でも渋みもあるような、そんな香り。


 やや癖のある香りだ。けれどもどこか心地よく。懐かしいような香りが何よりも魅力的。自然と涎が出てくる。


 涎なんて出している場合ではない!


「いえ、かっこよかったですよ、はっきり拒否されていて」

「え! ……て、照れます」

「尊敬します」

「貴女にそう言っていただけると嬉しいです」


 少しして。


「あの、よければ……婚約しませんか?」


 彼は切り出してきた。


 まさかの直球。

 しかも重要な話。


 脳の中で火花が散るような感覚があった。


「……本気ですか?」

「はい」

「……ぜひ、お願いしたいです」


 気づけば自然と言葉が出ていた。


 もしかしたら私はその言葉を待っていたのかもしれない。


「嬉しい! ありがとうございます!」


 ウェボンの顔がぱあっと輝く。

 まるで子どものように。

 愛らしく、清らかに、面が煌めいている。


 彼は両手を差し出してくる。


 気づけば、自然と握手していた。


「よろしくお願いします! ベルリーズさん!」

「こちらこそ、よろしくお願いします。ウェボンさん」


 握手して、視線を重ねる。

 そうすれば心もまた重なるかのようで。

 みるみるうちに惹かれてゆく。


「では必要なものを用意し始めますね!」

「私も協力します」

「お金は男側が出すものですよ!」

「ですが協力はさせてください。それに、お金もそれなりにはあります。そちらほどではないですが……でもただでやろうなんて思っていません!」

「ああ、お金は気にしないでくださいね」


 初めて来た店の中で婚約が決まるなんて驚きだった。


 でもこれもまた運命なのだろう。

 ならば私はそれを受け入れようと思う。


 それに、嬉しいし。


 その後親にも報告して、ウェボンとの婚約が決まった。


 両親はとても喜んでくれた。

 それが何より嬉しくて。

 これまで迷惑をかけてきたからこそ、二人の嬉しそうな顔を見られてほっとできた。


 けれど、話はまだ始まったばかりだ。

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