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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

勇者になりたかった俺と勇者になった親友。

作者: 汐華

殴り書きです。

数年ぶりに筆を執るので至らない点あるかと思いますが、どうぞご容赦ください。

勇者。それは世界を脅かす魔王を打ち倒すモノ。

誰しもがその御伽噺を聞き、憧れるものだろう。

かくいう俺もその一人だ。しかし、魔王なんて存在するわけがなく、ただの夢幻で終わるはずだった。

いい年してこんな夢を持つ俺は、周りから白い目で見られていたし。

実際のところかなうわけがないと、自分でも思っていた。

けれど。


そんな折にあんな事が起きるなんて。思いもしなかったんだ。


______________________ 


「あー、暇だなぁ」


「どうせ二の次には異世界召喚されないかなー、だろ?」


「...やっぱわかっちゃう?」


「いつもお前の話を聞いてやってるのは誰か考えてみろよ」


そんなことを話しながら道を歩く。

そんな雑談をしているのは、俺の親友だ。

昔から、それこそ生まれてから家族ぐるみでずっと親交のある、もはや家族といっても過言ではないやつだ。


「いつになったらその、勇者になりたいだなんて夢諦めるんだ?」


「んー、死んでも諦められなさそう!」


「...そんな明るく言ったてなぁ、魔王なんていないし、そもそも世界はそんなファンタジーでもないんだぞ」


「そんなこと言ったてなぁ、かなわなくても夢くらいみてもいいだろ?」


「いや、ダメだとは言わないけどさぁ。」


「ならこれ以上何も言うな! もしかしたら異世界に勇者として呼ばれるかもしれないだろ!」


「...ま、お前がいいならいいけどさ、将来のことも考えないとダメだろ?」


_____わかっている。勇者になりたいだなんて、今どきの子供でも考えなさそうな事が、実現できないだろうということは。

俺だってガキじゃない。この胸を焦がす想いが、一生叶わない夢、なんてことは。

だが。わかっていても。この想いは消せないユメだ。俺は、叶わない夢を持つ愚か者としてこれからも生きていくのだろう。


「たしかになー。最近親からもいい加減将来のことも考えな! って言われてるし」


もし働くにしても、人を助けられるような仕事がしたい。

警察官でも、消防士でも。

なにかひとの役に立つような__そんな仕事をしたい

妥協だとしても、勇者になりたいだなんて思ったからには、人助けをしたい。


「お前のことだし、警官とかにでもなりたいなー、とか思ってんだろ?」


「まあそうだな! 勇者にはなれなくても人助けならできるし!」


「そう思ってんならボランティアばっか参加してないで、ちゃんと勉強でもしたらどうだ?」


「オッシャルトオリデス」


「片言になってるぞ~、ったく、勉強苦手なのも一生変わらなさそうだな、お前は」


「返す言葉もない...勉強苦手だからよー、集中が続かないんだわ」


「はぁ、今度の休みは勉強会決定だな、少しでもお前の学力を伸ばしてやる」


「いつもすまん! よろしく頼むわ!」


「調子のいいやつだな、ほんと...」


こんなやり取りをしながら、いつも通りの日々を送っていた。

青春の一ページ。他愛のない日常。


だが__そんな日常は、もう来ることはなかった



_________________


「きゃあぁぁぁぁ!」 


いつものように二人で喋りながら帰っていると、前のほうから悲鳴が聞こえた。


「一体何が...?」


身を乗り出して悲鳴の上がった方を見る。


「あれは...」


視線の先に映ったのは__


男だった。もちろん魔物だとか、化け物だったりが存在するわけではないので、そんなのは当たり前だ。

ただ、一つ上げるとすれば。

異常だった。

奇声を上げ、何かを振り回していた。

棒だ。けれど、ただの棒ではない。

振り回している時に光が反射した。


「ッツ... 」


自分の背筋が凍ったのが分かった。

あの男が握っているのは、刃物。

それも、かなり大きい。サバイバルナイフだろうか、なんであんなものを


と、驚きのあまり、一周回って冷静に思考を巡らせていると。


その男が血走った目でこちらを見ていた。


(まずい! 目が合った! こっちに来る...!)


「おい! 逃げるぞ!」


となりで呆けている親友の手を掴んで走り出す。

それと同時にあの男がこちらに走り寄って来ていた。


走る。恐怖と困惑を必死に抑えながら。

手を取ってるこいつは、まだ事態を呑み込めていないらしい。

 

「な、何が起こってんの?」


「見ればわかるだろ! 通り魔だ! さっさと逃げるぞ!」


そんなやり取りをしているともう近くまで男が来ていた。

距離を取ろうと慌てて走り出す。


そんな時。視界の端に親子が見えた。


お母さんと出かけていたのだろう。小さい女の子と、その子をかばうように覆いかぶさっているお母さんの姿が。


逡巡


あの親子を見捨てて逃げるのか。

手を取って一緒に逃げるか。


だが、そんなことを考えていたのがまずかったのか。

眼前に男がいた。


体が固まった。

ここで死ぬのかと思った。そして俺たちの次には、あの親子も殺されるのか。と


俺は、人助けがしたい。勇者になりたいなんて言い張っているくせに、いざとなったら動けない。言葉だけだったと、思いあがっていただけなのだと。


そんな時に、手を振り払って、あいつは男に向かって走って行った。

普段から人助けをしたいと、勇者になりたいと話している俺よりもあいつには行動力が。何より俺よりも勇気があった。




________________________________________


そのあとの事は、思い出したくもない。

あいつは別に運動ができるだとか、格闘技だとを収めていたわけでもない。

奇跡なんて起きなくて、あいつは刺されて息を引き取った。

ただあいつが動いたことは無意味ではなくて。

男からナイフを奪ったことで、あいつ以外に死傷者はいなかった。



そしてあいつは、新聞やニュースなどで、自身の命を犠牲に人々を救った勇者となった。



そして俺は_____



なにもできなかった、臆病者になった。


                        












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― 新着の感想 ―
[良い点] 勇者になりたい、、、でも、結局行動できなかった自分自身に対し、ラストに深い後悔が襲ってきていますね。 (行動するのが正しかったのか否かは分かりませんが) 口ではなんとでも言えるけど、いざと…
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